ドアに手をかけようとすると声がした。

「なーに?何処へ行くのかなあかねちゃん。」

振り向くとフワリと羽が生えているかのような軽やかな着地。
思わず目を見開いた。
「美咲!!」

二人でその場で抱き合った。美咲は記憶が曖昧らしい…
少し胸がいたんだ…
屋上を出て階段を下りた。
二人で腕を組んで歩いていると

美咲と付き合っていた先輩が見えた。
美咲は表情がぱあっと明るくなった。
「せんぱ…」
声をかけるのは止めた
なぜなら他の女子と腕を組んで楽しそうにしていた。
凹んでいるのかとちらっと横目で美咲を見た。

「気にすることな…」

「そうだよ!これが失恋ってやつだよね くぅーいいね☆なんか胸にチクンと刺さる。」
「まぁ。いいか」

ポジティブな彼女は無敵だった。うらやましい。

美咲がお腹が空いてきた。と言うので、私たちは購買のパンを買う列に並んでいた。
財布財布
「あれっ」
お財布忘れたかもー

「ごめん美咲待ってて。」

「えー あかねちゃん行っちゃうの?パンは?」

ぶうぶう言っている美咲の声を後ろで聞きつつ、教室に急いだ。

ドアを開けようとした。

「何してんだ?教室間違えてんぞ」
背後から聞き覚えのある声が…
振り向くとそこには
「まり!!」
反射的に抱き着いた。
「いつからそんな大胆に?」
クスクスと笑い声が、
うしろの友達の声だった
顔が熱くなる。

「いちゃつくならサッサとおいき。」
つまんなそうに教室に入って行ったのは佐々木くんだった。

「何ぼーっとしてんだ?教室に用があったんじゃないのか。」

「そうだ!財布取りにきたんだった。美咲待たせてる。」

「それじゃ美咲にはあとで謝っとくからさ…行こう。」
私は腕を捕まれて
ぐいぐい引っ張られていく。
「ちょっとー」

かまわず進んでいく、どこへ行くのだろうか?

「あかね。」
引っ張ったまま言った。

「何?」

「全部忘れちまったか?」

「何を?」

「俺とのこととか。」

「実はな…俺、さっきまでの記憶以外あんまり覚えてないんだ。」

「そっか。」

「忘れていたほうが良いと思った…」

「苦しい思い出ばっかりだし、」

「そんなことない。」
強い口調で遮られた。

「じゃあ、あかねは過去を忘れちまったのか?」

「うんん。」首を左右に振った。

「俺は忘れちゃいけない。やつらのことも心に刻まなくてはいけない。」

まっすぐな瞳にくもりなどなかった。

あかねはドアに手を掛けた。

ガチャッ

バタンッ

ドアしまると同時に
私は抱きしめられていた。
っつ…

反応に困った。
なぜならまりが泣きそうな表情を浮かべていたからだ。

「あの時、守れなくてごめん。ずっと名前を叫んでいた。」

「俺…あいつに言われた通り無様で最悪で何も出来なくて悔しかった…」
腕に力が入った。

「あいつがあかねになにかしたんじゃないかって気がきじゃなかった。」

「うんん。」

「奴は何もしていない。むしろ私の変わりに犠牲にな…」

「それ以上は言わなくていい。」

私の顔を胸に押し付けるように抱き寄せた。

「もういいんだ。」

「あた…し」

「これで良かったのかなって。」

「うん」

「私が世界を作った。そして皆が幸せになるよう願ったけど。」

「けど?」

「私は幸せがわからなかった。」

「でも、今まりがいて美咲がいて嬉しいってゆうかここが熱い。」

胸をさする。

「幸せって誰が決めたり望んだりするものじゃない気がする。」

「少なくとも俺は今幸せだぞ。」
っとつぶやくようにいったまりは少し照れ臭そうだった。

「どうして、ダーなんとかがあかねに大層な役目を追わせたか。理由はわかんないけどなー。」
私からゆっくり体を離し空を見上げた。

「ふっ」

「なんだよ。突然笑って。」

振り向いて手すりに寄り掛かる。

「さぁ、まり問題です。」

「上空と地上のはざまってどうゆう名前か知ってる?」

「えっ?急にはざまの話し?」
「いいから、答えて。」

「うーん。上空と地上の間…空閑地!!」

「…!!」
「利用しないで放置されている土地って感じ。」

「…いいね。それだ!正解!!」

「いいのか、答えがそれで?」

「私ずっと孤独で生きてきて考えてたんだ。」

「こう自分一人が浮いている感覚。」

本の中身を一枚破き、少しちぎって吹いた。

それは風に流されふわふわと浮遊している。

「そこでずっと同じ空気を吸ってとどまっているんだって。」

「でも、見ろ!…いつかあの紙は地に到達したり、空に高く舞い上がることがあるかも知れない。」


「ここにいる、あかねという女性はもう独りではないから。」

「だからもっともっと新しい空気にさらされて、いい女性になるかもしれない。」
「ふふ…」
鼻笑いでもなく、それは最高の笑顔だった。

「また笑った…」


「あー…つまんない。」
わざとらしく彼女はいった。

「じゃあ、俺と付き合って。」

「いいよ。でも…約束して。」
「過去の私を知っても、あなたは運命を受け止められる?」

まりはくるりと後ろを振り向くと去って行った。

ゆっくり、ゆっくり時間が止まった時のように…

バタン…
無機質な音が私の耳に届く
力が抜けたように崩れた。
「何泣いてんの?」

「意味わからない。こんなの私じゃない。」
うずくまり静かに泣いていた。

まりはもう私のキーホルダーでもなんでもないのに…縛ることなんて出来やしないのに、どこかで期待してた。

「まりならきっと…って」

あたしバカだ。信じるのはもう辞めたのに傷ついたり裏切られたりするのはもうやめたんでしょ。

その時、
ガチャ。キィー
急にドアが開き私は驚きの余りたじろいだ。

「な…んで?」

「ごちゃごちゃめんどくさいなー。」

「いいか。ほら見ろ。」
握っていた拳をゆっくりと広げて私に見せた。

「コレって?さっきの?」
そこに握られていたのは、私が吹いた紙だった…。

「そして、これを俺が食べる。」
ゴクン。

「ちょっとッそれ食べ物じゃない。」

「これであかねは俺に守られ安心だ。」

その自信たっぷりの無邪気な笑顔に私は飛び込んだ。
「おいッ急にどうした??」
焦ってるまりも愛おしく感じた。

「信じないって思ってたけど撤回する。」

「過去なんて関係ない、俺はあかねが好きだ。」

「今度こそ、守らせてくれ。」
私は返事をする代わりに
軽くおでこにキスをした。
それからあかねは本を読む仕草をして、こう言った。


「あなたが好きです…って書いてある。」ってね。


上空と地上のはざまにある世界、そう[空閑地]は、二人が出会う前からずっと、
そこにあって気付かない内に創造は始まっていたのかもしれない。

*何かに気付けば世界は変わる。

fin...
私は真っ白な世界に包まれた。

全てが白紙に戻されました。
後継者の方は世界を選択してください。

自分の思い描く世界が
構築されます。
さぁ目を閉じて新たにスタートさせてください。

私は訳もわからぬまま目をつぶった。
何故私は後継者になった?
雑念は省かせて頂きますことを御了承ください。

強制的に視界が切られた。
「皆が幸せな世界を私は作りたい。」

認証されました…

意識は飛んだ プツリと…


「んっ…う…ん。」
うっすらと目を細めると、眩しい光が眼球を照らす。

目を開けて見た空はとても綺麗で澄み切っていた。

間違いなくここは銀河系宇宙でもなくはたまたお菓子のお家に皆が住んでいるわけでもなさそうだ。

冷静に分析している場合かとツッコミたくなる。
誰かさんに似てきたか?

「ふふっ」
と少しだけ笑った


首には鍵はない。プレートだけがキラキラと光っていた。 本を手にもってはいたが、ただの文庫本みたいだし、中身が恋愛物ときた。
笑ってしまうな。

まりは何処にいるかな?
会いたい。

ひょいと立つと町並みの景色が広がっていた。
ホントに世界を構築してしまったんだな…
私で良かったのだろうか。お前が望んだ世界はこれで良かったのか?

などと考えるのはよそう。
前を向いて一歩歩きだした…
「ほう、生きておったか。」

「その言い方は淋しいものがありますね。女王様。」

「私にとって鍵を奪えなかった部下に過ぎぬのだが。最初から奪えない前提で仕掛けたのだがな。」

「佐々木と言ったか。今更私に何のようだ。」

「女王様はたいへんあたまの良い方のようだ。美しい。」
「しかし一つ見落としてはいませんか?」

「もし私が、後継者という人物だったらどうです?。」

「ん?」

「そんなわけないだろう!馬鹿者が。」

「私はあなたがいない内に書き換えたと言ったら殺されてしまうのでしょうか。」ご丁寧にあたまを下げた。
「なにを言ってるかわかっているのか?」
あからさまに怒りをあらわにしている。


「あー怖い怖い。女王様が怒りましたね。」

「何故そんなことをした。本の裏の秘密は誰も知らないはずなのに」
低い声で奴にたずねる。

「彼女との約束だから…」
ボソッ 言った。

そして奴は光の中に吸い込まれるようにして入っていった。
俺はただ見つめることしかできなかった。

「そろそろ起きてくださいな。お姫様」

軽く口づけをした。

誰か私を呼んでる。
まりなの!?

「まり!!」

「目を覚ましたかお姫様。」
「起きてその名前はあまり聞きたくないですね。」

「ナイトが僕ですいません。少しの間我慢してください。」

「何故お前がここにいる!!私を殺しにきたのか?」

「いえ。救いたいんですよ。この世界を変えてください。あなたにしか出来ないこと」

「何を言ってるのかわからない…の」

そう言い終えるのを待たずに私の唇を奪った。

んー ちょっとなんなのよ。離してくんないし。

「ちょ…離してッ」
そしたら奴はスーっと体を離し本の元に向かった。

「なんなのよ。説明しなさいよ!」

「聞いてんの?」

「ああ、聞いてるさ。」
後ろ向きでカラ返事をした。
「どうして俺を作った?」

「それは…情報を得るため。見ていたのは知っていたが。」

「ばれた?」
おどけたように言う。

「一人多いのに気付いていたからな。」


「では何故、弟を元にしたと言ったんだ。」

「この世に生まれていない弟を元にした?」

「…私も日記をよんで知ったの。母は他の男と浮気をして男の子を身篭っていたこと。」

「そして私は母と弟まで殺してしまったという事実に間違いはない。」

「憧れていたんだ ただ笑って暮らす家族という存在に。」

「私のエゴだ、ごめん。」

「いいんだ。あかねからその言葉を聞けて良かった。その弟も幸せだと思ってるはずさ。」

「家族か…憧れるな。」

「ん?…なんだ!?」

「いや、なんでもない。俺は十分幸せだった。あかねが俺をつくり、彼女を作った。」

「愛していたのに殺し…」

「事実上ではそうなる。」
私の言葉をさえぎる。

「彼女は元から魔力の消費が激しい、あかねの負担になるのを悔やんでいた。」

「そんな…」

「ある日、彼女の口から驚くべきことを聞いた。」

「私を殺して…とそして残りの力をあなたにあげる。」

「救ってあげてあなたの力であかねさんを、今度こそ素敵な世界をつくってと伝えて。」

「振り絞るように…彼女は言ったんだ。」

「そして自ら命を絶ち俺の中に入っていった。」

「だから俺のエゴだとおもって聞いてくれ、本の裏表紙に名前が書かれているのが後継者なんだが。」

「もしその名前を書き換えたらどうする?」

「その人が後継者になる。」
「正解!! さすがお姫様。」

「ではこれはなんでしょう?」
彼はごそごそと鍵を取り出し、見せ付ける。

「おいッ!いつの間に鍵を…」
「それはキスの途中の事故ですよ。」とウィンクをした。

「では最後の問題でーす。この鍵はなんのための鍵でしょう。」

「ブー 時間切れです。」

「正解は
[未来を切り開く鍵]でした。」

そう言って鍵を本の鍵穴に差し込んだ…
カチッ…

真っ白な世界が私の視界に広がった。

最後に彼ははっきりこう言った。
「姉さん ありがとう」と