今日、些細なことで喧嘩をした。

なんでLINE既読スルーするの。
もっと早く返信してよ。
多少忙しくても連絡しろよ。

これは全て俺の子供じみたわがまま。



もう何度目なのか到底数え切れないほどぶつかり合っては仲直りを繰り返す。俺が原因だってのは元よりよくわかっているし、性格が悪いことも黙認している。

だからまた今回も彼女を怒らせた。

昔は少なくとも今よりは、人に対して干渉的ではなかったような気がする。メールの返事が遅かろうが、多少スルーされようが特に気に止めることもないくらいには自由人だった。


2年前のある日の出来事が俺の中で何かを変えてしまった。

2年前も今と同じように留学していた。留学先の大学で一番最初に仲良くなった友達は、いつしか親友になった。もちろん喧嘩もよくしたけれど、なんだかんだで幸せだったと思う。

それが思わぬ形で壊れたのはその年の夏のことだった。その日俺は親友と2人の友達を家へ招いてパーティをすることになっていた。定刻通りに2人の友達が家に来て、あとは親友が来るだけだった。

「ごめん、10分くらい遅れるー。先パーティ始めて」

と親友からLINEが届いたので

「はいはい、今どの辺りにいるの?」

と返信しておいた。

彼の家から俺の家までは30分前後だから
対して時間はかからないだろうと思って悠長に
友達と話しながら親友の訪問を待った。

けれど、待てども待てども呼び鈴がなることは決してなかった。

最初のLINEが来て1時間が経過した時いくらなんでも遅すぎると思いもう一度LINEを確認すると「はいはい、今どこにいるの?」と返信した文は既読が付いておらず、未読のままになっていた。

親友は一向に来ない、LINEは未読のまま。不審に思った俺は親友に何度も電話をかけたけど繋がらなかった。

「忘れ物を取りに帰ったのかもしれない」

そう思いたかったし、そうであってほしかった。
けれど現実はそんなこともなかった。

しばらくして近所のおばさんが慌てて家に駆け込んでくると、まくし立てるような口調でこういった。

「今さっき、〇〇交差点で大きな事故があったのよ!あなた達と同じくらいの青年がトラックにはねられたんですって!背が高くて細い子だったみたいよ。」

って。

背が高くて細い子…そんな人いくらでもいるけど
この時、悪い意味で虫の知らせが働いたのか体から血の気が一気に引いていくのを生身で感じた。
それは友達も同じだったようで、俺達は事故のあった交差点に血相を変えてとんでいった。

親友じゃないでほしい、お願いだから。
わずかな可能性を握りしめて事故現場に向かうと警察や野次馬、救急隊員で溢れていた。
事故にあった本人は病院に運ばれたようで、すでにその姿はなかったけれど、俺達は、はねられた時に手から離れたかばんの中身が路上に散乱しているのを見た時、事故の被害者が親友であることを黙認した。

親友の誕生日にあげた2匹のポケモンのマスコットは事故の被害者が親友だと裏付けるのには充分すぎるほどだった。

その後、俺達は親友が搬送された病院に駆け込んだけどすでに遅かった。

「残念ですが、打ちどころの悪さに加え、大量出血で即死です。」

息を切らす俺達は最悪の言葉を突きつけられた。その傍らには、嘆く親友の両親と親戚の人の姿があった。

変わり果てた親友の姿、血の臭い
大声で名前を呼んでも返答の無い虚しさ。
俺達は目から溢れ出したものを止める術を
持っていなかった。

結局、遅れるというLINEだけが親友の最後の言葉になってしまった。そしてその後の俺の返信を読むことなく彼は19年の短すぎる生涯を閉じた。


この一件から、俺は連絡に関してとても神経を使うようになった。彼女にしろ友達にしろLINEの返信がなったり、遅い時はもしかしたら…と最悪のシチュエーションを思い浮かべてしまう。わがままだとわかっていても過剰に心配してしまう。






親友を1人失った俺のどうしても消えないトラウマ。