中東の海水淡水化プラントや国内の浄水場で使われている「ろ過フィルター(膜フィルター)」の供給と寿命について、水処理の技術的なファクト(実態)をもとに解説いたします。
結論から申し上げますと、これらは「明日すぐに水が出なくなる」という性質のものではありませんが、中長期的な物資の引き締めやインフラの分断が続いた場合、「数年単位の時間差(タイムラグ)」を置いて、極めて深刻な水不足を引き起こす時限爆弾になり得ます。
素材インフラの上流にある構造と、フィルターの物理的な寿命(維持限界)を冷徹にデバッグいたします。
海水淡水化の心臓「RO膜(逆浸透膜)」の寿命と交換頻度
中東の湾岸諸国(サウジアラビアやUAEなど)では、生活用水の大部分を海水の淡水化に依存しています。ここで使われる最も重要なフィルターが、ナフサ由来の合成樹脂(ポリアミドなど)で作られた「RO膜(逆浸透膜)」です。
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物理的な寿命は「5年〜7年」 過酷な高圧運転と高い塩分濃度に晒されるため、RO膜の寿命は適切にメンテナンス(化学洗浄)を行っても5〜7年が限界とされています。
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年間15%〜20%の「段階的交換」という仕組み プラント全体の性能と水質を一定に保つため、5〜7年後に一斉に全量を交換するのではなく、通常は毎年「15%〜20%ずつ」古い膜を新品に交換していくというローテーションで運用されています。
つまり、国際情勢の悪化によって海外からのRO膜フィルターの新規供給(配給)が完全にストップした場合、プラントが一瞬で停止することはありません。しかし、1年目が過ぎた時点で全体の2割のフィルターが寿命を迎え、水質や採算性が急速に悪化し始めます。適切な交換ができない状態が2〜3年続けば、プラント全体の処理能力は維持できなくなり、都市への給水が物理的に崩壊し始めます。
さらに深刻な死角:「前処理フィルター」と「化学薬品」の供給
RO膜そのものの寿命は5〜7年ですが、実はそれ以前に、数ヶ月単位で尽きてしまう「周辺資材」の存在が、最大のボトルネック(目詰まりの要因)となります。
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前処理フィルター(寿命:3ヶ月〜1年) 海水を直接RO膜に通すと一瞬で目詰まり(ファウリング)してしまうため、その手前で砂や大きなゴミを取り除く「PP(ポリプロピレン)沈殿物フィルター」や「活性炭フィルター」などの前処理が必須です。これらの寿命は3ヶ月から長くて1年であり、これが切れると、本番のRO膜そのものが一瞬で破壊(骨折)してしまいます。
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殺菌・洗浄用の「化学薬品」 フィルターに付着する微生物やスケール(結晶)を分解するため、塩素や酸、アルカリといった大量の化学薬品による定期的な「化学洗浄」が不可欠です。中東情勢の悪化や流通の停止によってこれらの薬品(ナフサや化学プラント由来の製品)が届かなくなれば、フィルターの寿命を迎える前に、わずか数ヶ月でプラントは機能停止に追い込まれます。
国内の浄水場におけるフィルターの現状
日本の浄水場でも、近年は従来の砂ろ過だけでなく、「膜ろ過(耐用年数約5〜7年)」を採用する自治体が増えています。国内の場合、三菱ケミカルや東レ、旭化成といった世界最高峰の膜技術を持つメーカーが国内に生産拠点(自前のインフラ)を構えているため、中東ほど深刻な直接の途絶リスクは低いと言えます。
しかし、以下の「2つの上流インフラの連鎖」が起きれば、国内の浄水場であっても無縁ではいられなくなります。
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製造資材の不足(カゴメの白いインクと同じ構造) フィルター本体が国内で作れても、それを固定するモジュール(ケース)や配管に使われる「塩化ビニル樹脂」「ポリエチレン」、さらには製品を出荷するための包装資材がナフサ不足で不足すれば、メーカーは製品をプラントに納品できなくなります。
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水害や異常気象(メガエルニーニョ)による負荷激増 太陽活動のサイクルとリンクした巨大エルニーニョなどの影響で、大雨による河川の濁水(泥水の流入)や、海水温上昇によるプランクトンの大量発生が起きると、浄水場のフィルターは通常時の数倍の速さで目詰まりを起こし、寿命が急激に縮まります。
結論:物事の構造を見極め、自前の足場を静かに固める
インフラの目詰まりは、ある日突然一斉に起きるのではなく、 「まずは薄利多売のゴミ袋が店頭から消え(大日産業の件)」 「パッケージのインクが変わり(カゴメの件)」 「数ヶ月単位の前処理資材や薬品が枯渇し」 「数年をかけてプラントの心臓部(RO膜)が静かに寿命を迎えていく」 という、冷徹な時間差(タイムラグ)を伴って進行します。
社会の上流(選挙制度やプラットフォームのアルゴリズム)がどれほど不条理にバグろうとも、また国際的なインフラ供給網(虚妄のゲーム盤)がどれほど尋常ではない終わり方へ向かおうとも、私たちが向き合うべき正事は変わりません。
今後の展開は不明ですが、優先順位は相当に操作されると考えた方が良いと思います。
ゴミ袋やスーパーの食品トレーも問題ですが、浄水場で使われるフィルターもナフサ由来であるのは同じなのです。
そして、硫酸不足ですから、電子基板の洗浄が出来ないというとんでもないバグも抱えているわけです。
一体どういう方向に向かっていくのだろうか?
硫酸がないと肥料が作れないわけです。
