♡キンブンに向かう途中の休息所裏で。

 

 ヤンゴン滞在後、次はゴールデンロック見物に向かいます。

 

 このゴールデンロックは、ビルマ語でチャイティーヨー・パヤーと言い、落ちそうで落ちない不思議なバランスで崖の上に乗っ掛かっている金の玉状の巨岩で、ミャンマーの人達にとっては、一生のうち、一度は訪れたい聖地だそうです。

 

 日本人だったら、さしずめ富士登山にお伊勢参り、あるいは金毘羅さん詣でと言ったところでしょう。(本当か)

 

 チャイティーヨーに行くためには、まず、そのベースキャンプとなるキンブンと言う町に行く必要があります。

 

 キンブンへはヤンゴンから1日10本ほどバスが出ていて、所要4時間くらいで到着するそうですが、今回は、バスより時間が掛かりますが列車でチャイトーと言う所まで行って、そこから車に乗り換え、キンブンに行ってみます。

 

 現在、泊まっている宿からヤンゴン中央駅までは歩いて行ける距離ですので、朝7時15分発の列車に間に合うよう、余裕を持って出発します。

 

 ところが、あろう事か、私は勘違いして駅とは別の方向へ行ってしまいました。途中で、これはおかしいぞ、と気づき、人に聞いてみると全く別の方角でした。

 

 そして、教えられた方へ行くと跨線橋がありましたので、これを渡り、道路を横断して右に行くと鉄道駅が見えて来ました。

 

♡ヤンゴン中央駅。

 

 

 やれやれ、これでひと安心と鉄道駅構内に入ろうとしますと、タクシーの客引きが、どこへ行くんだ、と聞きますので、チャイティーヨーと答えますと、客引きは、タクシーで行ったらどうだ、と言って来ます。

 

 私はもちろん、胸を張って毅然と、いや、列車で行く、と意思表示しますと、客引きは、もう列車は出たぞ、と言うではありませんか。

 

 え、バカな、とハトが豆鉄砲を食らったような顔の私。

 

 道を間違ったとは言え、まだ、列車の発車まで時間があったはずです。

 

 その私を見て、客引きは、あの時計を見てみろ、と駅舎の上に掲げられている時計を指さします。

 

 見ると、確かに列車の発車時刻を3~4分過ぎています。しかし、私の時計では余裕で発車時刻に間に合うはずです。

 

 そこで、んなバカな、と混乱した私は腕時計を客引きに見せますと、客引きは、お前の時計はもう死んでいる、と私の自慢の腕時計に死亡宣告です。(ユア ウオッチ イズ ダイと言った)

 

 私は、この腕時計の電波機能がおかしくなり、クルクルと逆回りに大狂いに大回転でもしたのか~と考えましたが、何の事は無い、日本とミャンマーの時差を私は3時間差と思っていましたが、実際は2時間30分でした。

 

 ちなみに、私は時計を現地時間に直さず、いつも日本時間のままで使っていますので、現地の人に見せても分からないはずです。

 

 

 すっかり肩を落として悄然とする私に、タクシーの運転手は、なおもタクシーで行く事を勧めますが、私はキッパリと断り、バスで行く事にします。

 

 確か、この鉄道駅の近くに長距離バスのチケット売り場が並んでいる所があるはずです。

 

 そこで、探してみますと、それらしい場所はありましたが、まだ8時前だからでしょうか、どの売り場もシャッターが閉まっています。

 

 それでも、諦めきれずに探しますと開いているスタンドがありましたのですぐにバスチケットを買います。料金は7千チャット(511円)で12:00発車です。

 

♡バスチケットスタンド。

 

 

 ただし、バスが出るアウンミンガラー・ハイウエイ・バスステーションは郊外にありますので、さて、どうやってそこまで行くべきか、と思っていますと、チケットスタンドの主人が、そこまで行くバスの番号を教えてくれ(93番)、それどころか、主人自らやって来たバスを停めて、運転手に私の事を頼んでくれます。(結局、この運転手は私の事をすっかり忘れていたが)

 

♡バスターミナル行きのバス車内。(正確にはターミナル横を通り過ぎるバス、うかうかしていると乗り過ごす)

 

 

 こうして無事、キンブン行きのバスに乗る事が出来ましたが、ミャンマーと言えど、長距離バスでエアコンが壊れているバスは珍しいだろうに(たぶん)、運悪くそれに当たり、しかも席が一番後ろの端で何か所か開けてある窓からの風も当たらず、ずい分、暑い思いをしての苦行でした。

 

♡キンブン行きバス。肖像権の問題はクリアしているのか。

 

 

 そして、やっとの思いでキンブンに着くと、宿の客引きが群がって来ます。

 

 私はその中の一人に宿代を聞き、連れて行ってもらうと、その宿は地球の歩き方にも載っているシーサーと言うホテルでした。(一泊1,314円、ただし一番安いグレードの部屋)

 

♡シーサーホテル。必要最低限の設備。ただし、シャワー・トイレは室内に。

 

 

 こうして、私は翌日の念願だったチャイティーヨー見物を楽しみに床に就いたのですが、真夜中、どこからか聞こえてくる人々のざわめきに目が覚めました。

 

 私は夢うつつの中で、ふっ、週末とは言え、ずい分、賑やかな事よ、チャイティーヨー見物を楽しみに興奮して眠れないのかよ、と思いつつ、寝返りを打って再度、夢路をたどりました。

 

 しかし、また、目が覚めます。

 

 朝の5時前頃でしょうか。高く低く、人々のざわめき、どよめきが、そして怒鳴り声、叫び声も聞こえて来ます。

 

 この宿は、チャイティーヨー行きの政府直営トラック乗り場のすぐ裏にあります。そこから聞こえてくるのでしょうか。しかし、確か始発は6:00発のはずです。この宿の客引きもそう言っていました。

 

 しかし、もしかして、と思うと居ても立っても居られず、私はベッドから飛び起きて、すぐに着替え、宿を出てトラック乗り場に向かいました。

 

 すると想像だに出来ない事が起きていました。6時始発どころか、すでにたくさんの人で大騒ぎです。そして、その人達を荷台にすし詰めにしたトラックは、次から次へと出発して行きます。(何か特別の日だったのか。例えばご来光を拝むためとか)

 

 

♡トラックの後ろから乗り込もうとする不埒者も。

 

 

♡トラック乗り場で夜を明かす人も。

 

 私は、すわ!常在戦場、夜討ち、朝駆けは武人の習い、こうしているどころではない、と目もすっかり覚め、急いで宿に取って返し、準備を整えるや、おっとり刀でトラック乗り場に戻ります。

 

 そして,チケット売り場を探しますが、それらしいものはありません。見るとトラックに乗り込むプラットフォームは幾つもありますが、参拝客(観光客)は好き勝手に、これはと思うプラットフォームに上がっているようで、特に時刻表も発車の順番も無いようで、満員になり次第、発車のようです。

 

 私は遅れをとっては末代までの恥とばかりに、ほぼ満員のトラックが横づけしているプラットフォームに上がりますと、係員が、一人か?と聞いて来て、ほれ、そこへ座れ、と指さします。

 

 そこは、かろうじて一人がやっと座れる隙間がありました。

 

 腰掛けは、平均台くらいの幅で一応、クッション付きのものが荷台の横方向に何列も並んだものです。私はそのままでは隙間に体を入れる事が出来ず、不自然な姿勢から、まず片足を入れ、次にもう片方の足を引き込みます。

 

 私の隣は太った女性でした。連れの男性が、アーユーオーケー?と聞いて来ましたので、私は、この人がタイ人っぽかったので、マイペンライと答えますと男性も女性も大笑いです。(マイペンライ=なんとかなるさ、どうって事ないよ、あるいはタイ人が責任逃れに使う便利な言葉)

 

 何だか、遊園地のアトラクションの出発前の雰囲気です、と言うか、そのものでした。

 

 これからトラックはゴールデンロックの鎮座している場所まで標高約1、100mまで上って行きますので、我らが日本製トラックはローギアのまま、エンジン音もゴー、ガーとけたたましく、曲がりくねった急坂をアクセル全開で駆け上がって行きますが、途中、特に前半部はアップダウンがありまして、これまた急な下り坂をフルスロットルで突っ込んで行きます。

 

♡体を前後左右に振られながら辛うじて撮った一枚。

 

 

 ですので、体は右に左に振られ、急降下時には体が浮くのでは、と思う程です。それに加えて、道にはガードレールと言う物が有りませんので(所々、コンクリート製のブロックを点々と置いてはいるが・・・)、転落すれば皆、空中に投げ出され大惨事間違いなし、と言う思いがより一層、恐怖感を増し、スリル満点です。もちろん、ジェットコースターにあるような体を上から抑えるような装置もなければシートベルトなどと言う気の利いた代物はありません。

 

 老若男女を問わず乗客の皆さんは、席の前の手すり棒をつかんで、ある人は目をつむり、ある人は歓声をあげてと思い思いに楽しんで?います。(運転手もこれがサービスと思っている節があるような)

 

㊟もちろん、タクシーで行く事も出来ます、と思っていましたが政府直営なので利権確保のために、どうも、このトラックで登るしかないようです。

 

 

 ふと気が付けば、空はどこまでも真っ青に晴れ渡り、眼下には緑濃い森林がその姿を見せていました。

 

以下、続く。