前回からの続き

承前 

 パダンブサールのイミグレで、まさかの入国拒絶の事態に陥り、門前払いを食らわされた私は、ガガというマレーシアの地方都市に這う這うの体でたどり着き、数日、傷を癒しました。

 一時は、残りの旅行期間約半月を、ここ、マレーシアで過ごそうかとも考えましたが、結局、タイ入国に再チャレンジする事にしました。
   (^_^)v

 考えるに、何故に私が入国拒否などという、言わば国家の敵にならなければならないのでありましょうや。ガガ滞在中、いろいろ考えてみましたが、どうしても合点がいきません。

 最近では、日本政府が、竹島でコンサートを開いた韓国人歌手を入国拒否して騒ぎになったようですが、私に、このような国政レベルの問題が起こりうるはずもありませんし、個人的レベルでも思い当たる節が有りません。(多分。この事は、前回書いたように、このエピソードを書き終えた後、検証したいと思います)

 さらに言えば、私がタイへの入国にこだわっているのは、真に些細な個人的事情ですが、マレーシアの方が物価が高く、特に宿泊事情で言えば、タイの方がコストパフォーマンスが優れている、とか、マレーシアでは、ビールを飲む所が少なく、あったとしてもビールが高い、とか言うレベルだったりして。

 さて、タイのどこから再入国にアタックするかです。(密入国するつもりではありませんのであしからず)

 まず、考えたのは、再度、パダンブサールから入国するという真にもって大胆不敵にして、相手側の意表を突く案であります。

 もちろん、陸路からではありません。また、あのオババ署長が立ちふさがる事は目に見えています。

 そこで、今度は列車での入国を考えました。私、思うにパダンブサールからの陸路での入国審査を実施するイミグレは、外国人の扱いになれてないのでは、と思うからです。(そのために、私は、あのような屈辱を味わったのではありますまいか)

 列車だと、入国審査を受ける外国人も多いので、その扱いになれていると推察します。(国際列車なので)

 しかも、入国審査は、すべてホームの上で行うので、陸路の審査とは所轄が違い、また、ボスのところへ行け、と言われても、まさか、またオババが出て来る事は有りますまい。

 ここで、少し話が脱線しますが、パダンブサールで「ボスのところへ行け」と言い放たれた時、英語に疎い私は、何やらこのボスという言葉の響きに、何やら恐ろしげな響きを感じたものですが(実際にとんでもないのが出て来たけど)、このボスというのは、上司という程度の意味だったのですね。

 話を元に戻します。

 さらに、首尾良く、タイへ入国を果たしたあかつきには、あのオババの鼻先から入国していくという事で、思うだに、これほどの痛快事があるでしょうか。過ぎ行く列車の窓から、あのオババの居る署長室に向かって、罵声の一つも浴びせかけられるかもしれません。(もう、ガキのケンカ)

 しかし、万が一、あのオババがまたもや、私の眼前に現れれば目も当てられません。

 そこで、ここ、ガガから、ほぼパダン・ブサールと同じくらの距離の場所に在るダノークという所から入国を試みる事にしました。

 ここは、パダン・ブサールと違い、多くの陸路越境者で賑わっている所です。上手くいけば、女遊び目的で、入出国を繰り返しているマレーシア親父の間に紛れ込む事ができるやもしれません。

 こうして、ガガでの臥薪嘗胆※1(がしんしょうたん)4日間、私はまなじりも高く、決然とダノークに向かったのでした。

 たとえ、お前が何か疑いを招く事を仕出かしたからだ、という誹り(そしり)を受けようとも、私は征くのです。この身の潔白を証明するためにも。

※1  昔、中国のさる人が、侮辱を受けた後、この事を忘れないために、夜はマキの上に寝て痛さに耐え、毎日、熊の胆を舐めて、その苦さを堪えながら、その屈辱を忘れず、最後に昔年の恨みを晴らしたという故事。
11月23日(日)

 前日は、午後から夜半にかけて時化模様で(もう、乾季に入っているはずなのに)、タイ入国再挑戦に文字通り、暗雲が立ち込めたようで宿の窓から、雷雨に人通りも絶えた街路を暗澹たる気持ちで眺めていました。(幸先、悪!)
  (_ _。)

 しかし、幸いな事に今朝は雨も止み、青空も顔を覗かせています。
  (^~^)  
 
 私は、シャワーを浴び、荷物をまとめます。

 入管職員の印象を良くするために、昨日、散髪に行ってすっきりしました。(特に長髪だったというわけではない)

 入った理髪店の老店主は、いきなりバリカンを取り出し、止める間もなく、刈り上げてくれました。髪型も見事な7・3分けです。これで、どう見ても、この地域特産の生ゴムを買い付けに来た、日本の商社員に見えなくもない事でありましょう。偽装工作は完璧です。トホホ。

 靴もワックスで磨き上げています。(こんな物を持って来るから、荷物が重くなる。靴は以前、バンコクの高級デパート「エンポリアム」で買ったカジュアルな革靴。)
 服装も、ズボンは、ベージュ色のパンツ、ちゃんと折り目もついています。上は、前回の旅行中、アロースターで買った生地のしっかりしたダークグレーのポロシャツです。
  (o^-')b

 今現在、私に出来る最高のフォーマルウェア?であります。馬子にも衣装です。これで、入国審査のおり、胡乱(うろん)な奴、との印象は多少なりとも緩和できるでしょう。
  (^_^)v

 宿への支払いは前日、済ましてありますので鍵を受付に返してから、バスターミナルの場所を聞いて外に出ました。

 ここ、ガガからはマレーシアとタイの国境、ダノークまでは直通のバスが出ていないとの事なので、一旦、アロー・スターまで行き、そこでバスを探そうと考えましたが、バス・ターミナルに行くまでにタクシースタンドが目に留まりました。何台ものタクシーが停車し、運転手が外に出て、だべっています。

 これを見て、直接、タクシーでダノークに行く事にしました。

 近くに寄って運賃を聞くと50リンギット(1,755円)との事です。パダン・ブサールのオババのせいで余計な出費を強いられますが、時間が節約出来る事を考えると、致し方ありません。また、ダノークで入国拒否の憂き目に会えば、ばたばたと余計な時間を食うでしょうし。

 私は、OKをし、タクシーの助手席に乗り込みました。ダノークまで、約40Kmだそうです。

 道は立派な片側2車線です。最初は水田地帯を。それから両側がゴムの木のプランテーションになっているところを走り、予想外に早く、ダノークに着きました。

 前方に、まず、マレーシアのイミグレが見えて来ました。タクシーの運転手は私のパスポートを受け取ると、運転席からそのまま、管理官に渡すと、すぐに出国承認のスタンプが押されて返って来ました。

 さあ、次はいよいよタイの入国審査です。吉とでるか凶と出るか神のみが知る、です。(もちろん、凶と出る確率の方が高い)
  
 警備にあたっているアサルトライフルを持った兵士の姿が見え、緊張感が漂います。ここタイ南部は、イスラム教徒の分離独立派によるテロが発生しており、日本の外務省より、海外危険情報「渡航の是非を検討して下さい」が発令されている地です。私も、個人的な意味で緊張が高まって来ました。
  (・_・;)

 マレーシアのパスポートコントロールから500mも走ったでしょうか。タイの入管の前でタクシーは停まり、私を降ろして、Uターンし、戻って行きました。

 私は、一つ、軽く深呼吸をしてから、構内に入り、まず、入国カードを記入します。カードのタイでの最初の宿泊場所の欄には、前夜、調べておいたハジャイで一番の高級ホテルの名前を書きます。もちろん、少しでも印象を良くするためです。(実際には、泊まらなくても、ガイドブックなどに書かれてあるホテルの名前を書く事が一般的に多い。現地に着いてからホテルを探す場合もあるので)
  φ(.. ) 

 さあ、入国審査です。私は、何気ない顔をして列に並びます。審査を受ける人はやはりマレーシア人が多いようです。

 いよいよ、順番がやって来ました。管理官は中年の少し気難しそうな顔付の男です。私の心拍数も、いやが上にも上がります。
  (^_^;)

 私は、心の動揺を悟られないようにパスポートと入国カードを窓口に差し出します。

 管理官は、パスポートをパラパラとめくり、手に入国許可のスタンプを持ちました。

 私はそれを見て、(タイに入国出来る)と思いましたが、何故か、私の入国カードを差し出して来ます。不思議に思いましたが、カードにサインを書き忘れていたようです。
  
 私は、まだ楽観していましたので、殊勝にソーリーとか言ってカードにサインを記入し、それを返しました。
  f^_^;

 管理官は、そのカードを受け取ると、スタンプを押す前に、私のパスポートを読み取り機にかざし、モニターを見ましたが、みるみる内に顔が険しくなり、前のめりになってそれを見詰め出しました。
  (  ゚ ▽ ゚ ;)

 そして、これを見てみろ、と言わんばかりにモニターを回して、私に見せました。
  
 見てみると、私のタイへの出入国の記録の上にかぶさって、タイ語で書かれた何かが点滅しています。いかにも警告文のようです。(誰がこんなもの、付けたんじゃ~)
  (><;)

 よく、あるではないですか、エロサイトを何気なくクリックすると、パンパカパーンと鳴って、やたらとチカチカする画面に「おめでとうございます。あなたは、特別優待会員に申し込まれ、成約しました。つきましては、一週間以内に10万円をお振込みください。もし、期間内にお振込みが確認出来ない場合・・・」というのが。

 何やら、これに似ております。最もこの場合は、パンパカパーン「おめでとうございます。あなたは、タイ入国管理法違反のカドにより、入管にマークされております。つきましては・・・」と言った感じでしょうか。
  ┐( ̄ヘ ̄)┌

 って言うか、こんなノー天気な事を言っている場合ではないぞ!私は札付きになってしまったのか。
   。・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。

 気落ちしている私に構わず、管理官は、パスポートと入国カードを私に返して、こっちに行け、と手で指示して、次の人を呼びます。

 私は、戸惑いました。管理官が示した方向は、戻る方向のマレーシア側では無く、タイに入国する方だったのです。

 私は、うん?と思って、パスポートを見てみましたが、やはり入国許可のスタンプは押されていません。

 パダン・ブサールでは、ボスの所へ行け、とか、この椅子で待っていろ、でしたが・・・。どこへ行けばいいのでしょう。

 このまま、入国審査のボックスの脇を抜けて、タイに入国できそうですが、それでは出国する時に面倒が起るでしょう。

 私は、きょろきょろしながら、マレーシア側では無く、タイ側の方向に歩いて行きます。すると、イミグレーション・オフィスと書かれた場所が在りましたので、入ってみました。
  o(・_・= ・_・)o 

 中には、制服を着たまだ若い男性が机に座って、ビニール袋に入った飲み物をストローで吸って寛いで居ました。昼食を済ましたばかりでしょうか。

 その奥には、もう少し大きい机に若い男性とは別の制服を着た年配の男性も座っています。

 私は、若い男性の方に近づいて、パスポートと入出国カードを見せて、どうしたらいいか尋ねました。しかし、この男性は、当惑するばかりです。(当たり前ですが)

 すると、私の後ろに居た私服の男性が声を掛けて来ます。この男性は、コピーを取っていましたので、私と同様、何か入国審査でトラブルがあって、書類を整えているのでしょうか。

 この男性は、私にオフィスのすぐ前の入国審査ブースを指さして、そこへ行ったら良いよ、と親切に示してくれます。

 私は、(違う、違う、もう私は、入国審査ではねられてしまったのだ)と思いながらも、もう一度、審査を受けてみる事にしました。

 落魄(らくはく)の身には、人の情けが身に沁みます。私は、(互いに苦労をしますなぁ)と言う気持ちを込めて、礼を言い、もう一度、入国審査の列に並ぶのでした。
  (^-^)ノ

以下 続く

11月13日(木) ネパール カトマンドゥ 

○今日のFX
・-2、991円 ドル・円 買い3万 115.90円~115.80円
・+7,500円 ドル・円 買い3万 115.55円~115.80円

計+4,509円 通算 33日目 +222,565円

○今日の会計
・乗り物代(チトワン バスパークまで)・・・・・・・・・・・・・213円
・チャイ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27円
・朝食代(ゆで卵、パン、水)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100円
・昼食代(カレー、ナン2枚)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・133円
・タクシー代(カトマンドゥ バスパークから宿まで)・・・466円
・チップ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・133円
・宿代(フジホテル)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2,128円



♡部屋も広く、きれい。立地も繁華街に近く、それでいて奥まった所にあるので静か。フロントの受付も日本語が話せる。部屋の設備も文句無し。寝具も厚く、寒がりの私には大助かり。(羽毛布団!)しかし、この値段でも、私には贅沢しているようで落ち着かない。(地球の歩き方掲載)

・古本代・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・333円
・夕食代(カレー、ビール)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・865円

計-4,398円 通算 47日目 -143,146円

総収支 47日目 +79,419円

11月14日(金) ネパール カトマンドゥ

○今日のFX
・-900円 ・+600円 ・-1,200円
・+1,200円 ドル・円 買い3万 115.75円~115.79円
・-3,000円 ドル・円 売り3万 116.23円~116.33円
・+600円 ・+300円
・-9,600円 ドル・円 売り3万 116.41円~116.73円
・-2,700円 ドル・円 売り3万 116.65円~116.74円


計-14,700円 通算 34日目 +207,865円

○今日の会計
・夕食代(ポークカレー、ビール)・・・・・・・・・・・・865円
・コーヒー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・93円
・バナナ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・200円
・宿代(インペリアルホテル)・・・・・・・・・・・・・・・1,596円



♡カトマンドゥに戻った日に泊まりたかった宿。部屋も広く、きれいに掃除されていて清潔だったが、Wifiが部屋で使えなかった。また、毛布が薄いので夜、寒くてたまらなかった。(地球の歩き方掲載)

・水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・73円

計-2,827円 通算 48日目 -145,973円

総収支 48日目 +61,892円

11月15日(土) ネパールからマレーシアのクアラルンプールへ

○今日のFX 休場です。

○今日の会計
・朝食・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・120円
・タクシー代(宿から空港まで)・・・・・・・・・・・・599円
・ビスケット、水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・399円
・カップ麺・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・91円
・バス代(空港からセントラル駅まで)・・・・・・・351円
・宿代(ニューウイナーホテル)・・・・・・・・・・・・3,159円
 
♡クアラルンプールの中央駅であるセントラルから、歩いて10分程度の所に在り、エアアジア直営の空港行きのバス乗り場も至近。この界隈では、安い部屋代。ただ、部屋は、カビ臭く、私の嫌いな窓の無い穴倉部屋。(後日、泊まった時はカビ臭くなかった。穴倉部屋だったけど)

計-4,719円 通算 49日目 -150,692円

総収支 49日目 +57,173円