fish chips cigarettes -5ページ目

学生時代、イケてるやつは午後ティーを飲むみたいな風潮があってね。
私の分析的に。
本当は振るゼリーが飲みたかったんだけど、舐められたくなくて毎日無理して買っていたわけ。ここの無理してるっていうのは味的な意味でね。とっくに飽きていたってこと。

 

特にポジション的に最強なのは、三角錐みたいな形したペットボトルの午後ティー。
缶はダメだぜ、紅茶花伝と変わりがないから雑魚なわけ。午後ティーにしかない、あのイカしたデザインのペットボトル。
今見てもイカしてるって思う。

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そして最後、ほんのちょっと残して捨てるのが通なの。すっからかんにまで飲み切ると底の“カス”が目立つでしょ?スマートじゃないんだよね。
甘すぎてベロに残る不快感、それを拭うのにもってこいなファミチキ。それが私の青春コンボ。

 

当時の私には中学生の頃から付き合っていた彼女がいたの。その子は別の高校に進学してね。
ただ彼女と一緒に帰るために、週1で迎えに行っていた。
私は部活をやっていなくて、彼女は華道部で、学校終わったあと迎えいくの。家とは全然逆方向だよ。自分の学校から彼女の学校まで自転車で約1時間。ほとんど登り坂。
愛が凄いね。なんて正直、彼女への恋心というのは途絶えていたのだけど。

当時の私にとって彼女は"彼女”というよりも"心の拠り所”という存在だけだったの。似て非なる存在だからね。
学校にも馴染めない、家にも帰りたくない。彼女は柔らかい笑顔で優しく話を聞いてくれる。
だから彼女を迎えに行き、一緒に帰るというのは私にとって嫌じゃなかったんだね。むしろ救いだったんだ。

彼女の部活が終わるまで、学校のすぐ隣りにあるコインランドリーで1人待つの。コンクリート打ちっぱなしで蜘蛛の巣が張った汚いコインランドリー。
何をして時間を潰していたっけね。忘れちゃった。ただ他校の生徒からの視線がちょっと気になるのだけは覚えているよ。

 

部活を終えた彼女から電話が来て、向こうの校門まで迎えに行く。
彼女の高校の制服は県内でも随一可愛い制服でね、彼女は爽やかにそれを着こなしていた。本当によく似合っていた。私服よりも制服デートが多かったのはそのせいかもしれない。
今日はこのお花をこんな感じで活けたんだなんて話を聞いて、写真をみせてもらったりして、時には実物も持ってきてくれたりして。
話に全く興味は惹かれなかったけど、彼女の笑顔には惹かれていたよ。なんてウマいことを言ってみるよ。

 

登り坂が多い帰り道、絶対にわたしが勝つ競争をしたりして。田舎も田舎で周りにはなにもないの。
上を見上げれば星が輝いていて、下をみれば夜景が輝いている。それだけの景色。そして隣を見れば笑顔が素敵な彼女がいる。それだけの景色。
なんてウマいことをもう一度言ってみるよ。

 

帰路の途中、自販機が置いてある場所があるの。そこで飲み物を買う。
もちろん、2人で午後ティー。と言いたいところだけど紅茶花伝しかないから、それを買うの。
紅茶花伝じゃ見栄の張りようがないけど、構わないのさね。だって2人しかいないんだからこの田舎には。

 

向こうの家の近くまで到着して、そこで10分、20分くらい喋る。
春や夏の暖かい季節は近くの公園まで行く。
何を喋ってたっけね。すっかり忘れちゃったけど、でも離れるのが寂しかったんだねきっと。
そして最後にはキスして帰るの。もう一生会えないんじゃないかってくらいの儚さと切なさを醸し出してたね。一丁前に。

 

もしかしたら彼女は私がもう恋心を持っていなかったことに、私にとって彼女が私のただの心の拠り所でしかないことに気が付いていたのかもしれない。
青春はいつだって熱を求めている。

青春真っ盛りの私達にとって心の拠り所なんてものは不確定的なものだということを彼女は理解していた。

彼女を見送ったら家までずーっと下り坂。それでも帰るまでに20分くらいかな。寒い日は地獄だった。でも嫌ではなかった。
冷たい風が突き刺さるとはまさにこのことで、でもそれが心地よかった。
それが私の生きる世界なのだと感じたし。

彼女との交際は高校2年生の5月頃に終わりを迎えた。

それは私が他のことに興味が移って、他に熱中できるものを見つけてしまったから。両手でモノを持つことしかできなかったんだね。


大人になってから出会ってたら変わっていたのかもしれない。間違いなく違っていただろう。

ちなみにね、3年ほど付き合ったけどAよりのB止まりだからね。お互い純粋だったよ。今じゃ考えられない。3年じゃなくて3日。

彼女を送ったあとの帰り道はずっと下り坂だった。
思えば彼女と別れてからの人生もずーっと下り坂かもしれない。

ウマいことを言いたいだけで実際はそんなわけでもない、とも言い切れない。

 

青春というものはやはり濃い。
飲み終えても舌に残るほど味が濃い。

 

透明なミルクティー以上に薄い日常を送っている今。
ただこの薄味というのも悪くはないと大人な私は思うのです。