梨花と沙都子の日常ブログ -11ページ目

望試し編

~望試し編~


昭和57年6月。前原圭一が転校してくる一年前の話。そこには、今までの世界にはなかった命があった。

ー園崎家ー
「お婆さま、お久しぶりです。お元気でしたか?」
「ああ、魅音がよく面倒見てくれよったかんね。腰の方はもう元通りよ。」
「そうですか。すみません、私も魅音お姉様をお手伝いにくる時しか本家にはこれませんものですから。あとは、お祝い事の時や、お正月の時ですかね。お婆さまのご面倒は少ししか見られませんのが残念です。」
「面倒なんていらんわ。わしゃもう普通に歩けるんよ。」
「・・・そうですね。じゃあ、私はもうこれで。次にお会いできるのを楽しみにしていますよ。」
「あ、里音!もう帰るの?」
「魅音お姉様・・・!はい、婆やが心配しますから。今日は、あまりお役に立てなくて申し訳ございませんでした・・・。」
「ううん!正直私もテンパっててさぁ、里音がいてくれて、心強かったし、助かったよ!」
「あ、ありがとうございます!」
「んじゃ、気をつけて帰るんだよ。」
「はい。魅音お姉様も、お体に気をつけて下さい。あ、それから、一つお聞きしたい事が・・・。」
「ん?なに?」
「あの・・・魅音お姉様には、今好きな人はいらっしゃいますかっ!?」
「・・・・・・え?」
「いえ、あの・・・。少し気になりまして。もしいらっしゃるのならこの里音、全力で応援したいと思いまして・・・。」
「・・・いる、よ。だけどさ、詩音もそのこの事が好きでね。私はお姉ちゃんだから詩音に譲ってあげたの。知ってるでしょ?詩音が学園を抜け出したこと。」
「はい。知っていますが・・・。あの・・・ごめんなさい!変な事思い出させてしまって・・・!」
「いいよ、里音は知らなかったんだし。」
「ですが・・・!」
「いいって。いいって。ホラ、家政婦さんが心配するんでしょ?」
「・・・でも、」
「本当に気にしないで。ねっ?」
「・・・わかりました。本当にごめんなさい。」
「うん!」
「では、また今度お会いしましょう。魅音お姉様!」
「じゃーねー!!」

バタンッ ブロロロロロ~

私の名前は園崎里音。魅音お姉様と詩音お姉様の三つ子の妹。
『魅音』という名前は、『鬼を次ぐもの』という意味。
『詩音』という名前は、『出家させ寺に閉じ込める』という意味。
『里音』という名前は、『里で次期頭首を支える』という意味。
そして、私達三つ子の姉妹は、それぞれの名前通りの役目を与えられた。魅音お姉様は『鬼』を次がされ、詩音お姉様とは遠い『寺』へ切り離され、そして私はこの雛見沢という『里』で次期頭首である魅音お姉様を支えている。

「はあ~。魅音お姉様を傷つけちゃいました・・・。私、里音失格です。」
「そんな事ありませんよ、里音お嬢様。お嬢様は一生懸命頑張っておりますぞ。」
「爺や・・・。ありがとうございます。」
「いえいえ。ご自宅までもう少しかかりますから、もう少しごゆっくりされていてもよろしいですぞ。お嬢様は、もう少しご自分の心配をされてはいかがですか?いつも周りの人の事ばかりですと、疲れてしまいますよ。」
「・・・そうですね。確かに疲れちゃいますよ。それでも、他の人に優しくない私は、私じゃないです。自分が疲れても良いから、自分より先に周りの人に幸せになってほしいだから、いいんです。」
「では、爺やはもう何も言いません。お嬢様の決めたことなら爺やは応援いたしますぞ!」
「ありがとうございます、爺や。」
「お嬢様、先ほども申しましたように、ご自宅へは15分ほどかかります。もう少しゆっくりなさっていてください。」
「はい。」

 さっき魅音お姉様が言ってた『好きな人』。何か、ひっかかる。まるでその人が、消えてしまうかのようで・・・。そして、毎年起きる「雛見沢怪死事件」。あれは、誰かが裏で仕組んでるとしか思えない。それから、『オヤシロ様』。魅音お姉様達がいう用なものではないと思うんだけどな。普通の女の子、みたいな・・・なんて、考え過ぎか。
・・・最近、そんな変な事を考えちゃいますね・・・。疲れ過ぎでしょうか?


「お・・・様。お嬢様・・・。お嬢様!」
「ふぁい!な、なんですか?どうしました?」
「ご到着しましたよ。」
「あ、そうですか。ありがとうございます。」

 そういえば、詩音お姉様にご挨拶していませんでした。葛西さんに電話をかけましょうか。そうすれば、詩音お姉様のお家の電話番号ぐらい教えていただけると思いますから。

「ただいま帰りました。あ、婆や!葛西さんの電話番号を紙に書いといていただけますか?」
「ああ、お嬢様!お帰りなさいませ。」
「はい。それで婆や、葛西さんの電話番号しりませんか?」
「そうでした、そうでした。知っておりますよ。え~と・・・。ほら、このへんでございます。」
パラ、パラ、パラ、パラ・・・
「あ、ほらほら。ありましたよ。」
「ありがとうございます。」
「でも、こんなお時間に電話ですか?」
「はい。どうしても話したい人がいて。葛西さんなら知っていると思いますし。」
「そうですか。お嬢様がそうおっしゃるのならお止めしたりなどしませんよ。」
「爺やにもそのような事いわれました。」
「まあ、偶然ですねぇ。ふぉふぉふぉっ!」

ジョリ、ジョリ、ジョリ、ジョリ・・・プップップップップ プルルルル、プルルルル、プッ
『はい、葛西ですが。』
「あ、夜分遅くに申し訳ございません。私、園崎里音と申します。」
『ああ、里音さんですか!お久しぶりです。』
「あの、詩音お姉様にご挨拶していませんでしたし、少しお話ししたいと思って葛西さんに電話したんですけど・・・。」
『そうですか。わかりました。・・・実は、すぐ隣に詩音さんもいらっしゃるんですよ。かわりましょうか?』
「本当ですか!?はい、お願いします!」
『詩音さん。里音さんからです。』
『里音から?』
『はい』
『ん。もしもし?』
「詩音お姉様ですか?お久しぶりです。元気にしておられましたか?」
『あ~、はい。元気でしたよ。里音は?』
「はい。私も、ものすごく元気でしたよ。魅音お姉様もです。」
『ああ、お姉とは何回かあったから知ってますよ。里音が元気ならそれで良いです。』
「ありがとうございます。そうだ、聞きましたよ?詩音お姉様、好きな方が出来たんですか?」
『え、い、いやぁ、まあ、この歳になれば好きな人の一人や二人・・・はっ!か、葛西!いまのは聞かなかった事に・・・!』
「おめでとうございます。応援してますよ。ちなみに、その方のお名前はなんて言うんですか?」
『さ,悟史君・・・。北条悟史君ですよ。』
「悟史・・・?あの・・・詩音お姉様!」
『どうしたんですか、急に。ちゃんと聞いてますよ。』
「あ、そうですね。ごめんなさい。あの、それで、その悟史さんは、大人しい方ですか?」
『はい・・・そうですね。』
「じゃ、じゃあ、金髪で、口癖は『むぅ・・・』で、ちょっと弱々しいけど、暖かい感じの方ですか?」
『もう、全くその通りですよ。あれ?あった事ありました?』
「いえ・・・ありません。あ、最後に一つだけ。その悟史さんには、妹はいますか?」
『はい。います。私はちょっとその子の事好きになれないんですけど・・・ね。』

あった事もない『悟史』さん。それなのに、なぜこんなにも『悟史』さんの事が・・・?

『ちょっと、聞いてますか?里音?』
「えっ!?あ、ごめんなさい。それで、なんですか?」
『その悟史君の妹のせいで、なんか悟史君の元気がないんですよ。それで、ちょっと好きになれないんですよねぇ~。わがまま過ぎるって思っちゃって。』
「・・・し、詩音お姉様。今年の雛見沢怪死事件の失踪者は、多分、その『悟史』さんです。」
『・・・は?なんで、悟史君が?あんた、何を根拠に・・・!?』
「お、落ち着いてください。でも、彼は必ず帰ってきます。『悟史』さんは、とある病気にかかってしまい、病院で治療して世間では失踪したと噂されるだけなんです。」
『病気?』
「お姉様も、思い出せないほど昔にかかっている病気です。」
『あんた、何言ってんの?私がそんな病気にかかるわけないじゃないですか!』
「思い出せなくて当然の事ですから・・・。って、あれ?」

 私、何意味の分からない事・・・。ううん。違う。本当は知っている。私はそこには『居ない』けど、知ってる。じゃあ、私はどこに居たの?色々なかけらがこの雛見沢を映し出しているところで、私は、ずっと皆の事を見ていたんだ。

『里音?』
「と、とにかく、『悟史』さんは失踪するわけではありませんから、間違っても復讐なんて事、考えないでくださいよ。」
『はぁ~。・・・里音がそう言うなら、わかりました。私は里音を信じます。』
「ありがとうございます。では。」

ガチャンッ

私が見ていた雛見沢は、毎回、惨劇とともに幕を閉じていた。奇跡を起こす鍵を握っているのは、昭和58年6月に転校してくる『前原圭一』。そして、私と同じ立場に居て、もう100年ぐらい、この雛見沢と戦っている少女『古手梨花』。私がこの世界の『里音』にはいる前の世界では、『前原圭一』や、魅音お姉様達に助けを求めた。しかし、『鷹野三四』によって、奇跡は起こせなかった。『前原圭一』達は、『古手梨花』と共に戦ってきた『羽入』が奇跡を信じなかったから、奇跡は起きなかったと言う。
「私達、全員が奇跡を信じなければ、奇跡は起きない。」
と。つまり、私がこれからやらなければならない事は、『古手梨花』と共に、運命を打ち破ること。そして、『前原圭一』達が『病気』つまり、雛見沢症候群の末期患者にならないよう見守ること。


「じゃあ、まずは明日、『古手梨花』に会いにいかなければなりませんね。雛見沢でも有名な人ですから、道がわからなければ誰かが教えてくださると思いますし。とりあえず、今日はもう休みましょうか・・・。」
「おや、お嬢様!もうお休みになられるんですか?」
「婆や!はい。本家でご飯もいただきましたし、お風呂も入ってきましたから。」
「そうでございますか。では、おやすみなさいませ。」
「おやすみなさい。爺やにもそう、言っておいてください。」
「かしこまりました。」

ー古手家(古手神社)ー

コンコンッ

「はぁ~。もう!ごめんくださ~い!!」
「みー☆僕はここなのですよ。」
「きゃあ!?」
「そんなに驚かなくても良いのです。」
「ご、ごめんなさい。えっと、貴女が梨花さんですか?」
「僕が梨花なのですよ。初めましてなのです。詩ぃ。」
「え?詩ぃ?ああ、詩音お姉様の事ですか。」
「・・・お姉様?」
「はい。自己紹介がまだでしたね。私は園崎里音。園崎魅音と詩音の三つ子の妹です。」
「み、三つ子って・・・。何がどうなっているの?この子は、誰なの!?」
「そんなに驚かないでください。私がいま言える事は、私は貴女達と同じ、という事だけです。」
「同じ?・・・と、とりあえず、中に入って話しましょう?」
「そうですね。」

「・・・そう。鷹野が・・・。まあ、とにかくこの世界には奇跡を起こす鍵が二つあるのね。」
「いいえ。三つです。」
「どういうこと?」
「羽入さんです。羽入さんが、『前原圭一』を信じ、奇跡を信じなければ・・・、奇跡は『起きない』んですから。」
「そうね。クスッ、ねえ羽入。いまの話、聞いてたわよね?なら話は早いわ。羽入は『信じる』の?『信じない』の?」
『あうあう、僕は・・・。・・・『信じます』。僕だって、皆と一緒に笑っていられる、そんな未来にいきたいのです。皆で。その皆に、僕だって加わりたい・・・。』
「それなら、加わってください。羽入さん。貴女の体は、普通の人たちには見えません。だから、加われないんですよね?なら、その体を見えるようにすればいいんです。それに、いまでも声だけなら私にだって聞こえます。頑張れば、実体化ぐらいできるはずです!」
「それは面白そうね。」
『わ、わかりましたのです。僕だって、それくらいなら出来るのですよ!ふぬ~!!!!!!』
「す、すごい・・・!羽入が・・・人間に!」
「僕だって、やるときはやるのですよ。」
「・・・それでは、また来年お会いしましょう。『前原圭一』が転校してきてから一週間後・・・今度は私が転校しますから。楽しみにしていてください。あ、それと。羽入さん。貴女が実体化して生活するのは、私達が転校するその日からです。もう少し、待っていてください。」
「わかりましたのです。」
「では、私はこれで失礼します。今日は、お会いできて嬉しかったですよ、梨花さん。それでは、また来年お会いしましょう!」
「み~、またくるのですよ。にぱー☆」

来年は中学3年生。魅音お姉様の通う雛見沢分校へと転校し、私は奇跡を起こす!