先月6月は運悪く、白骨城で武器を取り逃がした。
あの長刀は、おそらく特殊な長刀だ。
加那は悔しかった。しかし、いつまでも悔しがっていられない。
「今回は、相翼院に向かおうと思う」
当主である母親の言葉にひとつ頷き、手元の長刀の手入れをした。
初めての相翼院は、敵が水の中から現れる魔境だった。
加那たちは、橋を翔けるように渡り続ける。
やがて熱狂の赤い火の刻が訪れた。
家で待つ生まれたばかりの妹に、土産を持ち帰りたい。
加那の心に燃え盛る炎が宿っていた。
胸には先月の失敗がある。
敵をけっして取り逃がしてはならない。
当主の後から、慎重にドクロ大将を攻撃する。
ドクロ大将は巻物を落とし、塵と化した。
加那は、巻物を手に取った。それは「槍の指南」だった。
「やりましたね、母上!」
母親も嬉しそうに頷いた。
「これで槍使いを職業に選べるようになるわね」
「はい!」
その後も術の巻物を3本見つけて、意気揚々と帰還した。
翌月、親善試合で大敗を期すことなど、まだ知る由もなく。
しかし何が起ころうと、悔しがってばかりいられない。
無慈悲にも時間は過ぎ去っていくのだから。