☆気象さんBL小説です、苦手な方はご遠慮ください。



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「 F 」12




S×O








翔side





ハァッハアッ...

いきなり走ったから息が切れていた。








「うぅっ....っ」

背中に冷たさを感じ立ち止まると

泣き声が聞こえてきた。














「智くん?」







一旦下ろしてみることにした。







下ろして前抱きにした。







毛布の間から赤ちゃんみたいな

ほんわりした智くんの香りが

暖かい空気と一緒に漏れている。





「大丈夫?さとしくん」




顔を見ようとすると

胸に飛び込んできた。







「っ!しょ...っ」







さっきまで寝息を立てて寝ていたのに

いきなり走ったからびっくりしたのか

パニックになってるみたいだ。










「智くん、ごめん、、」






「っくっ...っく」



ぎゅーっと胸に顔を押し付けて
小刻みに肩を震わせている。

握りしめた俺の服はもうくしゃくしゃなのに
指先にはまだ力が入っている。



「やだやだ!ねぇ!」




何かに怯えていた。






「どうしたの?」






「しょう..くんっ」





「智くん...ほらこっちみて」


両手で包んで顔を合わせると

大粒の涙が光っていた。







「っ...しょ...しょおくんっ」

「うん、俺だよ」



やっと俺だとわかったのか

一瞬ふにゃんと笑うと

首に手を回してきた














俺はというと





固まっていた。







一瞬の笑顔に撃ち落とされて




心臓の端っこをキュッとつままれた。

息をするのがやっとだった。








そのままみてたら







俺の腹に頭を押しつけながら





時折「うっーく」とか「ふぅん」とか

小さな熊みたいなうなり声を出しながら

ひたすらグズグズしていた。






ズルズルと鼻をすすったりもしてた。







なんとか慰めてやりたいと思ってたけど

こんな智くんをみるのは初めてで

何をしたらいいかわからず、落ち着くまで

ただただ胸に抱き寄せてあげるしかできなかった。
















「あいたかった」





藁がたくさんのふかふかしたあったかいほら穴から

出てきたような真っ赤な顔で俺を見上げて

少し甘えた声で一言だけ言った。













おはようでも

ここはどこでもなく

ただ

"あいたかった"

この一言だけ。












「俺も」


無意識に返事をしていた。













ずっと一緒にいたのに
久しぶりと言われたら
そのまますんなり受け入れてしまうほど

俺を見つめる潤んだ目は

まっすぐだった。








くるんとしたまつげの先に

キラキラ光った水滴がのっている

目もとろんとしている。













「おやすみ...智くん」




これ以上は俺が耐えられなかった。






モグラ叩きのモグラみたいに

毛布の中に智くんを優しくしまいこんで








しばらくその場で揺らしてあげた。







智くんが寝入ったことを

ぴくんという振動で確認して




「よいっしょ」

また立ち上がった。





'起きたかな'




急に心配になって

いや

顔がみたくなって

毛布の端を少しだけめくった。








ポテッとした頬っぺたと

少し空いた口と

涙が乾いたばかりの垂れた目尻と....










下を向けばそんな綺麗なお顔まですぐの距離で...


ちょっとだけなら...







"ちゅっ"





頬っぺたにキスをすると


すぐに毛布をかけて


前を向いて歩き出した。























いつもより背筋を伸ばしたくなった。


冷たい空気が鼻の奥をくすぐる。








今何時だろう

空ってこんなに高かったっけ。



まるでプラネタリムみたいな

半円状の空に見入っていた。



全国民の何パーセントが寝ているんだろう

寝ていてみられないなんて勿体ないのに。





「あ...」






キラリと光った流れ星...






願い事...



しなきゃ...




頭に思い浮かんだのは



ただ一人...







「おっおれは!
















智くんのことが!













好きだ...









好きで好きで...











どうしようもないくらい好きだ!」










"流れ星が流れている間に願い事をすると願いが叶う"




声に出さなくてもいいのに

昔、おばあちゃんに

願い事は声に出すと叶うんだよって

教えてもらったのを思い出して

いつのまにか声に出していた。











声を出して言ったはいいものの


下を向いて小さくぼやいた






「でも....」



「でも...どうしたらいいのかわからない。


付き合いたいって言ったら

嫌われるんじゃないかって


怖いんだ....


嫌われたくないんだ...」





智くんを好きになればなるほど

こんな自分が惨めになる。
















腕の中の智くんをみた。

変わらずリズムで寝息を立てて寝入っていた。

よかった...起きてない















声に出して言うとすっきりした。


今までより足を高く上げて歩いた。















夜道を歩いている男がニヤニヤしている。


周りから気持ち悪いって言われたって

そんなのどうだっていいんだ。












もうすぐ家だ。





もう腕が痺れてきた。