翌日。
今日の予定は、Aクラスとの合同学習となっていた。
質問あれば教師や周囲に聞いてもOK。
まあ、自習みたいなものだよね。
お空と早苗ちゃん、阿求ちゃんと本居さん、魔理沙と霊夢さんみたいな、普段学校行事で一緒に勉強する機会があまりないグループが出来てる。
お空と早苗ちゃんはAクラス戦のあとに仲良くなったみたい。
天子さんが一人で勉強しながら、早苗ちゃんの方を10秒に1回くらいのペースで寂しそうに見てるけど、早苗ちゃんは気づいてないのがなんか見てて面白い。

「・・・雄二。一緒に勉強できて嬉しい。」

「待て翔子。当然のように俺の膝の上に座ろうとするな。クラスの連中が靴を脱いで俺を狙ってる。」

膝に乗ろうとする霧島さんとそれを阻止しようとする坂本君の攻防も、見てて面白い。
まあ、あんまやってると注意されそうだけどね。

「でもなんでこんなところまで来て自習なんだろ。勿体なくないかな?授業やらないの?」

そうつぶやく吉井君。
でも、Aクラス向けの授業受けても理解できるとは限らないし、AクラスにとってはFクラスの授業は多分簡単すぎて身にならない。
それに、多分目的は意識の変革だしね。
坂本君も、それはわかっていたようで吉井君に説明する。
吉井君もそれで納得したようだ。

「あ、代表ここにいたんだ。それならボクもここにしようかな?」

すると、聞きなれない声。
彼女は確か、Aクラス戦でムッツリーニ君と戦った工藤さんだっけ。

「えっと、工藤さん、だっけ?」

「そうだよ。キミは吉井君だったよね?ひさしぶり。」

吉井君の質問に答えて、にっと笑う彼女。
ボーイッシュな雰囲気とあいまって、とても爽やかだね。

「それじゃ、改めて自己紹介させてもらうね。Aクラスの工藤愛子です。趣味は水泳と音楽鑑賞、スリーサイズは上から78・56・79、特技はパンチラで好きな食べ物はシュークリームだよ。」

・・・んっ?
なんか途中不思議なものなかった?

「吉井君もしかして疑ってる?なんならここで披露してみせよっか?」

吉井君も疑問そうな顔をしてたからか、そんなことを言い出す彼女。
・・・・・・あっちで目をおさえてのたうち回ってる坂本君と、「・・・浮気はダメ。」と呟いて、手をチョキにしてる霧島さんは関係ないよねそうに違いない。

「あれ?ムッツリーニ、随分と冷静だね。僕ですらこんなにドキドキしてるんだから、鼻血の海に沈んでいると思ったのに。」

「・・・騙されるな。奴はスパッツを履いている。」

「あはは、ばれちゃった?」

そういえばムッツリーニ君なんか静かだったけどそういうことだったんだね。
普段のムッツリーニ君ならこのセリフ聞いただけで鼻血の噴水を産み出すはずなのに。
「俺は目を突かれ損じゃないか・・・。」と呟いてる坂本君は視界から外しとこっと。

「まあ特技ではないけど、最近はまってるのはコレかな?」

そう言って、工藤さんは小型な機械を取り出す。
よくわからないけど、あれは録音機かな?
そのままカチカチと弄る工藤さん。

ピッ《工藤さん》《僕》《こんなにドキドキしてるんだ》《やらない》《?》

「わああああっ!僕こんなこと言ってないよ!?変なものを再生しないでよ!!」

「ね?面白いでしょ?」

工藤さんの声は、吉井君ではなく、その後ろに向いている。
そっちには・・・

「・・・ええ。最っっ高に面白いわ。」

「・・・本当に、面白いセリフですね。」

氷の笑みをたたえた美波ちゃんと姫路ちゃん。
当事者ではないけど怖い。

「瑞季。ちょっとアレを取りに行くのを手伝ってもらえる?」

「わかりました。アレですね?喜んでお手伝いします。」

机に勉強道具を置いてなにかを取りに向かう2人。
笑みが怖い。

「あれ、秀吉、首をかしげてどうしたの?」

「明久、何かあったのじゃ?今姫路と島田に石畳を運ぶのを頼まれたんじゃが・・・。」

吉井君の全身から冷や汗が吹き出してる。
私にも使用用途が100%わかるから怖いよ。

「工藤、今のは録音した会話を合成したのか?」

「うん、そうだよ。」

それを聞いた坂本君と吉井君がヒソヒソと話してる。
多分脅迫状の犯人か話してるんじゃないかな。

「ねえ工藤さん。キミが・・・」

「ん?なに、吉井君?」

「あ~、えーっと、キミが・・・」

「ボクが?」

「キミが・・・僕にお尻を見せてくれると嬉しいっ!」

・・・・・・。
お尻に火傷の跡があるか確かめるためなんだろうけど、セクハラ発言だよ。
工藤さんは笑って流してくれたみたいだけど・・・。

「違うんだ工藤さん!別に僕はお尻が好きな訳ではなくて・・・」

「さすがだな明久。まさか録音機を目の前にそこまで言うとは。」

「へっ?」

そう。
録音機があるんだよね。

ピッ《僕にお尻を見せてくれると嬉しいっ!》

「ひあぁぁっ!これは合成すらしてない分ダメージが大きいよ!お願い工藤さん!今のは消してください!」

「吉井君ってからかいがいがあって面白いなあ。ついついいじめたくなっちゃうよ。」

ピッ《お願い工藤さん!》《僕にお尻を見せて》

「今の、何かしらね、瑞季?」

「なんでしょうね?美波ちゃん。」

表情を変えず、吉井君の後ろに石畳を設置していく2人。
気のせいか、2人の後ろにブリザードが見えるよ。

「ただでさえ目をつけられているFクラスで、さらに問題発言をしたバカがいるのかしらね。」

「そうですね、そんな人には、きつ~いお仕置きが必要ですね。」

「2人とも、これ合成だからね?」

最近、姫路ちゃんがFクラスの悪影響を受けてる気がする。
私の言葉も届いたか怪しいよ。

「二人とも誤解なんだ!僕は問題を起こす気はなくて、ただ《お尻が好き》ってだけで・・・って今のも音を重ねられたんだ!お願いだから手を後ろに縛らないで!あとそっちも見てないで助けてよ!特に雄二!」

「・・・工藤愛子。おふざけが過ぎる。」

そんな友のピンチに立ち上がったのはムッツリーニ君。
やっぱり、友達を陥れるような真似は許せなかったみたい。
吉井君が弁解を始める。

「2人ともよく聞いて。さっきのは誤解なんだ。僕はただ、《お尻が好き》って言いたかったんだ。《特に雄二》《の》《が好き》ってムッツリーニィィーッ!後半は貴様の仕業だな!」

「・・・吉井、雄二は渡さない。」

「いらないよ!」

「アキ・・・。そんなに坂本のお尻がいいの・・・?ウチじゃダメなの・・・?」

「前からわかっていたことですけど、ハッキリ言われるとショックです・・・。」

美波ちゃんと姫路ちゃんのお仕置きがとまったのはいいけど、吉井君には悲しいレッテルが。
というかムッツリーニ君、遊んだだけだったね・・・。

「だからどうして僕を同性愛者扱いするの!?僕にはそんな趣味は『同性愛をバカにしないでくださいっ!』ないよ!」

スパァンと音をたててドアを開け、外からドリルのツインテールの女の子が入ってくる。
誰?
さっきのセリフを考えるに、彼女は同性愛者なのかな?
ちなみに、私は同性愛を否定する気はまったくないよ。
私もお姉ちゃんがとっても大好きだし!

「み、美晴!?どうしてここに!?」

「お姉様に会うため、美晴はDクラスを抜け出しちゃいました!」

ミハルと言うその娘の恋愛対象は美波ちゃんみたいで、彼女の姿を見るなりとびつく。

「す、須川バリアーっ!」

「穢らわしいですっ!腐った豚にも劣る抱きごこちですっ!」

酷い・・・。
勝手に盾にされて罵倒された須川君、涙をこらえるかのように上を向いてるよ?

「ひどいですお姉様っ、美晴はこんなにもお姉様を愛してるというのにっ!」

「バカ、何言ってるのよ!アキに勘違いされちゃうでしょ!」

勘違いされるのは吉井君にだけじゃないと思うけどね。
まあ、美波ちゃんは吉井君が好きなのは見てればすぐわかるし、片想いというか一方通行気味みたい。

「君達、少し静かにしてくれないかい?」

新たな人も加わって騒いでいたら、さすがにうるさいと思われたらしく、メガネの男子が注意してくる。
彼はえーっと・・・あ、思い出した、Aクラス次席の久保君だ!

「あ、ごめん久保君。」

「吉井君か。気をつけてくれ。まったく、姫路さんといい島田さんといい、Fクラスには危険人物が多くて困る。」

謝った吉井君に対して言う久保君。
でも意外だな、坂本君とかより先に2人の名前があがるなんて。

「それと、同性愛者をバカにするような発言はどうかと思う。彼らは異常者でも精神障害者でもなく、個人的嗜好が世間一般とちょっと違っているだけの普通の人なのだから。」

同性愛者に対する言動をたしなめる久保君。
でもなんだろ、言葉にやけに重みがあるような・・・?
もしかして久保君もそうなのかな?
で、その対象が吉井君だから、彼のことが好きな2人を危険人物として挙げたとかだったりして!
ま、さすがにないよね!

「とにかく美晴、自分の教室に戻りなさい。」

「嫌ですっ!美晴はお姉様を愛してるんですっ!性別なんて関係ありませんっ!」

「はいはい、ウチにその趣味はないからね。」

美波ちゃんがミハルと呼ばれた女子生徒を教室の外に出し、扉を閉める。
やっと静かになったかな?

「性別なんて関係ない、か・・・。」

そう呟きながら吉井君をじっと見つめる久保君。
なんだろう、さっきあり得ないと捨てたはずの考えがバックステップで帰ってきた。

「性別なんて関係ない、ですか・・・。」

「なんで姫路さんはそこで僕と雄二を交互に見るの!?僕は知っての通り《秀吉》《が好き》ってちょっと!?」

またまた録音機による捏造が入る。

「もう、こうなったら《久保君》《雄二》《と》《交互に》《お尻を見せて》って違う!なんでこの場面で2人のお尻を見る必要があるのさ!とにかくそのボイスレコーダーを使うのはやめて!」

吉井君に交互にお尻を見せる坂本君と久保君・・・。
あ、想像したらツボに入ったかも。
やばい、笑いがとまらないや。

「吉井君、そういうのは困る。物事には順序というものがある。」

「わかってる!順序以前に人として間違ってることも!というかなんで僕をそっちの人にしようとするの!?とにかく、僕の話を聞いてくれぇっ!」

結局、この騒ぎと私の笑いの発作は鉄人先生がどなりこんでくるまで続いた。
笑いすぎてお腹痛いや。





そんなこんなで勉強時間や晩ごはんの時間も終わって、入浴時間の30分くらい前。
私達は吉井君達の部屋に来ていた。

「んで雄二、今回はどうするの?」

「昨日は待ち伏せしていた教師達に勝てるような戦力がなかった。だから、今回は頭数を増やす。廊下は一直線だから、正面突破以外ないからな。」

坂本君はそう言うけど、どうやって増やすんだろう。
もしかして、Fクラス男子全員で攻める、とかかな?
と思ってたらその通りだったようで、Fクラスの男子がぞろぞろとやってくる。
目的は聞かされてないらしくざわざわしてる。
坂本君はそれがおさまるのを待ち、声を出した。

「みんな、女子風呂の覗きに興味はないか?」

「「「詳しく聞かせろ。」」」

わー、全員食いついた~。

「俺達は昨日、理想郷を目指し6人で突撃したのだが、そこで卑劣にも待ち伏せしていた教師の罠にかかり、目的を達成できなかった。」

「「「ほほう、それで?」」」

坂本君の言葉に対して誰も突っ込みしてないことに対して、私は突っ込みたいな。

「そこで、お前達には教師という障害の排除を頼みたい。報酬はその後の理想郷の光景だ。」

「「「乗った!」」」

全員が躊躇いもなく賛同したよ。
いいのかなこれで。
でも、これだけは言っておかないとね。

「でも、お姉ちゃんの裸とかをみるのは絶対にダメだよ?見たら暗闇の刑だからね。」

「「「こいしちゃん!?」」」

まあ、男子だけの覗きと思っていたら女子がいたわけだし驚くよねそりゃ。

「大丈夫だ、古明地と霧雨は、とある事情からこちら側だ。さてそれより、これから隊を4つに別ける。A隊は俺、B隊は明久、C隊はムッツリーニ、D隊は秀吉に続け!二○一○、出陣するぞ!」

「「「おうっ!!」」」

わー、一糸乱れぬ返事だ~。
こういう団結力は凄いんだよね。
変態達によって組まれた編隊が部屋を飛び出し、女子風呂めがけて突撃してく。
廊下には、昨日と同じように布施先生が立ってる。

「昨日でこりるかと思ってましたが、まさか数をふやしてやって来るとは!全員止まりなさい!」

「D隊、足止めを頼む!」

「「「おうっ!」」」

立ち塞がろうとする先生に対し、D隊みんなが召喚獣を出す。
ひとりひとりは弱いけど、先生の召喚獣をぐるりと取り囲むだけの数がいるからね。
本人は横を抜けていく私達を捕まえようと追いすがってきたけど、ある程度のところで悔しそうに止まった。

「あれ?諦めたのかな?」

「恐らく干渉を嫌ったんだろうな。」

干渉?
よくわからないけど、とにかくこれで第一関門は突破かな?

「そこまでです、薄汚い豚共!この先は男子禁制の場所!大人しく引き返しなさい!」

そう思っていたら、目の前には予想外の光景が。
さっき見たミハルさんを先頭に、女子達がずらりと立ち塞がってる。
戦力的には・・・だいたいDEFの3クラス分+αってとこかな?
まあ、私の感覚が少しズレてるだけで、普通は覗きという行為自体が許せないものだもんね。
横では美波ちゃんのことペッタンコペッタンコ言ってた吉井君が間接技決められてるけど、それはまあいっか。

「やっほー、吉井君。何を見に来たのかな?ボクを覗きに来てくれたのなら嬉しいんだけど♪」

「工藤さん!?そんな、どうしてここに!?」

吉井君に工藤さんが手を振っている。
もし工藤さんが脅迫犯なら、ここにいられると火傷の確認が出来ないから嬉しくないな。

「・・・古明地?何故そっち側にいるんだ?まさか、姉を覗きに来たのか?」

あ、正邪ちゃんにバレた。
正邪ちゃんなら信頼できるし脅迫犯のこと、言ってもいいかもしれないけど・・・。
でも、今ここで言うのは論外なんだよね。

「うん、まあちょっとした事情があるんだよ。」

「・・・まあいいけどな。」

正邪ちゃんは追求を止めてくれる。
なにか事情があるんだと思ってくれたのかな。

「でも、この布陣、どう突破するつもりなのですか?あまりこういうことは言いたくないのですが、私には勝てないと思いますよ。」

「我もおるぞ!太子様、我らに任せてくだされ!」

「布都、腕輪で味方を攻撃するのは注意しなければなりませんよ。まあ、そこまで言うのなら任せましょうか。一応私も召喚獣だけは出しておきましょう。」

前に出てきてそう言うのは阿求ちゃん。
あと物部さん。
昨日とは布陣を変えたようで、豊郷耳先生がいる。
うーん、阿求ちゃんの日本史は4ケタだし、物部さんも腕輪持ちだから厳しすぎるよね。
先生の点数はわからないけど、かなり高いだろうし・・・。

「落ち着け!豊郷耳先生以外の召喚獣は物に触れない!召喚獣は出さないか豊郷耳先生の足止めのみにして、脇を駆け抜けろっ!」

須川君が、そう指示を飛ばす。
教師の召喚獣以外は物に触れない。
だからその判断は一見正しいように見えるけど・・・。

「教育的指導ッ!」

「ぐふぉっ!」

まあ、こうなるよね。
最終関門として、鉄人先生が立ち塞がってるわけだし。

「鉄人を生身で突破しないといけないのか!?」

「勝てっこない・・・!あいつは伝説の鉄人だ・・・!」

「勝てるわけがないッ!」

絶望のざわめきが広がってる。
まあ、Fクラスは特に恐ろしさを知ってるもんね。

「さて、吉井、昨日のでは指導が足りなかったようだな・・・ 。今日もまた、指導してやろう・・・。」

ものすごい絶望的な状況だね。
前からは鉄人先生が迫ってきていて、生身ではどうやっても勝てない。
後ろも女子達が壁を作ってるから通れそうにないしね。
かといって召喚獣出しても、阿求ちゃんに瞬殺される未来しか見えないもん。
これは・・・全滅ルートだよね。

「吉井っ!諦めるな!悔しくてもこの場は退いて力を蓄えろ!今日はダメでも明日にはチャンスがあるはずだ!」

「す、須川君!?」

でも、打ち倒された須川君が鉄人先生の足にしがみついて行く手を阻んでいた。

「吉井、鉄人を倒すことが出来るのは、《観察処分者》であるお前の召喚獣だけなんだから・・・。だから頼む!この場は逃げて生き延びてくれ!」

「須川君っ!無理だよ!みんなを置いて自分だけ逃げるなんて!」

須川君が最後の力を振り絞って吉井君に訴えかける。
鉄人先生の拳が叩きこまれても、意地でも離さない。

「こ、この手は離さねえ・・・!吉井は俺達の希望なんだ・・・!皆、吉井の撤退を援護するんだ・・・!」

『『『おうっ!』』』

「す、須川君・・・!それに、皆も・・・。」

「吉井!お前は召喚獣で女子を押し退けて走れ!召喚獣は俺達が意地でも抑える!」

「この場の全員で血路を開く!お前は振り向かずに駆け抜けろ!」

「ここが男の見せ所ってやつだな!」

みんなが次々と死地におもむいていく。
漢の生きざまみたいな感じでかっこいいね。

「私も援護するぜ!点数低いがやってやる!ファイナルマスタースパーク!」

魔理沙も、まるで自身の召喚獣の命を削るようなレーザーを放ち、後方の召喚獣を消し飛ばす。
召喚獣システムにはオカルトの要素があるからか、みんなの召喚獣が点数以上の力を出してるみたい。
こんなの見せられちゃ私も、ね?

「易々と逃がしはしないのじゃ!」

「逃がしません!」

「吉井を守れっ!」

点数4ケタと400台の召喚獣から放たれた遠距離攻撃が吉井君に襲いかかろうとする。
でも、遠距離攻撃が吉井君に当たらないように、自身の召喚獣の身を呈して庇うFクラスの2人。

「・・・チェンジ『本居小鈴』。遠距離はダメなようですね。」

Fクラスの人達が肉盾となって防がれると判断したか、即座に武器を切り替え、分身して攻めにかかる阿求ちゃん。

「・・・って、これ、バラバラすぎて操作が効かないです・・・!」

でもまだうまく操作が出来ないようで、うまく動けてない。

「ごめんね、私も吉井君を倒されたく無いんだ。少し相手してね?」

「・・・何故、そちら側に・・・?」

「ちょっと事情があってね。」

そうした私達の援護のおかげで、吉井君は後ろを振り向かずに逃げていく。

「皆・・・ごめん。必ず僕は生き延びて、いつか理想郷に辿り着くことを誓うから・・・。」

吉井君の、心底悔しそうな声がかすかに聞こえてくる。
自分の無力さへの怒りと悔しさ、そして強さへの欲望が感じられる声。
私の召喚獣も阿求ちゃんに倒され、打つ手はなくなっちゃった。
まわりの男子達も、恐らく布施先生に当たったD隊も、既に壊滅し、拘束される。
私達はここで終わるけど、吉井君だけは生き延びることを祈る。
どうか、吉井君は・・・。

《放送連絡です。Fクラス吉井明久。至急臨時指導室に来るように。》

ま、そうなるよね。
顔バレてるし。
わかってたけど。





こうして2日目も、完全敗北で補修で終わったよ。