産まれてすぐ挿管され

麻酔科医やら新生児科医やらでごった返してた部屋からゆきのを連れて一斉に人が出ていって、

私は出血が止まらず、人混みで見えないゆきのを見送ることもできず、

あれだけいぶかしがった神様という存在に嘆願した。

今度こそ、片手片足などけち臭いことは言わない。私の命と引き換えでいい。ゆきのを助けてほしい。

あれから3年。

ゆきのは大きな病気も後遺症もなく成長してくれた。

私も死ななかったし、片手も片足もある。

だから、あの身勝手に持ちかけた取引を神様がどれだけ聞いてくれたかはわからない。

確かなのは生命力の強い娘だということだ。

全くといっていいほど手のかからなかった、可愛いしかなかった赤ちゃん期を過ぎて、

今はゆきののあまりの奔放ぶりに母は時々辟易してしまうことがある。

叱られるかも？より好奇心が勝る。何よりも自分のやりたいことを優先できる。ひろの時には有り得なかったことが起きる。

人の顔色を伺って生きてきた私が全く持ちあせてないゆきのの性質に、戸惑ってしまうことがある。

けれど、そんなゆきのだから

お姉ちゃんの魂も引き受けて、母の心の傷も引き受けて、それでも揺るぎない自分らしさを保てるんだろう。

身体が強いだけじゃない。心も強い。そんなゆきののおかげで今がある。

うちを選んでくれて。産まれてきてくれて。毎日笑ってくれて。彼女の強さと明るさとしなやかさに、どれだけ私の人生が救われているのか、忘れちゃいけないし、甘えちゃいけない。

ゆきの、3歳

誕生日おめでとう

床にボールペンでアンパンマンを書かれてもw

窓から裸足で脱走されてもw

そんなあなたに実際は救われている

産まれてきてくれたことに感謝です

ゆきの、3歳お誕生日おめでとう