ババドック 〜暗闇の魔物〜
こんにちは「ババドック 〜暗闇の魔物〜」(2014)というホラー映画を見ました。主人公のアメリアはシングルマザーとして6歳の息子サミュエルを育てています。夫は6年前に交通事故で亡くなってしまい、アメリアはまだ立ち直れていません。しかもこの息子が危ない武器を持ち歩いたり、奇声を発したりする困ったちゃんで途方にくれる毎日。ある日寝かしつけのために絵本を読んであげるから持ってきなさいとサミュエルにいうと、彼は本棚から見たこともない「ミスター・ババドック 」という本を持って来るんです。それは仕掛け絵本なんですが絵もストーリーも不気味。気持ち悪いから棚の上に戻すんですがその日から親子に不可解な現象が起き始めで…という感じのストーリーです。以下、ネタバレありの感想です。まず親子の住んでる家なんですが死ぬほど辛気くさいこんなホラーな照明でご飯食べてたらそりゃ魔物も来るわと言いたくなる…でもって主人公のアメリアさんもう生活感と疲れが顔やら髪に出まくってて一発であ、この人病んでる…とわかってしまうレベル。なので警察に相談に行っても、あ、おかしなオンナが来たぞみたいな感じでまともに取り合ってもらえませんちなみに老人ホームで介護のお仕事してるのでいつもナースのような格好なのですがそれもホラー感あって怖いです。サミュエルくんはかわいいんだけど、悪魔かっ⁈ってレベルで言うこと聞かないでも世のお母さんなら誰でもこんな状態になった子供に手を焼いたことがあるかもしれないですね。思えば自分もこんな子だったしアメリアは夜中によく一人でテレビ見てるんですがそれもなんか白黒のふるーい映画とかドラマとかでとにかく暗ーい…でも夫に先立たれてから恋人もなく寂しいみたいでそんな白黒のふつうのキスシーンでもムラムラきて電マを当ててしまったりします仕事も大変だし面白くないし、恋人もいなくて寂しいし、おそらくADHDと思われる息子を一人で育ててるはでもう毎日がつらすぎて完全鬱状態になっちゃってるんです。きっと子育てしてるお母さんなら少なからず彼女の気持ちが分かるんじゃないでしょうか。ホラー映画の形をとりながらシングルマザーの大変さ、子育ての辛さを描いてるんだなと思いました。小道具の絵本がとても良くできていて、かなり怖かったです。一度破いて捨てたのに復活したバージョンのやつが特に。怖いながらも感心してしまった。そうそう、サミュエルくんの誕生日はいつもいとこの女の子と合同で祝ってたようなんですね。映画の最後にその理由が明らかになるのですが、それは父親が産気づいたアメリアを車で運ぶ途中で事故に遭い死んでしまい、父の命日=サミュエルの誕生日のため当日には祝ってもらえていなかったんです。なんてかわいそうな…途中、魔物に取り憑かれたアメリアに「あんたが代わりに死んでたらよかったって何度思ったか分かんないわよ!」とまで言われて… これってすごくキツイけど、でも彼女の本心でもあるんですよね。やりきれない…。さらにアメリアはサミュエルの首を絞めて殺そうとするのですが、そこでサミュエルがアメリアの頬を撫でるようなしぐさをするんですよ。ここちょっと泣きそうになってしまいました。エンディングはアメリアがミミズの入ったボウルを持って地下室に降りていきます。そうアメリア親子はババドックを地下室で飼うことにしたんです。これってつまりアメリアが自分の鬱やネガティブな感情、元夫への思いやサミュエルを疎ましく思ってさしまう気持ちをすべて消し去ったわけではなく、それとうまく付き合いコントロールするすべを身につけたってことなのかなと思いました。児童虐待の問題にも通じる深いテーマを描いたホラー映画でした。ちなみに監督は女性ジェニファー・ケントですさすが女性の心理描写が上手だなと思いました。