気狂いピエロ(Pierrot Le Fou) | CAHIER DE CHOCOLAT

気狂いピエロ(Pierrot Le Fou)

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どれぐらいぶりに観たかわからないくらい久しぶりに観た。こんなにおかしくて、こんなに悲しかったっけ……と思った。ちょっと驚くほど。それでもとんでもないセンスと鮮やかな色がまず印象的なのはいつもどおり。この映画の三原色は赤と青と黄色。何度か出てくる血塗られた顔、黄色の顔、最後の顔は青。これも三原色になっている。画面の中には常に赤がある。赤は強い色でもあるし、血をイメージさせる。この映画だけでなくゴダールの映画には血が出てくることも結構あるけど、いつも絵の具みたいな赤の血。明らかににせもの。これはアクションや事故なども含めて、暴力的なシーンがほとんど排除されていることとも関係あるのだろうと思う。ラブシーンも同じくほぼない。編集ディレクターも務める推理作家、ジャン=ベルナール・プーイの音声コメンタリーによると、「(暴力シーンとラブシーンは)視覚的にないほうが感じられる」、「ストーリー性を重視している」といったことからだとか。これはすごくよくわかるし、私がゴダールを好きな理由のひとつでもある。あと、時間や説明の省略(とうとつに衣装が変わったり、なぜかお金があったりというところも)は「冒険映画や子ども向け映画」的だと聞いて納得。そういえば、ずっと手放さない唯一の荷物がピエ・ニクレのマンガ本のフェルディナンといつも犬のぬいぐるみをふり回しているマリエンヌはまるで子どものよう。それにしても、シーンの切り替わりやセリフの間、一瞬の沈黙など、観ていてほんとうに楽しいし、心地良い。そういうものの中には、意味があるのかと思ったらないものもあったりする。でも、どういう意味があるのか一生懸命考えていたら、それ自体に深い意味はなかった……ということも含めて楽しい(もちろん全体の中で意味がないわけではない)。感覚に訴えてくるものというのは最強なのかもしれないな。アロンジ、アランゾ。オッケー、マンボ!