『ワンダーウーマン 1984』おまけなど | CAHIER DE CHOCOLAT

『ワンダーウーマン 1984』おまけなど

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“映画衣装の密かな愉しみ”第8回:『ワンダーウーマン 1984』1984年を闘うそれぞれの戦闘服
https://jp.ign.com/clothes-on-film/49615/feature/8-19841984
が公開になりました。こちらはおまけなので、まずは本編の記事のほうから読んで下さい。


予告を観たときから楽しみにしていました。あのスティーブの80's ファッションショーを見て、楽しみにしないではいられない。実際観たら、楽しいだけではなくて、色々深くておもしろかったです。こちらもばっちりネタバレしますので、知りたくない方はストップして下さい。

まずは衣装関係などで本編の記事に入らなかったことから。ドリーム・ストーンにお願いごとをした翌日のバーバラは前日に着ていたものをアレンジして別のスタイルにしていますが、あの日はもともと博物館に宿泊する予定だったということになっていて、大きなバックパックにミントグリーンのパンプスも入れていたんだそうです。ということは、バーバラはブラウンとミントグリーンの2足のパンプスを持参していたということに。コーディネイトに合わせて白い大きなプラスティックのイヤリングも持ってきていたようなので、かなり準備のいいバーバラ。でも、一見不器用そうなタイプのコのほうが、実はあれこれ考えてちゃんと用意しているというのもなかなか説得力ある感じです。この時のサーモンピンク+ミントグリーンや、ジムでのターコイズ+ピンクはザ・80'sな配色。冷蔵庫の扉を開けた(そして壊した)ときにバーバラが着ているTシャツには猫のイラストが描かれていて、その後の猫科の動物へのトランスフォーメーションを匂わせている(スクリーンではほとんど見えませんが)、さらに、描かれているイラストは80年代に活躍したファッションイラストレーター、アントニオ・ロペスへのオマージュなのだとか。猫科へのトランスフォーメーションについては、バーバラがドリーム・ストーンにお願いをするために部屋に入ってきたときにも上のほうに猫科の動物のはくせいが映るので、ここでもほのめかされているのではないかと思います。

マックスが着ているのは、本編のほうにくわしく書いていますが、80年代に流行した「パワースーツ」。ペドロ・パスカルは、マックスのブロンドやパワースーツについて「マンダロリアンのマスクやアーマーとも似ている」と言っています。それくらいあれはマックスにとってはがんばってるファッションということなんですね。回想シーンのマックスは地味なスーツを着ていて、髪もまだブロンドではないです。パスカルが話していた「文化的な病」、当時はふつうにそういうところがあったのだろうと思います。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のエンディングもマーティが物質的に満たされるというものでした。それはどうなのかという意見も中にはあったようですが(これはフランスで出た感想だそう)。

スティーブが歓喜した80年代のスニーカーはナイキの「コルテッツ」。最初見たときは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でマーティが履いている「ブルイン」かと一瞬思いましたが、違いました。「コルテッツ」は1994年の映画『フォレスト・ガンプ/一期一会』でガンプが履いて走るスニーカーです。ちなみに、「コルテッツ」はランニングシューズで、「ブルイン」はバスケットボールシューズ。あと、1984年のスティーブといえばやっぱりウエストポーチでしょう。ガル・ガドットの話によると、クリス・パインは便利なウエストポーチにはまって、撮影現場では自分用に入手したウエストポーチをずっとつけていたそうです。

ダイアナのラルフ・ローレン風のスタイルのあのベストは実際のラルフ・ローレンの製品(ほかはスタッフが制作したもの)。あのスタイルを完成させるアイテムがほしいと思っていたときに誰かが見つけてきたのだとか。あのベストがあるのとないのではぜんぜん違うし、ベストの上からメッシュベルトというのもラルフっぽい。ガルは「ちょっと『アニー・ホール』のような雰囲気もある」と言ってます。確かに、ベストやジャケットの上からベルトというのは、アニー・ホールを演じたダイアン・キートンのおなじみのスタイルでもあります。でも、ハイヒールを合わせているのがダイアナ・テイスト。スタッフが「女神スタイル」と呼んでいた白いドレスのときにつけているティファニーの「ボーン カフ」には、サイズはスモールとミディアム、カラーはゴールドとシルバーとそれぞれ2種類ずつあって、ダイアナがつけているのは、ゴールドのミディアムサイズ。4種類の中でも一番ゴージャスなものです(お値段も一番ゴージャス!)。衣装ではありませんが、ダイアナが大活躍するショッピングモールは『ストレンジャー・シングス』シーズン3の「スターコート・モール」と同じ場所です。


さて、ここからは個人的な感想を。『ワンダーウーマン 1984』は、なぜかわからないけど何度も泣きそうになる映画でした。ほんとうになんでこんなに何回も泣きそうになるのかわからない。まず最初のチビダイアナががんばってるところでもうすでに泣きそうになって、次のきらきらしたショッピングモールでもなぜか泣きそうになる。飛行機に乗ってめちゃくちゃ嬉しそうなスティーブを見てぐっときて、花火でまた泣きそうになって、ダイアナとスティーブのお別れで泣く。そのあと、マックスが会社の入り口でそわそわしてるところ見てまた泣きそうに。最後に、グッドルッキングガイとダイアナの会話でまたちょっとじわっとくる……となんだかんだずっと泣きそうになったり、泣いたりしてるという。中でも、会社を作ったばかりの頃のマックスにはとてもくるものが(一瞬しか映らないけど)。築年数古そうなビルの一角の小さな事務室の入り口でお客さんを待つ、あの地味スーツ姿がたまりません。お茶とお菓子を用意してるってどういうことですか、可愛いすぎじゃないですか。それまででも結構お調子者だったり、アリスタに嫌われないように必死だったり、バーバラに一方的に好かれてちょっととまどいつつも「好都合だしまあいいか」みたいな感じだったり、そういうのがチラチラ見えるから、やっぱりマックスはヴィランというには愛おしすぎる。

スティーブとダイアナの立場が前作とは完全に逆転しているという設定も秀逸。スティーブのとぼけ具合やはしゃぎっぷりが可愛くて、前作とのギャップもあって楽しかった。でもそれが逆に別れの寂しさ数割り増しにしてしまうという。しかしまあとにかく美しいダイアナ。『ワンダーウーマン』でもピュアな少女のような美しさがあったけど、今回は色々経験して落ち着いた大人の女性になっていて、ちょっと疲れてる感じなのがまたいい。ガルのハスキーな声も魅力的。ファッションにもダイアナの良さがすごく出ていると思います。定番ぽくてもちゃんと80年代らしさがあるところがいい。彼女自身のテイストながら、時代に違和感のない服を身につけているところに知性が感じられます。何気に前回の衣装と雰囲気近いところからも一途な思いが伝わってくるようだし(せつない)。最後のワンダーウーマン・カラーのコーディネイトもホリデームードで素敵。あのシーンでは、「クリスマスシーズンに観られてよかったなー」と思いました。

すでに第3弾も決定している“ワンダーウーマン”、次も楽しみ。スティーブ2回目の復活はない、ですよね、きっと。あったらあったですごく楽しいだろうけど、3回もお別れさせるのはダイアナがかわいそう。今回でも、2回お別れさせるのは酷だなあ……と思いました。バーバラは最後まで「願いを取り消す」とは言っていないので、まさかの再登場?だったり? そういえば、ドリーム・ストーンにお願いしてコーヒーをもらった人の代償は何だったのか、彼はどうなったのか、私は地味に気になっています。