離婚話を切り出されてから、
1ヶ月くらい後のことだろうか。
ベッドで寝転がってスマホを触っている夫を見ると、
左手の薬指には、もう指輪がなかった。
いつから…?
こうなる前には、
ちゃんと指輪をつけていた記憶はある。
いつ外した…?
一気に動悸がしてきたが、
何気ない風を装って聞いた。
「指輪、捨てたの?」
夫はスマホから目を離さずに、
「捨ててないけど、もうはめない」
と答えた。
おそらく会社でも、もうつけていないのだろう。
まめに取り外しするタイプではない。
会社の人に聞かれても、
「もう俺たち夫婦は破綻してるから。
離婚も時間の問題だよ」
とでも言っているのだろう。
結婚指輪は、夫婦の象徴だ。
お互い、何があっても一度も外したことはなかった。
もう夫は、
気持ちの上では離婚しているんだ、
私を置き去りにして、
もう夫婦に戻るつもりはないんだ、と悟った。
別の部屋で、声を押し殺して泣いた。