14日で発生から1カ月を迎えた熊本地震で、避難時に服薬履歴を書いた「お薬手帳」を持ち出すことの有効性が再確認されている。
手帳を見て病名や薬の種類が分かり、適切な処置につながった反面、手帳がないために、どの薬を出すか判断が難しいケースがあったからです。
熊本県益城町(ましきまち)で支援活動に当たった経験を踏まえ、岡山赤十字病院(岡山市北区青江)の薬剤師浅野志津さん(48)は「外出時は必ず手帳を持って」と訴えてます。
浅野さんは日赤県支部が派遣した救護班の一員として、益城町で医師や看護師と計11人で活動。
千人以上が避難していたという町総合体育館で4月21~23日に巡回診療し、持病のある人や体調が優れない人など約120人に投薬や服薬指導を行いました。
活動の中で再認識したのが「お薬手帳」の重要性。こんなケースがありました。
避難所で生活していたが、同じ敷地内に設けられた救護所に出向く気力もなかった70代男性。
注意が必要な要観察者のリストから漏れていました。
浅野さんは手帳を見せてもらい、治療薬から手足の震えや体のこわばりが起こる難病・パーキンソン病と特定できた。
「もし手帳がなければ、そのままリストに載らず、健康状態が悪化した可能性もあった」と明かしました。
逆に手帳がなく投薬判断に困ったことも。
高血圧の高齢女性から「手帳が持ち出せなかったので、普段飲んでいる2種類の薬が分からない」と相談されたが、普段より効き目の強い薬は、血圧が下がりすぎることがあるため、リスクに考慮した投薬を医師に提案。
「手帳があれば、もっと適切に血圧をコントロールできる薬を選べたし、迅速に処方できただろう」
岡山赤十字病院の薬剤部では、錠剤の包装ケースなどを携帯電話やスマートフォンで撮影しておく手法も紹介。
手帳を持ち出せなかった場合も包みに書かれた情報から薬の種類が分かる。
浅野さんは「持病に対して最適な薬をスムーズに出せる。命に関わる大切な手帳。避難の時は持ち出して」と呼び掛けています。