みゆきの話の中には父親って全然出てこないよね。
どうしてなの?
昔の恋人から不意に放たれたこのひと言で
私は自分の浅い記憶の中に
父親の影がない事に初めて気づいた。
何歳の時に両親が離婚したんだっけ
父親に最後に会ったのはいつだったろう
最後に交わした言葉は何だったろう
全然、わからない。
深い記憶の中で父を探す。
母が姉を連れて家を出てからの数ヶ月
父と私と弟と3人で暮らしていた期間がある。
私は、小学生だった?中学生だった?
いったい何ヶ月だったのか、何年だったのか
どうして何も思い出せないんだろう。
父親と離れてから何年経っただろう。
父親から連絡をしてきた事は一度もない。
それでも私は、いつもどこかで待っていたような気がする。
「みゆき、会いたかったよ。寂しい思いをさせてしまって悪かったね」
そんな風に、言って欲しかった気がする。
それでも、時だけが淡々と過ぎて
記憶は薄れて、今に、至る。
私は今でも、父親という大きな存在に憧れている。
世の中で誰よりも私を愛し
無条件で大切にしてくれるはずの唯一の存在
空想の中の父に、ファーザー・コンプレックス。
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手元に1枚だけ、父親が写っている写真がある。
横浜の実家の庭でブランコに乗る私。
2歳くらいかな。
必死でブランコにつかまる私を
父が、愛しそうに、見ている。