随分前に書いたのですが、未だにヒット率の高い記事がコレ
やはり健全な記事だと「PV率」も高くなるようですが、やはり内容も重要。
どうでも良い「業スー」ネタで「PV率」稼いでも虚しくなります。
今回は、ライスチョコではなく「梅ジャム」の話。
紙しばいのおっちゃん
自分が一番最初に「梅ジャム」の存在を知ったのは昭和の高度成長期で、まだ子どもの頃。公園で遊んでいると、公園にチャリで来る「紙しばい」のおっちゃんがいました。
多分、紙しばいのおっちゃんが公園に来る日時は、公園によってある程度決まっているのでしょう。自分が紙しばいを見たのは、たまたま偶然居合わせたときでしたが、紙しばいのおっちゃんが来ると、公園に居る子供が皆わいわい、おっちゃんの周りに集まっていきます。
おっちゃんは自転車を停めると、自転車の荷台に載せている木箱を組み立てて、紙芝居の準備をはじめます。
そして準備が終わると、木箱の引き出しに入っているお菓子を売りはじめます。
木箱は、上の部分が「紙しばい」のフレームになっていて、下には引き出しがついています。引き出しを引くと中には「せんべい」や「水飴」があります。
せんべいには「ソース」のほか「梅ジャム」や「オレンジジャム」から味を選ぶと、おっちゃんが刷毛(はけ)でせんべいに「でろん」と塗ってくれます。
水飴は、半分に折った割り箸にぐるぐる巻き取って、せんべいを水飴に「ぺと」っとくっつけてハイッ。
公園の子供たちは、小銭を手に皆、おせんべいの枚数と味を「せんべい10枚、梅ジャム~」みたいな感じで指定すると、おっちゃんはおせんべいを手に取ってトランプのカードを広げるように広げ、そこに刷毛で梅ジャムを「でろん」と塗って渡してくれます。
子供たちは、砂場で遊んでいた手を洗うこともなく、そのおせんべいを手に取って食べます。記憶にはありませんが、公園の水道で手を洗ってる子も中にはいたのかな?(苦笑)
どうせたくさんの砂ぼこりを吸い込んでいるので、手を洗う洗わないなんて誤差の範囲。今どきのおとなだって、男も女もトイレを出るときは、水道で指をちょちょっと申し訳なさそうに濡らして、髪の毛を整えるフリをして髪の毛で拭いて終わりです(苦笑)
花丸せんべい
ちなみに「おせんべい」と呼んでいるものは、いわゆる米粉で焼いたせんべいではなく、「ミルクせんべい」と言うんですか?
当時の「せんべい」は、佐藤製菓の「花丸せんべい」というのが主流のようです。
原材料的には、小麦粉・コーンスターチ・脱脂粉乳に隠し味程度の砂糖、膨張剤?発泡剤?を入れて焼いたような、薄くて軽い食感のやつ。
おっちゃんは、子どもがたくさん遊んでいる公園を狙っているのでしょう。
近所に住んでる子どもなら良いですが、自分のように少し遠くから来る子は小銭を持ってません。
駄菓子を買えてる子が少し羨ましいのですが、しかし駄菓子を買わなくても紙しばいは観れるので少し得した気分(笑)
今だとネットでゲームを無課金で遊ぶ感覚でしょうか?苦笑
梅ジャム・オレンジジャム
それからしばらく経って、駄菓子屋などでも「せんべい」や一人用に小分けされた「梅ジャム」が見られるように。
「梅ジャム」は知ってても「オレンジジャム」を知らない人も結構いるようですね。梅ジャムは酸っぱかったので、自分は「オレンジジャム」も結構好きだった記憶があります。
オレンジジャムとは言っても、天然のみかんで作るジャムとは全く異なるものですよ?苦笑
余談 雑司ヶ谷の上川口屋さん
そう言えば、雑司ヶ谷の鬼子母神にある江戸時代から続く駄菓子屋さん。上川口屋さんは、もう閉まってしまったのでしょうか。
「東京最古の駄菓子屋『上川口屋』は 242年の歴史を背負う 82歳の女性店主が語る家業を守る意味」
記事を書こうと思いついた訳
ちなみに何故、突然「梅ジャム」の記事を書こうと思いついたかと言うと、もう店仕舞いしてしまった梅ジャムメーカー「梅の花本舗」社長の高林博文氏のインタビュー記事がいくつか見つかったこと。
実に良い言葉ですね。
そしてもうひとつの理由。それは上記の記事にも関連情報はありますが、それとは別に、梅ジャムの原材料表記の情報を見つけたこと(残念ながら出典はわからなくなってしまいました)。
梅ジャムの原材料表記
梅の花本舗の「梅ジャム」の原材料は、梅肉、砂糖、小麦粉、食塩、小麦澱粉、リンゴ酸、酢酸、着色料(赤色102号)、保存料(ソルビン酸K)です。
酢酸と聞くと、ちょっと驚いてしまいますが、穀物臭など雑味のない純粋な「酸味」です。日本で売ってるミツカンの穀物酢をはじめ大部分は「醸造酢」。これに対して「蒸留酢」というのもあります。
タバスコのお酢をイメージしてみて下さい。
これにリンゴ酸で「フルーティー」に仕上げている。メインは「梅肉」で「砂糖」と「食塩」は梅肉の塩っ辛さの調整、と考えれば良いでしょう。
小麦粉と小麦澱粉は「とろみ」をつけるのと、着色料の色が乗るベースになっています。
当時で1つ5円とか10円の商品ですから、ぎっしりと梅肉が詰まっている筈もありません。梅肉の塩味を砂糖と塩で調整して、梅肉の酸味はリンゴ酸と酢酸で調整したものを水で薄めて、小麦粉と小麦澱粉でとろみをつけたもの、と理解すれば良さそうです。
製造時冷えるときに掻き混ぜている、というのは、小麦澱粉が吸った水分が分離してしまうからでしょう。
ジャムの水分が分離しない状態に置くというのは、商品を作る上では大きなポイントになったのだろうと思われます。
補足
小麦粉が原材料で加熱しても固まらないもの・・・と言えば、関東では「もんじゃ」があります。
冷ました「もんじゃ」の記憶がないので何とも言えませんが、もんじゃ程度に薄く小麦粉を解いた液をイメージすれば良いのでしょうか。もんじゃでも過熱すると鍋肌に膜が出来ますので、もっと薄くても良いのかも知れません。
インタビュー記事には、梅ジャムの作り方として「大釜に梅肉、砂糖、小麦粉、食塩、小麦でんぷん、酸味料、香料などを入れ、1釜分 (約80キロ) を煮詰める」とあります。
煮詰めるという表現をされていますが、なんかのエキスを作る感覚でぐつぐつ煮込んで水分を飛ばしているかというと、ちょっと違うように思えてなりません。
また、リンゴ酸は分かりませんが、酢酸などはあまり過熱していると飛んでしまいます。ですので煮詰める前の段階で酢酸が入るかというと、そこもちょっと微妙。酸味の角を取るために、加熱前に入れる場合もなくはありませんが。
小麦澱粉については、片栗粉であれば「生」でも少量なら食べれますが、小麦澱粉は加熱が必須ですので、小麦粉(薄力粉)よりも(グルテンの)力を弱めたいということなのでしょう。
野暮な話にはなりますが、インタビューにある内容から経営の大枠も見え隠れします。
1箱はジャム40個入りで 600g。箱の重さが 20g らしいので、ジャム1袋はだいたい 14g ということになります。1箱でジャム 580g ですので大釜でのジャムの出来高を 60キロとすると、1回の製造で約 100箱という計算になります。
ジャム1個の定価が 10円で 40個入りですから、駄菓子屋での上代は 400円で、仕入れは7掛けとすると 280円。卸の取り分を 10%とすると工場出荷価格は 240円。
1回の製造で出来る 100箱の売上げが 20,000~24,000 円。
40年前に自動充填機を導入する前は、1日 6,000個。自動充填機を導入以降は、最大1日に 20,000個弱。多分、この数はジャムの個数ですので、自動充填機導入以前は 150箱。自動充填機導入以降は、最大 500箱ということになります。
梅ジャムがないと、日本人は生きていけないというものでもありません。そういう意味では嗜好品。
でも子どもの買うものだから・・・と大々的な値上げもせず、多くの子供たちの舌にその時代の記憶と思い出を残したヒット商品です。