これは突然腹痛に襲われた記録です。

 

それは4月14日、右下腹部のとんでもない痛みから始まった・・・

 

 

 

2018年4月14日(土)

 

この日はランチ会があって、普段食べないようなゴージャスな食事を楽しんだ。

おいしかった~♪

楽しかったあ♡ 

なんてお腹さすりつつ、うきうき帰宅。

ゆっくり悪魔が忍び寄ってくることも知らずにいた。

「食べすぎたかな」

そう思った。

食べている時にも思ったよ。

コース料理のくせに、すんごいボリューム。

「でも残したし」

うーん、夕ご飯は入らないな。(当たり前だ)

 

ちょっとお腹痛いかも。

そう思って横になった。

 

きっとすぐに治るさ。

 

……痛い。

痛い痛い痛い。マジ痛い。

 

右下腹部が明らかに異常を訴えておる。

 

食べ過ぎ?

何かにあたった?

 

起きるのも痛い、

寝ていても痛い、

トイレ行くのも決意表明が必要なほど痛い。

 

祭り、勃発。

 

特別サイズのどでかい和太鼓をドドンがドン、

ベテランの大将が力いっぱい叩いている勢いで痛い。

時にはバチの反対側で右下腹部をグリグリ、エッジを効かせてねじ込んでくる。

 

ぎゅぎゅーっ、きりきり、

息もできないほどの痛みに右下腹部から手が離せません。

 

「いだいいだいいだだだだ」

 

いっそ吐け。

 

下痢でもなんでも出たら楽になる。

 

がんばれわたし!

 

しかし何も出ない。

痛みの中必死でがんばるもご利益ゼロ

 

市販の胃腸薬を飲む。

 

「痛い痛い痛い」

百回唱えて治るなら言う。

つーかもう言ってる。

寝ながら立膝になってるし。

うーん、うーん。

 

痛いよう。何か出たら治るはず。

 

お百度参りの勢いでトイレを参拝、御利益なしで戻る。

 

和太鼓の勢い衰えず。

 

大将、太鼓を叩くのをやめて日本手拭いできりきり締め付けてきた。

 

これは、あれだ「雑巾を絞るような痛み」ってやつでは?

あれ?でも雑巾が絞られて痛いとか言うわけないよな。

 

なんでもいいけど痛い。

「これって、もしかして、有名なアレなのでは…?」

 

 

虫・垂・炎。

 

 

いやいや、虫垂炎はとんでもなく痛いって聞くぞ!

 

いや、痛いけど。

今、痛いけど。

 

でも、あれって絶対手術じゃん?

散らす、って手もあるらしいけど、散らすってなんだ?

散らされたらまた集まるんじゃない?

いつか集結するんじゃない?

でも、手術が免れるなら散らす、でもいいか…。

 

だったらはやめに病院行かないと。

 

時間がたつとねじれて腐りかけていたとか腹膜炎起こしたとか、ありがたくないお土産がどんどんつくらしいぞ!

 

いやでも虫垂炎じゃないから!

 

トイレ参りもなんとかできるし、数秒「マシになったかも」と思える幻覚症状(?)もあるし、大丈夫、虫垂炎じゃない。

 

そう自分を励ましながらも一度浮かんだ「虫垂炎」の疑いは消えない。

 

こんなのただの腹痛だって!

明日には「痛かった~」と過去形で笑えるさ。

 

わけのわからない励ましをしながら、布団で左足のみ立膝。右は痛むので伸ばしておくという変なポーズ続行のまま唸り続ける。

 

 

 

 

2018年4月15日(日)

 

今日が平日なら病院へ行くだろう。

だが今日は日曜日。

 

救急車、呼ぶ? 

 

ないないない!心の中で首を振る。

自力でトイレも行けるし、水も飲める。

 

じゃあ、救急病院?

 

 ……痛くて行けない。

 

いや、でも昨日よりマシだから、寝ていれば明日には治るんじゃない?

 

かくして一日またもや唸りながら寝る。

 

祭り、続行中!

和太鼓絶好調!

 

ただし時折、中太鼓登場。小太鼓もありのバリエーション。

これはいける(治る)んじゃないか?

 

希望の光!

 

希望の光は見えたが、ぎゅーっ、きりきりきり、は続く。

だが二十四時間続いているわけではない。

きっと、この小休息が少しづつ増え、解放の時が来る!

 

それを信じて待つ。

 

右下腹を撫でさすりながら「どうかどうか」と念じる。

痛みがましな隙を狙い、レトルトのおかゆを数回に分けて食べた。

無駄かもしれないが胃腸薬(市販)も飲み続ける。

 

後から不思議に思ったけど、痛み止めを飲むという発想はなかった

胃腸の痛みは胃腸薬。

なぜかそう思いこんでいた。

 

あと下痢じゃないから正露丸は違う、ぐらいしか思わなかったのでした。

 

 

 

2018年4月16日(月)

 

ずっと寝ていたせいか幾分マシになったようだ。

ずくんずくんと鈍い痛みはあるがどうやら大将、退場したらしい。

 

大丈夫か?

 

行けるか?

 

問いながら出勤支度する。

 

このまま、気が張っているうちに消滅するのでは?

 

あばよ、大将。

短い付き合い…いや、結構長かったよ。

 

……外に出てから気付く。

ずっとほぼ寝たきりだったからわからなかったが、歩くってけっこうキツい

しかも自宅から駅のホームまで階段込みで徒歩十五分くらいかかる。

どうする?

ここまできたら行くしかなかろう。

まだ、大将出てきていないし。

せいぜい、小せがれ程度だ。

 

はげましつつ歩くが右手はついつい腹のあたりに。

 

ヤバいよ、ヤバいよ……マジですか。

 

ついに出川哲郎さんまで君臨。

 

右下腹部に手を当てつつ、なんとか職場まで辿りつく。

 

「今日お腹いたいんだよね~」

「虫垂炎?」

「そこまでは……」

みたいな会話をしつつ、仕事をする。

 

基本、座り仕事なので時折激痛が走るがなんとか持ちこたえられそうだ。

 

腹痛三日目、祭りも下火のようだ。

 

このまま鎮火してくれたら……

「行けるかも」

実は今日、前々から飲み会の約束をしていた。  ←オイオイ、マジかよ。

激痛祭り開催中に飲み会もへったくれもなかろうが!

ええ、おっしゃる通りです。

しかしいくらなんでももう治るんじゃない?

昨日より今日の方が全然マシだし、と行きたい自分を弁護。

 

半年ぶりに友人にどうしても会いたかったし、アルコールを摂取せずあまり食べなければいいんじゃない?と甘い考えが生じていた。

 

だって、三日も続く腹痛なんて今までなかったし、祭りはせいぜい二日じゃん!普通は!

ってことで行く気だったのです。

 

恐ろしいことに。

 

異変は、なんとか業務をこなし、定時かっきりで職場を出て駅に向かう途中で起こりました。

 

祭り、再開。

 

しかも、大将、戻って来やがった

 

痛い痛い痛い。

ヤバいヤバいヤバい。

 

歩けない。

 

痛む右下腹部を押さえ、足を引きずるようにしてもう完全に見た目ヤバい人と化す。

ありがとう、手すり!

手すりを掴み、ずりずり歩く。

 

痛みの前で、人は見栄えや体裁をかなぐり捨てる!ということを身をもって知りました!

 

もう他人の目などにかまっちゃいられません。

 

呪いのように頭の中も心もひたすら一つの文字で埋め尽くされています。

 

痛い痛い痛い。

 

 

 

もう、飲み会はキャンセルしかありません。←あたりまえだろう。

 

しかもドタキャンです。

 

 

お詫びのメールを送信すると「お大事ね」と心優しいメールが返ってきました。

会いたかったよう!と思う間もなく痛みに体を「く」の字に折り曲げるわたし。

 

 

身体をくの字に曲げるって、けっこうリアル表現だよな、

わたしは今、まさに「く」の字。

 

 

 

そしてA病院へ。

 

診療開始前なのでがらーんとしています。

人が少ないのをいいことに椅子を占拠し、右脚を投げだし、背をもたせかけ「なんなのあんた。態度悪いよ」と説教されても文句を言えないような椅子から半分擦り落ちたような姿勢で看護師さんの問診を受ける。

 

「右下腹部ですか」

「一昨日の夜からなんですね」

診療時間まで、ベットで休まれますかという提案に「ありがとうございます」と飛びつく。

 

「ベッドまで車椅子で行きますか」

「いえ、そこまでは」

「恥ずかしがらなくてもいいんですよ。ここは病院ですから」

看護師さん、天使。

優しい言葉にほっとする。

 

自力でベットのある場所(すぐそこだった)まで行ってとりあえず病院にいることに安心した。

横たわると痛みはかなりましになった。

 

「立つ、と歩くが痛みが増します。何か出したい気はするのですが、出ても楽になりません」

「虫垂炎の可能性が高いですね」

内科の受付であっさり言われる。

 

外科へ行って下さい」

 

「え?お腹が痛いんですけど」

虫垂炎は切ることになるので外科です」

「でも、痛みが少しマシになったり、酷くなったり、なので、虫垂炎ではない気もするんです」

 

食い下がる食い下がる。

切る、とか想定外だから。

 

同時にやっぱり虫垂炎なの?とも思う。

そして知らなかった。(無知)

 

虫垂炎は外科なのか!

 

虫垂炎じゃないと言われたら内科に戻ってきてください」

 

そして私は内科に戻ることはなかった。

 

 

 

 

外科へ行くと症状を聞き、触診して「虫垂炎だね。明日切りましょう」とあっさり。

事の成り行きに大将もびっくりだ。

日本手拭いキリキリ絞りも和太鼓も勢いを失う。

 

「散らす、とかは?」

「痛みが起こって一日以上たつと炎症を伴う場合がほとんどで無理ですね。散らすことができるのは初期の段階だけです」

 

土曜日なら散らせたのか。

 

悔やんでも遅い。

 

「念のためにCT撮って血液検査しますけど、ほぼ間違いないでしょう」

 

看護師さんもてきぱき事を進める。

 

「今なら、個室も大部屋もどちらも選べます。あと、手術説明が必要なのでご家族の方を呼んでもらえます?」

 

家族を呼ぶ?

マジすか。

手術入院したことがないのでびびりまくる。

なぜかなりをひそめた右下腹部をなでさする。

 

虫垂炎、痛みに休息ありなのか?

 

イメージではどんどん酷くなり、息もつけなくなり、救急車で運ばれ「痛い痛い」と泣きわめき即手術のイメージだった。

 

そして知る限り体験者の皆様は腹膜炎など起こしてそりゃもう大変だったらしいのだ。

 

「そこまでじゃないよな……」

 

そこまでってどこまでだ。

 

痛かったんじゃないのかよ。

 

そうなんだけど、だけどなんか今ちょっとマシ……。

 

思う間もなく、検査の順番が来て、家族にも連絡がつき(入院決まったら来て、という話にした。今思えばすぐ来て、と言わなくてよかった)結果待ち、今すぐこのまま入院して明日手術という話になった。

 

なんか痛み、かなりマシになっているんですけど。

さっきより歩くことが大変じゃありません。

でも虫垂炎なのね。

切られるのね。

 

採血室へ行き、血を抜かれレントゲン室へ行く。

 

もう覚悟を決めたよ。

つーか、決めるしかない。

 

ああ、職場に電話しないと。

まあ、決まってからでいいか。

 

自分が入院手術なんて、と現実感伴わないまま外科に戻る。

 

さっきより祭りの規模が小さくなったため、少々態度悪い程度の姿勢で座って順番を待つ。

 

 

「驚きの検査結果です。あなたは虫垂炎じゃありません!」

 

 

ぐるんと回転いすの向きを変えばばーんという感じで先生が言った。

 

マンガなら段ぶち抜き、先生の背後はベタ(黒塗り)、フラッシュ付きです。

 

「ええっ」

 

おいおい、無駄な覚悟をしちゃったよ。

 

 

「いやー、僕も明日、切る気満々だったんですけどね」

 

 すみませんやる気になってくださったのに、・・・じゃない!

 

「じゃあ何なんですか」

 

「CTには何も映っていないので虫垂炎じゃないです、他の部位にも腫れは見当たらない血液検査の結果も特に何もないですね」

 

「じゃあ、この痛みはななぜ」

 

気のせい?まぼろし?

 

いやいや、これが気のせいなら世の中の出来事はすべて気のせいだよ!

 

現実に痛いし!

 

今は大将、引っ込んでるけど復活したらどうしたらいいんですか!

産婦人科系じゃないかと」

あーそうきたか!

 

はいはい、そのパターンね!

 

そうなのだ。

 

 

実はわたしは卵巣腫瘍を持っているのだ。

 

 

今まで何度も別件でレントゲンを撮るたび、MRIを撮るたびに先生方は「どエライもんが映っとりました!」という感じで「産婦人科へ!」とおっしゃるのだ。

 

 

しかし、今までの経験からわかっている。

これはそうではない、と。

 

「そちらはもうB病院で五年以上定期的に通っていて、痛みが出たら気絶するほどの痛みで即手術しない限り痛みは止まらないと聞いているので……」

 

「いやーでも場所がどんぴしゃなので。主治医当てに手紙を書くので明日、行って下さい。今日は痛み止め出しておきます」

 

 

「主治医の先生は明日は出勤日ではないので」

「とにかくこれと手紙を持って行ってください」

「でも、捻じれが出ていればCTでわかりますよね?」

食い下がるわたし。

 

産婦人科に回されても意味はないと思っているので(捻じれが出たら気を失うほどの相当な痛みになるから救急車でも何でも呼んで産婦人科!と叫ぶように主治医に言われていた。今回はそこまでではないと思う)なんとかここで結論を出したい。

 

 

「便秘のせいとかそういう可能性は」 ←これが一番怪しいと思っていた

「そんなにたまっていないですけど、薬をお出しした方がいいですか?」

「お願いします」

 

虫垂炎ではないとわかった瞬間の、先生や看護師さんのテンションのダダ下がりっぷりが凄い。

 

ハイさようなら、の素っ気さだ。

まあ、入院手術となれば色々やることも増えるし調整事項も出るだろうからそれがチャラになってほっとしたこともあるんだろうけど。

 

 

なんだったんだ。

 

 

しかし、確実に祭りの規模は縮小されている。

このまま、終わるのか、大将復活なるのか、それは自分にもわからない。

 

 

痛み止めを飲む。

 

 

痛み三日目。

祭りの規模は縮小傾向。

 

大将がいつ戻ってくるかびくびくしながら翌日は休みを貰う。

 

 

 

薬 痛み止め→カロナール

  便秘薬→ヨーデル(あとで調べたら健康診断でバリウム飲んだ後出される薬だった)

 

⇒(2)へ続く・・・