ラハブ、という女性。

聖書ではあまりマイナーな人物です。
しかし、彼女はメシアであるイエスの先祖になる、
という思わぬ祝福を得ました。

彼女は世界最古の城壁都市、と言われる
「エリコ」に住んでいました。

エリコは、カナン種族が住む、イスラエル人に
とって、「約束の地」であり、イスラエルの神は
徹底的に滅ぼす、ことを命じていました。

しかし、そもそも武器を持たないイスラエル人。
荒野でマナという粉だけで暮らしていました。

そんなイスラエル人が城壁を攻略できるのでしょうか。
指導者ヨシュアはエリコに2人の男性を偵察に
向かわせます。
闇夜に紛れ、城壁の一番端にあったラハブの

部屋に侵入します。
ラハブは言葉も通じない、自分達とは全く違う

服装の男性たちを見て、どう反応したのでしょうか。

娼婦ですから、不特定多数の男性が出入りする

ことは普通のことです。

聖書によると
「ラハブはイスラエルの神がこれまで行ってきた

ことに信仰を持った」
とあります。

ですので、彼らをもてなします。
娼婦の生活を辞めていたようですから
性接待ではありません。

ラハブは彼らをもてなす代わりに条件を出します。

「エリコを攻める時、自分と家族は救い出してください」

2人の偵察は悩みます。
イスラエルの神はエリコを全滅させよ、という命令。

偵察の男性は悩んだことでしょう。

でも、彼女の勇敢さを意気に感じた2人は

あなたのために、命を懸けましょう!と

約束します。

そんなこんなやり取りの間に、エリコの兵士たちが
偵察男性を探しに来ます。すぐ通報がありました。
イスラエル人たちがヨルダン川東岸におり、
対岸のエリコの住民は恐怖におののいており
非常にナーバスになっていました。

一旦彼らを屋上に避難させ、ゴザで身を隠させます。

エリコの兵士たちがラハブの部屋を捜索し
「あの男たちはどこへ行った??」
と尋問します。

バレればその場で処刑です。

「ええ確かにワタシのところに来ました。
でも、彼らは城壁が閉じる前に出て行きましたよ」
とシラを切ります。
兵士たちが立ち去った後、ラハブは彼らを屋上から
ロープで避難させて逃がします。

ラハブは身の安全を約束してもらったものの、

口約束です。不安だったに違いありません。

遂にイスラエル軍もどきが攻めてきました。

武器を持っているのはわずかです。

難攻不落と言われた城壁都市エリコ。
攻めるのはムリです。

ヨシュアの項でも書きましたが、
神はヨシュアに謎な指示を出します。
「6日の間、一日一回、エリコ市の城壁を角笛を吹いて一周すべし」
鬨(とき)の声もなし、雄たけびもなし、角笛だけが一日一周していくのは
エリコの住民は薄気味悪かったでしょう。

そして最終日7日目。
「一日でエリコを7周すべし」
兵士たちは全速力で角笛を吹きながら周回します。

それが終わるとヨシュアが大きな鬨(とき)の声を上げさせた瞬間、
エリコは城壁もろとも崩れ落ちます。

全てが終わった・・・しかし、もうもうとあがる煙の向こうに
崩れ残った一角があります。

ラハブの角部屋です。

ラハブは一家で、この部屋で7日間、身を潜め、
自分が示した命がけの信仰をイスラエルの神が
見てくださるに違いないと信じていました。

その信仰に、イスラエルの神はいたく感動し、
イエスの先祖の系統に加えました。

イスラエルの神は
「血統主義」ではなく、どんな職業かでもなく
ふさわしい資質を持った女性を重んじることが
わかります。

とはいえ、唯一助命されたラハブの一家。
イスラエルのコミュニティで生きていくことには
多くの苦労があったことは想像されます。

後に生まれた、ラハブの息子はそんな苦労を

見て育ちました。ボアズです。

このボアズは、ルツ記にでてくる異民族の未亡人
ルツと結婚します。

ルツの境遇と母親が大きく似ていたことも
ボアズが同情心が篤い男性に育ったことが
理解できます。

いつの時代も、歴史を陰で動かすのは女性です。

自分は女性の権利拡大論者でも
フェミニストでもありません。

だって男性がいくら主役でも、次世代につなぐ
賢明な人物は女性からしか生まれないからです。

ここぞという時の度胸は男性以上だと思います。

だって、出産は命がけだし、
あんな痛い思いして、
「また産みたい」などと思えるすごさ・・・

男性はムリですわ・・・

今回もお読みいただきありがとうございました。

 

今、エリコの城壁はこの果樹園の下に

埋もれているようです。