引き続きダニエルの生涯の後編になります。

短気なネブカドネザル王は、バビロニア帝国内の
魔術師・まじない師・呪術師・賢者を招集し、

自分の見た夢の解き明かしを求めますが、

誰にもわからず、激怒したネブカドネザル王は、彼らの殺害を命じます。

ダニエルは「私が王の見た夢を解き明かします」と
申し出ます。しかし、勝算はありません。

バビロン捕囚からの帰還まで、ここで犬死にするわけには
いかない。彼は夜に熱烈に神に祈ります。

処刑人のアルヨクに解き明かしの内容を伝えるため、
ネブカドネザル王のもとに参上します。

王の見た夢は・・・巨大な像です。

①頭部は金 ②肩・胸と腕は銀 ③腹と太ももは銅
④すねは鉄 ⑤足の下の部分は鉄と粘土の混じり物です

その像は、山から切り出された岩が⑤の足の部分のもろい
場所を打ち、像は粉々に砕けます。
あなたの王国、つまりバビロニア帝国は①です。
その後、②以降の次の王国が始まります。

と、見事に夢を言い当てます。
驚嘆したネブカドネザル王はダニエルを更に高い地位に就け、
自分の宮廷で仕えさせます。

しかし、こうしたネブカドネザル王の高慢かつ節操のない行動は、
神の怒りを買い、動物のように這いまわり、狂気にさせて
懲らしめます。ここでネブカドネザル王に関する記述は
終わります。

その間に王の息子ベルシャザールが王位を継ぎます。
就任パーティだったのか、ベルシャザール王は浮かれます。
1000人の貴族を招集し、聖地エルサレムから奪ってきた金の器に
酒を注いでイスラエルの神を冒涜・嘲笑します。

そこへ突然、壁に手が現れ、その手がこのような文字を書きます。

「メネ・メネ・テケル・ウ・パルシン。」

浮かれていた宴会場は一転、悲鳴が響き、静まり返ります。
ベルシャザールは青ざめ、ガタガタ震えます。

再び解き明かしの達人ダニエルが呼ばれます。

解明は「メネ」・・・これはミナ(当時使用していた量り)を表し、
2回繰り返すということは、あなたの治世の日数を数えた。
「テケル」(今も使われているイスラエルの通貨単位シェケル)

あなたは天秤で量られて不足がある。
ウ(そして)「パルシン」・・・ペレス。あなたの王国は2つの帝国に分割される。

と宣告します。

まさにその夜、メディア・ペルシャ軍が、見張りも立てず城壁の扉が

開いたままの宮廷に押入り、ベルシャザール王は殺され、

突如バビロニア帝国は終焉します。

バビロニア帝国の首都バビロンはチグリス川の運河に囲まれ、
難攻不落の都市でした。
しかしペルシャ軍はチグリス川周辺をせき止め、川を干上がらせていました。、

「バビロンは偶像と悪に満ちているため、二度と再興することはない」、
という神の予告通り、世界四大文明のうち、バビロンだけは未だに廃墟のままです。

バビロンは現在イラク国内にありますが、世界遺産に指定されても未だ誰も住んでいません。

ようやくバビロンが滅び、ダニエルは故郷エルサレムに帰りたい、けど、
そうは問屋が卸してくれません。

ペルシャの王ダリウスが自分の家来として、更に東のペルシャに

連れていかれます。どんどん故郷から遠くなる。

重用されるダニエルは、本来であればバビロンでベルシャザールとともに死ぬはず
だったのに、とペルシャ官僚たちにとって疎ましい存在になります。

そしてまた、ペルシャ官僚たちが同じような罠を仕掛けます。
「30日の間、ダリウス王以外に祈ったり身を屈めたりする者はライオンの穴に投げ込まれる」
ダリウスは同意します。

その期間が始まった初日、ダニエルは見える屋上のいつもの場所で
イスラエルの神に祈りを行います。

それを待ってましたとばかりに見咎めたペルシャ高官たちはダリウス王に告発し、
ライオンの穴に投げ込まれます。
ダリウス王は信頼していたダニエルがハメられたと後悔するも時すでに遅し。

しかし、ライオンはダニエルを襲わず、ダリウス王の呼びかけに穴から救出されます。
そして代わりに、罠を仕掛けたペルシャ官僚とその家族を穴に投げ込みます。

「ライオンは彼らが穴に落ちるや否や、骨をことごとく砕いた」と聖書にはあります。

ダニエルは少年時代からバビロンに連れて来られ70年以上を過ごし、ペルシャ帝国でも
王に仕え、すっかり高齢になってしまいました。

ディアスポラ(民族離散)からエルサレムにバビロンから数万人が帰国していきます。
しかし、高齢の身、エルサレムへ戻る旅路は体力的にムリと悟ったダニエルは帰還を
諦めます。望郷の念に涙が流れます。

そんなダニエルを天使が慰めに来て力づけます。

天使は更に、難解な今後続く多くの世界強国の幻を見せ、彼に記述させます。
「これはどういうことなのか」と尋ねますが
「あなたの死後、いつか来る終わりの日にそれは解き明かされる」

ここでダニエル書は終わります。

ダニエルの生涯は終始、ストレス・身の危険・権力闘争に巻き込まれ、
陰謀と嫉妬の世界に身を置くことになりました。

しかし、モーセ・ダビデのように衝動的な行動で失敗することはなく
神から「大いに望ましい人」と評価されています。

聖書の登場人物で一番クレバーな人です。

ダニエルの生涯から、親は少年時代から正しい倫理観を教えるべきこと、
絶体絶命になっても希望を失わないこと、政治家として名声を得ても
清廉潔白であること、バビロンの再興が未だなされていないことから
神の預言は確実なものであること、等の教訓を得ています。

長いところ、お読みいただきありがとうございました。