離婚してからも今年で10年。

 

先日、「あぁ、あの時あの人はこんな気持ちだったんだ」

と思うような出来事があった。

 

私は猫が好きで、いつか飼いたいとずっと思っていた。

子供の頃から上京するまで、猫がいる生活を送っていたから。

機能不全家族で育った私の唯一の仲間。

私の飼い猫のモモ。そしてモモの次に飼ったキタロウ。

私にとって猫たちは大事な存在だった。

 

 

今から30年前は動物可の物件も少ないし、

一人暮らしで家にいる時間も少なかったから、

なかなか猫を飼える環境では無かった。

 

その点、ドイツは動物を飼える賃貸が多い。

 

でも家にいる時間が少ないことは日本に住んでる時と変わりないし、、

飲食店で働いていたので、衛生面を考えて動物と暮らすことに抵抗もあった。

猫が病気になった時、病院に連れていけるかもわからない。

(ちゃんとドイツ語で病状を説明できるかわからない)

 

そしてドイツのベットショップで動物は売っていない。

猫を見つけるにはネットでブリーダーを見つけるか、

Tierheimに申し込むかのいずれかだ。

 

 

心の中では猫との生活を望んではいるものの、

そんな理由で猫との暮らしは夢のまた夢だった。

 

でも、つい先日、猫を飼えるチャンスが巡って来た。

 

私の部屋と同じフロアのドイツ人が子猫を飼っていたのだ。

猫の鳴き声も全然聞こえなかったから気がつかなかったけど、

聞いてみたら一ヶ月くらい前から飼っていたらしい。

 

私が猫が好きなことを話すと、猫を抱かせてれた。

まだ生まれて3ヶ月ばかりの子猫。

 

本当に小さくて私が抱っこをしても全然嫌がらず、

ずっと私の方を見つめてじっと動かない大人しい子だった。

 

本当に可愛くて可愛くて仕方がなかった。

 

少しの間、子猫を抱かせてもらって、ご近所さんに猫を返した。

 

それから数日してからご近所さんから

「もし私の子猫が欲しかったら譲ってあげるよ」と言ってもらえた。

 

私は嬉しくてどうしても猫を飼いたいと思った。

 

だけど問題はここから。

 

私一人の判断では飼えないという事情。

私は来年、パートナーと一緒に住む約束をしている。

 

だから、猫を飼うにはパートナーの意見も聞かなけれなならない。

 

彼は私が前から猫を飼いたいことは知っている。

 

ただ、彼は今年の4月に12年間一緒に生活した愛犬を死なせてしまったのだ。

もう17歳になった老犬は今年に入ってからどんどん痩せていき

3月に入った頃から餌をあまり食べなくなった。

そのせいか、自力で立つのもやっと。

歩きたくても動けないのかボーッと立ってることも多くなった。

 

とうに両目は失明し全く目は見えない。

2,3年前に右側が脳梗塞になって顔も半分崩れていた。

目が見えないから自分で餌も食べれないし、

歩くことは多少できても目的地まで辿り着かない。

そんな状態になっても彼は愛犬をカートに入れて

近くの公園まで毎日朝晩散歩に出掛けていた。

 

散歩をしていると心ない人から

「こんなになってまで生かしているのは可哀想だ。早く楽にしてあげたほうがいい」

と言われてきて、落ち込んでる姿も何度となく見ていた。

 

そして、その度に私に

「ヴィリーを生かし続けるのは自分のエゴだろうか?」

と聞いてきた。

 

 

私は彼の言って欲しい言葉を知っていたので

 

「ヴィリーは老犬だけど、まだ餌をモリモリ食べている。

 もし餌が食べられなくなったら、その時は楽にさせてあげよう」

と言ってよく二人で泣いた。

 

そして彼は今年の4月、12年間一緒に暮らした愛犬を

天国に行かせることを決心した。

私たちはイースター休暇の直前、獣医に予約をとった。

 

予約の前日、愛犬のお気に入りのおやつを買い、

食も細くなった犬におやつを食べさせた。

彼は悲しさを我慢して愛犬にずっと話しかけていた。

そして翌日、私たちは獣医に愛犬を連れて行った。

 

1時間ほど受付で待たされ、

ついに名前が呼ばれ、診察室に入った。

 

安楽死させる手順の説明を獣医から受け、

最後の診察を終え、獣医が注射をした。

10秒も経たないうちに獣医が

「ヴィリーは天国に行きました」と言った。

 

彼の愛犬はあっと言う間に天国へ旅立ってしまった。

 

彼も私も悲しくて泣いた。

そして彼はもう動物は飼わないとこの時決めたのだ。

 

私は彼がもう動物を飼いたくないことは十分に知っていた。

でも私は猫をずっと飼いたいと思ってた。

 

私は彼にご近所さんが猫を譲ってくれるので猫を飼いたいと話た。

 

でも彼から出た言葉は、

 

もう、あんなに悲しい思いはしたくないから2度と動物は飼わない。

もし、私たちが一緒に住まないならあなた一人で飼って。

でも、私たち来年一緒に暮らす約束をして、そのために今準備してるよね。

 

 

猫を飼いたい気持ちはとても強いが、彼の気持ちも十分理解できる。

私たちは長い間話し合い、私は猫を飼うことを諦めた。

 

彼と一緒にいると猫を飼うことが出来ないことが私を悲しくさせた。

 

そしてあることに気がついたのだ。

 

そう、ちょうど10年前、私がまだ結婚していて当時のパートナーに言ったこと。

 

「私、子供産みたくない。子供がどうしても欲しくない」

 

この頃、私たちは子供のことで夫婦仲が壊れかけていた。

 

子供が欲しい元パートナーと、子供が欲しくない私。

 

話し合っても平行線のまま。

 

この時の私は全く彼の気持ちを想像出来なかった。

結局私たちはお互いの意見を尊重するため、別れることを選んだ。

 

そして今回立場が逆転して(理由は子供じゃなくて動物だけど)

初めてこの時、元パートナーが感じていた気持ちを思い知ったのだ。

 

「あぁ、あの時あの人はこんな気持ちだったんだ。」

 

彼の悲しさもわかったのと同時に、

やっぱり別れることを選んで正解だったとも改めて思った。。

 

こんな気持ちのまま結婚生活を続けても

いつまで続けられたかもわからないし、

きっといつかは別れることになっただろう。

 

それよりは早めに互い第二の人生を歩んだほうがいいと

決心して別れたのは正解だった。

 

もちろん、離婚したことは後悔してない。

 

一番近くにいた人の気持ちも察してあげられなかった私は本当に大馬鹿者だ。

 

子供の頃から辛い思いをしてきた私はずっと感情を殺して来た。

だから人の気持ちも思いやりも感じられない冷たい女になってしまった。

そんな私と結婚までした人。

 

彼とは私がドイツに来る直前にあったのが最後で連絡も取ってない。

 

だから、心の中で「悲しい思いさせちゃってごめんね」って謝った。

 

 

こんな気持ちになれたのはきっとパーソナルコーチングを受けて

私の内部が変わったからなんだろう。

 

そして私はだんだんと感情を戻しつつある。

去年の今頃、私がこんなにも変わるなんて想像もつかなかった。

 

子供を産まない選択をしたことに後悔はない。

でも、今は子供を持つことに抵抗が無い。

 

そこまで心の変化があったのが本当に自分でもびっくりだ。

 

でももうすでに遅い。

今年50歳を迎えた私は子供を産む機能がもうない。

 

このコーチングを30年前に受けてたとしたら、

今とは全く違う景色をみていたんだろう。