三度目の正直、三浦しをん「風が強く吹いている」を読みました!
寛政大学4年の清瀬灰二(ハイジ)は、ある春の夜、万引きして逃げる男の走りの美しさに目を奪われる。
「あいつだ。俺がずっと探していたのは、あいつなんだ。」
自転車で追い、声をかけたその男は、寛政大学の新入生、蔵原走(カケル)だった。
アパートを決める前に仕送りを使い果たしたというカケルを、ハイジは自身が住むボロアパート「竹青荘」に連れてくる。そこには同じ大学の学生9人が住んでおり、カケルは10人目の住人となった。
そしてある日、ハイジは住人全員を集めて言う。
「俺たちみんなで頂点を目指そう。そう、駅伝。箱根駅伝だ。」
呆れ、怒り、混乱する住人達。
それもそのはず、ハイジと走以外の住人はヘビースモーカー、司法試験合格済みのインテリ、ろくに走ったこともないオタクを含むド素人の集団だったから。
しかしハイジの説得と熱意と無言の圧力に、徐々に乗り気になる住人たち。
ついに、9か月後の箱根駅伝出場を目指し、彼らの無謀としか言いようのない挑戦が始まる。
「まほろ駅前多田便利軒」「舟を編む」と2作品続けて残念な結果となり、よし、この作品を最後に三浦さんからキッパリと手を引こう・・・という決意で挑んだ3作目。
いや~!直球どストレートの物語に思わず泣かされてしまいました!
美しく完璧な走りを、この地上で体現することのできる天才ランナー、カケル。
けれどその心は傷つきやすく、バランスを欠き、常に不安と焦りを抱えている。
走りへの誰より熱い情熱を持ちながらも、ケガで思うような走りを追い求められないハイジ。
けれどランナーの実力と可能性を見極め、正しく導くことのできる知性と強さを持つ。
この2人の出会いが、たまたま同じアパートに暮らす仲間を巻き込み起こす奇跡。
解説によると、この奇跡の物語を「まるでファンタジーだ」とする批判めいた感想も寄せられたそうです。それほど「ありえない」お話なのかもしれませんが、私は自分が5分も走れないど素人だからか、ハイジの指導方法や理論が大変分かりやすくて、すごく納得してしまいました。こうすれば自分もそこそこ走れるようになるんじゃ?てか、むしろハイジに指導されて私も走りたい!と思わされるほどでした。
彼らがハイジの指導の下、文句言いながらも、筋肉痛になり血豆ができグランドの隅でぶっ倒れながらも、毎日毎日走り続け、1つずつ課題をクリアし、一歩ずつ箱根へと近づいていく姿に、「いやこれマジでいけるんちゃう?」ってまんまと思わされて行くんですよ。
そして、全てはこのためにある、というラスト250ページ。
彼らの息遣いを聞き、彼らが感じる風を感じ、思うようにならない悔しさ、タスキを繋ぐ時の興奮を一緒に味わいながら一気に読みました。流星のようなカケルの走りはゾクゾクするほどカッコいいし、心も体も燃やし尽くすようなハイジの走りには泣かさました。
・・・がしかし、だからと言ってカケルやハイジに惚れたかといえば、残念ながらそんなことは全くないんですよ。「まほろ」の行天や「舟を編む」の馬締くん同様、「間違いない材料を入れてるのに、どうしてこうもピンとこない味になるんだろう???」ともどかしさを感じるばかり・・・。
カケル、ハイジだけでなく、箱根に挑むその他の愉快な仲間たちにしても、それぞれの過去や葛藤なども丁寧に描かれているのですが、その誰にも、どのエピソードにもほとんど興味が持てませんでした。
さらに言えば、唯一の女性キャラ、竹青荘のマスコット・ガール葉菜子ちゃん。
彼女をめぐるちょっとした四角関係が後半がっつり物語に絡んでくるんですが・・・それがもう「小5か!」と言いたくなるほど無邪気過ぎるドタバタで(無邪気過ぎて笑っちゃったりもするんですが)、それがまた物語の肝心なところでチョイチョイ絡んでくるのが、本当に興ざめでした。
と、またまた不満を並べてしまいましたが・・・
いやいや!キャラが残念だったことを差し引いても余りあるラスト250ページの興奮と感動、そして読後の爽やかさ。先の2作で諦めず、読んでよかったです!
ハイジ君、「これで誰でもそこそこ走れる!」みたいなマラソン本出してれないかな~

