「恋愛を人生のすべてと考えている人々のための一冊」
と、この本のタグでそう紹介されていた。
まさしくその通りで、これは情熱的な女性に向けた本だと、私はそう思った。
この本は、バーのマスターに対して語りだすお客さんの恋路を書きまとめた短編小説である。
私は普段このような類の本を手にすることが少ないが、ある人がこの本を貸してくれたことに
より手にした。
話の流れは決まっていて、バーのマスターがレコードをかけ、その曲の意味を我々に詳細に
提示してくれる。その後、客が訪れお酒と共に恋路を語りだす。その恋路が曲の佳境にある、
というオチである。
この流れは一見退屈に思われるかもしれない。その一方、後半になるにつれ安心感を抱い
た。
1番最初のエピソードが私にとっては印象的で、それに、もしタイトルをつけるとしたら、
「恋の季節」。
恋にも”春夏秋冬”があることを”冬”の訪れを迎えているお客さんが語った。
この意味、多くの人は語らずとも理解できると思います。そういうことです。
このお客さんの語り方が非常に繊細で無意識に大切に読んでいたことを私は記憶しています。
私も”春夏秋冬”を経験したことあるように、皆さんにもきっとあると思うので、同じようにこの話
を楽しめるでしょう。
この本に記されているお客さんの全てのエピソードが本当に美しくて、まるでショーケースに
飾られているような美しい逸品であるように思えた。
それ故に、この一冊は上品なものであると私は認識する。
是非、じっくりと時間をかけてお読みください。
お読みいただきありがとうございました。