進路 あかりの場合
秋も深まったある日、あかりは勇気を出して聞いて見た。「あのね。星河は進路とか、どうするかとかもう決めてる?」「うん?」星河は肉まんを食べる手をとめた。「オレは、うーん、勉強はもういいかなって思ってる。接客のバイトがすげえ楽しいし。なんか人と関わる仕事してーかな。とか。……あかりはもう決めたんだ?」(するどい。言いたいことがあって話し出したのを見抜かれてる)あかりは頷いた。「わたしね。行きたい大学があるの」「うん」星河は勇気付けるように、空いた手であかりの手を握った。「……京都の、大学なの」「うん……え、京都!?」星河が驚いてる。あかりも言うのが怖かった。握った手が震える。星河の手から力が抜けた。ショックだったんだろう。胸が痛む。「京都って、遠いじゃん」「うん」(うん。だけど、そこでしか学べないんだ。ごめんなさい)「えー。えー……」「……」沈黙が、痛かった。怖かった。星河がじっとあかりをみつめた。嘘はつけない。(うそなんて、ついてない。)あかりもみつめかえす。膝はガクガクしてた。(やめてって言われたらどうしよう。オレと離れたいのかって。じゃあもうバイバイだって言われたら。)ふっと、星河が笑った。ぎゅっと、あかりの手を強く握る。「……そこで、やりたいことがあるんだ?」「うん」「……そっか。わかった。言ってくれてありがとう、オレももうちょっと考えるよ。その、勉強とか受験、がんばれな」あかりはほっとして、思わず星河に抱きついた。「……よかった」深呼吸して思わずつぶやいた。それを拾って星河が微笑む。「あかり。大好きだよ」髪を撫ぜる手が心地よかった。そこが、夕方の公園だったとあかりが思い出したのはしばらくした後だった。