声がして、
耳を疑う。
何度も蓋をしたのに
見つけてしまう。
どんなに時間をかけても
どんなに遠く隔てても、
簡単に開いてしまう
鍵のない蓋。
簡単に開いてしまう。
最初からそんなだったよ。
いつもそんなだったよ。
こじ開けた訳じゃないのに。
いつの間にか側にいて
いつの間にか一緒にいた。
いつからか
離れることができなくなって
別れたい気持ちと
手放せない気持ちが
どちらも抑えられなくなった。
傷ついた人がいた。
傷つけた人がいるのに
全部、見えなくなった。
苦しくてたまらないのに、
動けなくなった。
溢れてくる気持ち。
聞き慣れた彼の声。
変わらない話し方。
怖かった。