穴の深さを測って来い
おととし、バックパックしょって一人でインドを回っていた時の事。ジョードプルという、別名「ブルーシティ」と呼ばれる街で、
定規を片手に「オマエの穴の深さを測って来い」というセクハラを受けた。
街の真ん中には、この街の観光の目玉のメヘランガル城塞がある。この城塞に登って上から街を見下ろすと街全体が真っ青な色なのだが、そこを一通り見終わったところに土産物屋があった。
おもむろに土産物屋に入って、適当にみやげ物を見ていると店の男(たぶん17~18歳くらい)が手招きする。またしつこくショールやカーペットを見せられるのかと思いきや、「君にすばらしい提案がある」みたいな事を言う。
「キャ?(何よ?)」と聞いたら、更に店の奥に手招きされ、奥の部屋に入るとニヤニヤしながら定規を1本渡された。
私「は?」
男「君のものを測ってこい」
私「は?何?」
男「いいから、測って来いって。君の深さだよ、ほら、わかるだろう」
まさかとは思ったが、なにやら私の「深さ」を測れと言っているらしいのだ。
なんなのよ、いきなり。
だが、男はいたってまじめに眉間に皺をよせて力説する。
「いいか、インドではみんな測るんだ。そうじゃないとわかんないだろう?誰と誰が合うか。いいか、合うかどうか、最初にチェックしないといけないんだ。オレの長さだって測ったし、友達だってみんな測り済みだ。」
おばさんに何を言っているのよ、このボーヤは。私はアンタのおばと同じような歳なんすよ。
(インドでは18~23歳くらいに見られる)
唖然とする私を「恥ずかしがる小娘」だと勘違いしている少年はそのうち、インドのタントラの絵本みたいな、(昔のマハラジャと女がしている絵が描いてある、よくある本)画集まで持ち出してきた。
そして裸のマハラジャを指差し「いいか、インドの男はものすごく強いんだ。だから君にお勧めする。もう試したか?まだなら測って来い」。そんな事を力説するのだ。
「だいたい、インドの男は強いって言うけどさ、他の国の男とどうやって比べたわけ?本当は何も知らないくせに。それに、みんな測るだなんて聞いた事ないよ」と言ってやったら、苦し紛れに「昔からそう言われているからそうなんだ」みたいな事をいい、絵本の中のマハラジャを指差し「見ろ、いいだろう」などと大真面目に言ってくるのだ。
だいたいああいうインドのマハラジャというのはたいていヒゲづらのデブで、痛風か糖尿を患ってそうな太鼓っ腹のオヤジだ。それを大真面目に「いいだろう」言ってくるので可笑しくなって「それ、おっさんじゃん。やーだそんな人」と言ってやったら、
「じゃあ、オレならいいだろう?だから測ってこい。おれはもう測り済みなんだから」と来る。
別に密室ではなかったし、ドアも開けっ放しだったので恐くはなかったが、めんどくさくなってきた。
とにかく「もう試したのか?」とか、「絶対オレのとピッタリだ」とかしつこい。
そのうち「こわいならオレが測ってやる」と言い出しはじめた。
「いままでにもいろんな外国人の女のを測った。みんな自分の深さを知って、喜んで帰った」とか言うのだ。
ウソも休み休みにしてくんな。
外国人の女がそんなものを測らすわけがないし、だいたいそんなもん、測れないし、一億歩ゆずって測ったとしても、喜んで帰らないだろう!
そもそも本当に測れると思っているのかい?まさか。だけど顔が大真面目なので、「測れるもの」だと本気で信じているのか冗談なのか分からない。
「本気で測れるとおもっているなら、さてはオマイ、まだ女体をしらねぇな?測れるわけないじゃろう、そんな
定規で!刺さるよ、痛いよ!」(実際、インドの田舎の17~18歳ならたいてい知らないだろう)
とにかくしつこくて、しかも眉間にシワ級の力説ぶりなので、この時はどうやって逃げようか途方に暮れた。
結局、最後には話を無理やり中断して、無視してツカツカと部屋を出て逃げた。次の年、またこのメヘランガルを訪れたけど、もちろんこの土産物屋は避けたましたよ。
まったくさー。
安宿でセクハラの思い出を語るチリヤンより