Botte piccola, vino buono.

小さな酒樽に入ったワインほど美味しい、という言葉がある。

私自身小柄な為か、この言葉が気に入っている。そして気がつけばフィレンツェで知り合ったイタリア人パートナーも小柄、住む家も小さければ、彼とサンロレンツォ広場に開いた絵の店もとても小さい。そしてこのほどウフィッツィ美術館近くにプチギャラリーをオープンした。


バーカウンターを含めたった3坪強のスペースに、フィレンツェ内外で活動する国籍も様々なアーティストたちが思い思いに作品展を開く。これまでフィレンツェで活動する白井良磨氏の絵画展を皮切りに、写真、陶器、インスタレーション、刺繍画、日本画などいろいろな展覧会が催されてきた。


バーカウンターを設けたのは、自分たちがワイン好きなこともあるが、とにかくたくさんの人に立ち寄ってもらいたいからである。実際、夕方6時をまわると仕事帰りに1杯という地元客で賑わう。自分たちが絵描きなので画家仲間の集う場所になることは予想していたか、近所に工房を構えるバイオリン職人のジェミーが、音楽、芸能関係の人々を連れてきてくれるお陰で、ハリウッド女優やジャーナリスト、作家といったこれまで縁のなかった世界の人々が訪れるようになった。


自分の作品展も定期的に開く心積りでいるものの、これにはなかなか勇気がいる。展示が変わると明らかに道行く人の立ち止まる頻度も変わる。ご近所のシニョーレ、シニョーリも、芸術家を自負する面々も、アートに関心のある人ない人皆非常に辛口だ。作品が気に入れば絶賛するが、その逆もしかりで歯に衣着せぬ批評振りである。アーティストは自分の信念に誠実に制作すればいいのだろうけれど・・・。市井の人々の反応をじかに受けるにはもってこいの3坪ギャラリーである。


もともと半壊した物置だった。そこをパートナーのガブリエレが約3ヶ月かけて修復、バー&ギャラリーに生まれ変わった。ウフィッツィ美術館から徒歩1分。芸術の揺りかごフィレンツェで、この小さな空間がワインとアートを介して新たな出会いの場になることを願っている。