
今夜も冷えたビールを片手にソファーにもたれ画面に映る愛しい人の姿を見ていた。
いつもながらキャスターの翔ちゃんはカッコいいな。
だけどその表情は何時もより険しかった。
それもそのはず取り上げているニュース、そして映し出される映像は悲しくて悲惨なもの。
怯えながら訴える少女の悲痛な言葉と流れる涙に俺も胸が痛くなりまだ半分以上も残っているビールは一口も飲めなくなった。
頬を伝う涙を拭うことすら忘れて流れる映像に目を向けていた。
きっと数日前まではあの綺麗な瞳で笑っていたことだろう。
それなのに…
「どんな理由があっても戦争は絶対反対です。」
翔ちゃんの強い言葉そして怒りのある表情に何だかとても怖くなって無性に会いたくて堪らなくなった。
「翔ちゃん…早く帰って来て…。」

番組が終わっても眠れそうもなく、暗い寝室へ一人で行く事が出来なかった。
それでもソファーでブランケットに包まりクッションに身を沈めていると徐々に睡魔が襲って来た。
カチャッと遠くの方で音が聞こえ目が覚めた。
ドアが開くのが分かり急いでソファーから立上りリビングを飛び出した。
とても会いたかったその姿に駆け寄り抱きついた。
「おかえりなさい。」
「おっおぉ、ただいま。どうした?まだ起きていたのか?」
抱きついた俺の背中を優しくトントンと叩いた。
一人では眠れなかったベッドは翔ちゃんの温もりでとても安心出来た。
「翔ちゃん…早く戦争、終わると良いね。」
「あぁそうだな。」
「子供達の笑顔が戻ると良いよね。」
「うん…。」
「きっとまた笑顔になれるよね?グスッ」
「雅紀?」
あの映像を思い出して自然と涙が溢れた。
「大丈夫、終わらない戦いはないよ。」
そう言って強く抱き締めてくれた。

「翔ちゃん…。」
翔ちゃんと唇が重なり俺の苦しみを溶かしてくれるように優しく包んで熱い愛を注いでくれて安らぎへと導いてくれた。
スマホのアラームで目が覚め隣でスヤスヤ眠ってる翔ちゃんに喜びを感じながら気怠い身体を起こしリビングの遮光カーテンを開けると温かな陽射しが俺の前に広がった。
窓を開けてもこの間までの冷たい空気は感じず春の陽気だった。
大きく息を吸い込んでベランダに出るとマンションの敷地の花壇に色鮮やかな花が咲き並んでいるのが見えた。
「綺麗だな。」
遠く荒れ果てたあの地にもこうしてまた綺麗な花が咲きますように…。
俺はそう祈りながらで眩しく澄み渡った青空を見上げた。

平和な日常に感謝して。
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No War!
Stop War!ですよね
ぶいちゃん