すっかり大人しくなった実家
いつも帰ってきたらまっさきに鳴き声が聞こえた空間
エグは畳の部屋に横になってました
呼び掛けたら今にも返事しそうなくらい
そのまんまのエグがいました。
一週間前か、最後にあったのは
あの時も、体は痩せてて、びっくりするくらい軽くて
でも呼び掛けたら返事をして、ちゃんとご飯も食べて
だから、まさかこんなに早くいくとは思わなかった
たっくさんの思い出があるなぁ
僕が小学校一年生のクリスマスの朝
庭から猫の鳴き声が聞こえた
「神様からのクリスマスプレゼントだ」と父が言って
その猫を飼う事にした
名前を、その当時の父の仕事の役職名から
エグゼクティブ=高貴な
エグと名付けた
一人っ子の僕にとって、初めて出来た兄妹分だった
毎日学校が終わっては家に飛んで帰り
エグとじゃれあっていた
そのうちエグのガタイが良くなってきて、対等になってきた
名前のとおり性格も、なぜか僕に対しては高貴で高飛車
小学生の僕は、完全になめられてました
小3の時、元気いっぱいのエグは家中を駆け回り、寝ている僕の頬にでかい一文字の引っ掻き傷を残した
その時は、猫相手に本気で怒った
さすがにシュンとしてしまったエグは、それからしばらくは僕に優しかった
でも二~三日したらすぐに忘れてまた暴れ回っていた
小5の時
英語のスクールに出掛けた僕は
誤ってベランダの窓に鍵を掛けずに行ってしまった
両親は二人とも出掛けていた
僕が帰ってくると、部屋中にエグの毛と争った跡
野良猫に襲われ、背中に大きな傷を負ってしまっていた
ピアノの下で、苦しみながら怯えるエグに、僕は必死に謝った
それからしばらくは病院通い、一時期は入院していた
今思えば、エグが家にいないのはそれ以来無かったかもしれない
その時は静かで、淋しくて、エグが帰ってきた時は心からうれしかった。
高校生になってくらいか、エグが僕を認め始めた。
今までバカにしたような態度で接していたのに
エグも僕も、大人になったということだろう
高校時代、僕自身様々な経験を積んだ、家にいる時間も減っていった
前みたいに遊んでやることも減ってたけど、その分、よく話を聞いてくれた
勉強のこと、友達のこと、当時の彼女のこと、将来のこと
ただ座って、僕をじっと見ながら聞いているだけだったけど、なぜかエグに話すと心が和らいだ
本当の姉弟のようだった
僕が初めてテレビに出た時、エグはテレビに向かって鳴いたらしい。ビックリしたのかな。
高校を卒業して、今までは父の膝の上でしか寝なかったのに
僕の膝に乗るようになった。
思えば、この時から少し軽くなった気がしていた、でも嬉しかった。
台本読みはいつもジャマをしてきた。
彼女を部屋に呼んだら、まるで姑のように彼女を一瞥し、すぐ押し入れに隠れていた。嫉妬かな?
一日で風邪を治さなきゃいけない時、ずっとエグがそばで寝ていた
次の日、僕は完全復活
行ってきますとエグに言うと、エグはくしゃみでそれに答えた
すまんと一言加えた。
いつもそうだった。
普段はそっけないくせに
僕が本気で落ち込んでいたり、風邪で寝込んでいる時は
必ず同じベッドで寝てくれた
一日、枕の横で見守りながら
不思議なチカラをくれた。
僕の引っ越し当日、エグは少し元気が無かった。
僕が引っ越してから、急激に老いていった
最後は足腰も弱くなった。体重も軽くなり、体も冷えてきていた。
猫は死に際を見られたくないらしい。
最後を看取った父曰く、ここ数日は視界から避けるようにしていたらしい。
でも最後の夜まで、エグは父の布団で一緒に寝ていた。
お迎えがくる直前、バッと起き上がり、トイレで、チカラが入らない前脚を踏張って用を足していた。
最後の最後まで、エグは父に迷惑が掛からないようにしていた。
出来すぎた猫だ。本当に。
最近、僕は彼女と別れた。
今までずっと友達だった分、失った時の喪失感は大きかった。実際、もう前みたいには戻れないと思っていた。
18日の昼、父からエグが死んだと電話をもらった。
この上僕は、エグまで失ったのか
次の日、つまり今日、会いにくる予定だったのに、一日間に合わなかった。
どうしようもないくらい落ち込んだ。引くくらい、泣いた。
奇跡が起きた。
それまで、連絡を送っても一向に返事が無かったその元カノから、メールが届いたのだ。
なんてタイミングだろう。その時、ふと思った。
エグが、僕にチャンスをくれたんじゃないかな、と。
二人を失う辛さを、エグが止めてくれたんじゃないかなって。
その後、勇気を出して久し振りに電話をした
エグが与えてくれたチャンスを、無駄にしたくはなかった。
復縁ではないが、以前みたく、笑って話せるようになった。もう大丈夫だ。
一人を、僕の中で失わずに済んだ。
最後の最後まで、本当に出来すぎた猫だよ。まったく。
ありがとうな、エグ。
たくさんの思い出をありがとう。
いろんな人に可愛がられてたな。
ブログに、日記よりエグを乗せた時の方がコメントがたくさんあったな。
この家に来て、幸せだったか?
たのしかったか?
いつもいつも、貰ってばっかりだったな。
本当に、ありがとうな。
エグを可愛がってくれた皆様
本当にありがとうございました。
エグは、天国へ旅立っていきました。
明日、本当のお別れをします。
可愛がってくれて、本当にありがとうございました。
淋しいな。
16年間、お疲れ様。
エグの分まで、僕頑張るから。
この今の壁、必ず乗り越えてみせるから。
今の写真は、載せたくないから、元気な頃の写真を。
エグ、ありがとう。
バイバイ