「どうも今日から3泊4日お世話になります」
手慣れた様子で荷ほどきをされ、パジャマに着替える70才前くらいのご婦人が同部屋になった。
なんとも明るく、その場を盛り上げ、すごく面倒見がいい
食事の時間になると、瞬時に、ワイワイと連れだって行く雰囲気にしてしまう
すごくお話好きで人見知りなく、まるで自宅サロンのよう。
「私は月に一回、抗がん剤の点滴入院してるのよ。ふふふ。なんでも聞いて」
休薬や経過観察もしながらだそうだが、もう数年 こんなサイクルで生活していると。
後にわかるのだが、この方はレジェンドと言われる重鎮Hさん。
私と部位は違う癌サバイバー。
何度も再発、転移をして、出来る手術はしてきたと。主治医にもガンガン主張する。
舌をペロッと出して私に見せてくれる。
「今はあんたの舌とそう変わりない。でもね、投与して、退院してしばらくしたら真紫色になる❗️またもとの色に戻ってくるけどね。」
そう言って、ニコッ(^-^)とされる。
「平熱が高いと癌にならないなんて、関係ないわ私は高いけど癌になったし。」
そう言って、ガハハと笑う。
お菓子やパンはこれから我慢しよかなと話す私に
「私はパンケーキ大好き好きなものを食べたらいいんよもちろんバランス良く」
治療は続くけれど、うまく長期コントロールされている。
「なんだかんだ、こうして生きてるでしょ希望の星って言われたわ~。そうそう、主人が旅行に行こう❗️って言うんよ~」と。
たくさんいろんな話を聞かせてもらった。
4日目の朝、私より先に退院するHさん。
今日帰るのに、昨日ご主人が葡萄を持ってきたのだとパクパクと召し上がっていらした。
「Hさんのおかげて楽しく過ごせました。ありがとうございました。退院されてもご無理なさらず、また・・・」
と言いかけた私の言葉をHさんは、さえぎってこう続けた。
もうな、私はあんたに会うことはない。
あんたはもう入院することはない。
私にまたここで会ったらあかん。
だから、元気でな!
大丈夫
あまりにも力強い
大き過ぎてわからないくらいの
心の広さに
あたたかい言葉に、言葉を失う
そんな私に、Hさんは、葡萄をポイポイっと
私の口に放りこみ
喋れない私を見て笑い
ほなね~
と
退院された。