タイトルにひかれ、お嬢様たちの世界を覗き見たいと思って手に取った。

想像通り、東京生まれの箱入りのお嬢様である華子やその婚約者のセレブなきらきらした日常が覗けて楽しかったが、それ以上に華子の婚約者の元同級生で地方の漁村出身の美紀やそのほか女性がたくさんでてきて、彼女たちの生き方に思いを馳せることがとても楽しかった。

 

上流階級の一見きらきらした世界も美紀の田舎も、ずっと同じメンバーでつるみ同じ場所に通い続ける閉鎖性は同じと美紀が言っていてびっくりした。

どの世界に属していても息苦しさは同じなんだなぁ。

上流階級の人はその世界にいる安心感こそ感じていても、息苦しさはあまり感じていないと思っていたから意外だった。

 

あと、美紀が華子の結婚式に出席した際、「日本は格差社会なんじゃなくて、昔からずっと変わらず、階級社会だったんだ。

つまり歴史の教科書に出てくるような日本を動かした人物の子孫は、今も同じ場所に集積して、そこを我が物顔で牛耳っているのだ。」という件には、自分の知らない世界を知ったようでぞくっとした。まぁ私には一生ご縁がない世界だと思うけど・・ニヤリ

 

自立した女性であること、そして自分の所属している世界だけでなく視野を広く持つことがつくづく大切だなんだなぁと思った。

華子と美紀は華子の婚約者幸一郎をめぐって、激しい喧嘩を繰り広げても仕方ない状況なのに、二人がよい関係を築き、煮詰まりすぎた華子にアドバイスまでできるのは、頭がよいのももちろんだけど、美紀が複数の世界を知っている人だからだったと思うから。

美紀は大人で素敵だったし、美紀にもらったアドバイスを素直に聞けた華子も素敵。

二人が最後生き生き前を向いていた姿がとてもよかった。

 

あと、ここからは勝手な私の妄想になるのだけど、華子の祖母や習い事で知り合った奥様達は、「家族はかけがえのない自分たちの成果のようなもの」という価値観を持っているようで、そういう女性たちに、家族が生きがいで、愛情深く善良な人なのに、時に外から来た嫁や自分の価値観と違う道を望む子供を傷つける、少々厄介な人物になってしまう女性像の典型を見た気がして切なくなった。

彼女たちがそうなってしまう一番の原因は世界が狭く、価値観が凝り固まってしまっているからなんだろうなぁ。

 

初めて読んだ作家さんだけど、他の著作も読んでみたいと思いました照れ