8年前。私たちが住んでいた小さなマンション界隈にきじたろうという名の
地域猫がいた。驚くほど賢く、人懐っこく、みんなに愛されていた。
私もTもこよなく可愛がった。ある寒い日、私たちのドアの前でにきじたろうが
まるで私たちを待っているかのような姿勢で座っていた。
Tは入っておいでを言いながらドアをきじたろうのために開けた。
そして私たちの寝床にしばらくいると、不意に出て行こうとする。
ドアの前でTを見上げるきじたろう。
いいよ、いってらっしゃいといいながらTはドアを開ける。
猫は気まぐれなとこが可愛いと言っていた。
その頃彼はフランス語で「白い棺」という歌をよく歌っていた。
男同士の友情の歌であった。
今、思うと偶然すぎる。神様は残酷だ。
続く