外泊3日目。
今日は早朝から移動の1日である。
ついにB大学病院から離れることになる。
この移動中、何かあったらC大学病院まで私が応急処置で持たせなければいけない。
娘の腎ろうちゃん、CVカテーテルちゃん、
今日だけはどうか抜けないでと心から祈るばかりだ。
タクシー→新幹線→車
で移動する。
車だけの移動が望ましいが、新幹線さまの力に頼ることにした。
大幅に時間を短縮できる。
この慣れ親しんだ我が家と今日でお別れなのに、いつも通りバタバタと出ていってしまった。
どうして毎回、時間ギリギリまで朝の準備が終わらないんだろう。
息子と娘には、どうか反面教師にしてもらいたい。
しばらくタクシーに運んでもらい、新幹線の駅に到着する。
さすがに人が多い。
髪の毛がない頭に帽子を被せ、マスクをつけている娘。
肩からは腎ろうバッグを入れた、キルト生地のお手製肩掛けカバンを下げている。
なんというか、まさに病児っぽいスタイルである。
ウイルスには効果はないが、私は娘を守るように、しっかり抱きかかえて駅の中を進んだ。
待つこと30分ほど。
新幹線が到着する。
息子と娘は新幹線には何度も乗っている。
だけど今回はいつもと違う。
初めて多目的室を使わせてもらうのだ。
待機してくれていた乗務員さんが、入室を手伝ってくれる。
想像していたより広い。
折りたたみベッドを広げて息子と娘、それから私も座る。
夫は備え付けの補助椅子に座った。
これなら4人でも過ごせそうだ。
息子と娘は、「ひみつのへや!」「ひみつのへや!」とはしゃいでいる。
新幹線が動き始めると、ようやく朝ごはんだ。
シートを広げて買ってきたパンを置いた。
パンパーティである。(好きなパンを各自好きなだけ食べるお祭り)
息子と娘はあれもこれもと急かされるように食べている。
お互い好きなものを確保しているのだが、
2人は食べ物を譲り合ったりする。
「いいよ、娘ちゃんあげる」とか
「いいよ、はんぶんあげるね、息子。(娘は兄を呼び捨てにする)」とかいうやりとりをするのだ。
誰に似たんだろう。不思議である。
私は美味しい食べ物やお菓子を兄妹に譲ったことはおそらく一度もない。
近所でも有名になるくらい凶暴な姉がいたので、欲しいものを確保するだけでは安心できず、口に入れておかなければ奪われる、みたいな環境だった。
もちろん譲ってもらったことも一度もないだろう。
息子と娘が私達姉妹に似なくてよかった。
そしてやっぱり、2人のやりとりを見るのはとても楽しい。
いつもは長い乗車時間も、
個室でダラダラ過ごしているとあっという間にすぎてしまった。
新幹線から降りて改札を抜けると、義母が待ってくれていた。
ここから車で私の実家まで送ってもらう。