~翔 side~
彼女から弟がいると聞いていた
内気な性格で母親が華道の先生でもあって花や料理そして日本舞踊が好きで
歌舞伎の家に生まれた訳じゃないのに…
同級生に歌舞伎役者の息子がいて
しょっちゅうその家にいてこの道に
行くかもなんて聞いてて
会ったことの無い未来の弟に興味があった
彼女との付き合いは上手くいっていた
人のことを常に思い自分のことも大切にしてくれた
結婚してもきっと絵に書いたような幸せな家庭が築けると思っていた
何よりも親がとても喜び
今まで何不自由なく生活して来れたのは
男手ひとつで俺を育ててくれた
親父への孝行だと思っていたから
そんな生活もアリかなって思ってた
潤に会うまでは…
初めて家にお邪魔した時に会った潤は
細くて目がとにかく大きくて
瞬きすると睫毛がバサバサと音がするほど長くて顔が小さいのに…
よろしくのつもりで握手をしようと出された手は細いのに大きくて白くて
思わず引き寄せてしまった
ちょっとはにかんだ紅を差した頬はまるでそこら辺の少女より可愛くて綺麗だった
こんな綺麗な子が俺の弟に…と
嬉しくなった
それから何度か会って高校卒業のお祝いをしようと思っていたが海外赴任もバタバタと決まってしまって単身で行くことになりそれから潤とは連絡も取らずにいたが彼女から聞くことの中には
いつも愛くるしい潤がいて
戻ったらすぐに逢いたいと思っていた
潤が気になる存在になっていた
一度こちらに彼女が来た時にふたりで
決めていたことを実行して
無事に思い描いていた未来予想図に
なっていた
「翔……安定期に入ったよ」