「撮」色々

「撮」色々

史跡巡りなど、撮影した事を綴ります

Amebaでブログを始めよう!
SEACHTをスキャニングしたヒューマノイドが44AUTO MAGの銃口をRINCE に向けていた。
「スキャニングを見破ったまでは良かったが、ここまでだ」
その時、突然銃声がなり奥にいたヒューマノイドが倒れ込んだ。
「?!」
ヒューマノイドが振り向いた瞬間、横一直線に閃光が走り、頭が宙を舞い地面を転がった。
RINCEは、それを確認するとNARUに駆け寄った。
「NARU!」
「うう…大丈夫…肋骨は折れてるみたいだけど…コートの下に装甲板を入れていて助かったわ。まさか板が凹むとは思っていなかったけれど…痛っ!」
「流血が見られなかったから安心していたが…」
「先生に回収してもらえるように依頼しておいたぞ」
SEACHTはNARUを覗き込みながらRINCEに話しかけてた。
「流石だなSEACHT。助かった」
「自分の首を切るのは良い気分ではないがな」


       *****   *****

SEACHTとRINCEがメディカル室のYURI の部屋を訪れるとAMIGAとMIUも来ていた。
「MIU、どうだ?」
SEACHTが近づきながらMIUに話しかけた。
「これから詳しい状況を先生が説明するそうよ」
「そうか…」
その時、YURIが汗を拭いながら部屋に入って来た。
「みんな揃った?これから説明するわね」
YURI は端末に向かうとデータを眺めながら説明を始めた。
「まず、MELね。背中にある改造部位制御装置が銃弾により破壊。その為一時行動不能に陥ったけれど、交換すれば問題ないわ。何センチかずれていれば身体部位だったから運が良いわね。次は…Ritsu 」
YURIは視線をSEACHTに向けた。
「先生…」
「Ritsuの場合は、特殊機能を全て破壊されている上に身体部位も損傷が見られる。機能を完全回復するには身体の負担が大き過ぎるの…その結果、一部の機能は失われる。ただし、生活には支障は出ない」
「BAINNEの活動は無理と言う事?」
「それは私が判断する事ではないわ」
「………」
「KONIJNの場合は、止血のお陰で大事に至らなかった。肩の骨が砕かれているので改造部位となるわね。傷の全治と改造手術には暫くかかる」
「Ritsuの愛だな」
AMIGAが頷きながら呟いた。
それを覗き込む様にMIUが口を挟んだ。
「あんたのお膳立てだろ?あ、言っておくけど…私はエルフの姐ちゃんでは無いからな!」
「ひっ!」
AMIGAは肩をすくめた。
「続けるわよ…SZNKAはボロボロね。この世界は色々な事が影響して通常治療部分は治りが遅いから、なるべく改造してあげたいのだけれど…身体に於ける改造率が高いと身体が持たないからギリギリのところまでやってみるわ」
「頼むよ、先生…」
SEACHTの言葉に頷きながら、YURIは話を続けた。
「MAIKAは…応急処置は終わったけれど、手術が必要ね。ここでは無理なので、元締さんに早急に手配して貰っている。後は、MAIKAの生命力に頼るしか無いわ…Hachiも同様ね」
「Hachi?」
AMIGAが怪訝そうに呟いた。
「敵じゃないか!MAIKAをこんな目にあわせた張本人だろ?!まさか、あのNARUって女も助けたの?」
「彼女は皮膚の一部と肋骨の損傷だから治療がすめば、回復を待つだけね」
YURIの言葉に、明らかに不満の表情を見せていた。
「ほっとけば良いんだよ…あんな奴ら」
「なにっ!」
その言葉を聞いてRINCEはAMIGAを睨みつけ、にじり寄った。
「やめとけ!」
SEACHTはRINCEを止めつつAMIGAを睨みつけた。
「AMIGA!言葉がすぎるぞ!」
そこにYURIが割って入って来た。
「命の重さに敵も味方も無いわ!私はこの世界に来てから、そう心がけて来た。これからも、それは変わらないわ!」


紛争は収束し、静けさを取り戻した。
SUDOUは多くの損害を被り、この地域を後にしていた。

暫く経って、MELとSEACHTは元締めのAMIに呼ばれていた。
「漸くこの地域も落ち着きを取り戻したわ。全てあなた方の働きのお陰ね。ところでMEL、体調はどう?」
「大丈夫です」
「良かった。そうそう、機能を破壊されたRitsuは一部の機能が修繕不能なので諜報部隊から外します。それとKONIJNも行動部隊から外してコードネームを破棄、Mitsuに名前を戻します」
「除名処分…ですか?」
「違うわ!業務変更ね。Ritsuは私の秘書に、Mitsuはボディーガードとしてここで働いて貰うわ。2人一緒にね」


治療を終え、RitsuとMitsuは2人で新しい部署に異動して行った。
SZNKAは、完治には暫くかかるがBAINNEに戻って来た。
MAIKAとHachiは命を取り留め、回復を待つだけとなり、NARUも治療を終えRINCEと訓練出来るまでになっていた。

この後、BAINNEからはRINCE・MAIKAが抜ける事になり、行動部隊は、MELを筆頭にAMIGAとSZNKA。諜報部隊はSEACHTとMIUという体制に変わっていく。
RINCEは、NARUと共に傭兵に戻る事になり傭兵組織を立ち上げ、MAIKAは、体調の回復を待ってHachiと2人でRINCEに合流する事になっていた。
後日、RINCEとNARUは拠点を整備する為、仲間に見送られ旅立った。


そして………


それを瓦礫の陰で見ている者がいた。
消滅したはずのSAYUだ。クローンはオリジナルの細胞さえあればコピーが可能なのだ。チップを書き換えれば記憶までもが蘇る事が出来る。
2人の姿を横目にSAYUは不敵に笑い、その場を後にした。

「BAINNE…いつか思い知らせてやる」


《END》

        *****   *****

KONIJNとRitsuは、完全に追い込まれていた。サーチ機能が不能になり、仲間の場所が把握できず迷走している間に囲まれてしまった。
「みっちゃん…」
「大丈夫だよ、りつは私が守る!」
「みっちゃん…私を置いて逃げて」
「バカな事を言わないで!出来るわけないでしょ?」
「でも…このままだと2人とも…」
その時KONIJNの右肩を弾丸が貫いてRitsuの足元に倒れこんだ。
「うぐっ!」
「みっちゃん!!」
「ごめん…りっちゃん…守ってあげられなくて…」
「嫌っ!死なないで!」
ヒューマノイドがジリジリと迫って来る。銃口をRitsuに向けた。
「みっちゃん、ありがとう…」
覚悟を決めた2人は抱き合い、目をつぶった。
「ドン!」
銃声がなり、前のめりに崩れ落ちた。
しかし、倒れたのはヒューマノイドだった。そして、周りにいたヒューマノイドも次々と倒れていった。KONIJNとRitsuは目を見張った。
「大丈夫かい、2人共」
そこに立っていたのはAMIGAだった。
「Ritsu!ボロボロじゃないか」
「特殊機能を破壊されちゃって…それより、みっちゃんが…」
「おいおい、身体部位がやられてるぞ!出血を止めないと…Ritsu、出来る?」
「左手の指先が破壊されてるけれど、両手が使えるから」
「そっか、頼む。SZNKAに弾丸を届けないといけないんだ。すまない」
「大丈夫、早く行ってあげて!」
「うん、わかった」
黒い革の大きなバッグを置いた。
「この中に必要なものは入ってる。後、これも渡しておく」
AMIGAがRitsuに黒いブローバックのハンドガンを渡した。
「GLOCK 18Cだ。ハンドガンでもフルオートだから強力だよ。エルフの姐ちゃんにも渡してあるんだ、無理矢理だけどね。予備のマガジンはバッグの中に入れてあるから」
「うん、ありがとう」
「今のところ、周辺にはヒューマノイドは見当たらないが、先生が来るまで辛抱強く待ってて」

AMIGAは元の場所に戻って来たがSZNKAの姿が見当たらなかった。
「SZNKA!」
呼んでは見たが反応がない。
「んっ?」
何かがキラリと光った。
「これは…SZNKAのサバイバルナイフ」
周りを見渡すと瓦礫の後ろに影が見えた。そこには傷だらけのSZNKAが
横たわっていた。
「SZNKA!ゴメンよ…もっと早く戻っていれば…」
「AMIGA…まだ…死んでないし…」
「SZNKA!」
重症だけど、まだ生きている。


MAIKAは天を仰ぎ仰向けに倒れていた。
少し離れた所に、同じ様な体勢でHachiが倒れ込んでいた。
「今の私じゃあ、相討ちが精一杯か…」
Hachiとは一緒に辛い修行を励まし合った仲だった。 
この世界が壊滅状態になってから一変した。傭兵稼業で稼ぐ様になり、遂にHachiと敵対する事になり、彼女は左手を失う事になった。この世界では部位を失う事はさほどの事ではない。サイボーグ化すれば良いのだから。しかし、MAIKAに負けた事で自尊心がボロボロになり、復讐するためにタブーのアサシンになった。
「今回はヤバイな…」
腹部に当てた手が、ぐっしょり滑っていた。
目が霞み出して来た。霞んだ視界の中に誰かの顔が薄っすら見えていた。


SAYUはヒューマノイドに囲まれて、先を急いでいた。ヒューマノイドは暴走を防ぐ為、活動限界時間が設定してある。あまり長引くと不利になるのだ。
「もうすぐタイムリミットだな…」
「シュッ!」
「?!」
目の前を風切り音と共に何かが過った。
そして足元に金属製の矢が刺さっていた。
その直後、警護のヒューマノイドがバタバタと倒れた。
現れたのはMIUだ。
「あんた、さゆりだろ?」
SAYUは訝しげにMIUを見た。
「さゆり?」
「覚えてないんだな…私の事を。いや、知らないのか?」
「お前の事は知っている。MIUだろ?BAINNEの」
噂は本当だった様だ。元々、さゆりとは幼馴染だった。だが数年前、亡くなったと噂に聞いていた。そして目の前にいるSAYUは、最愛の娘を亡くしたSUDOUが造らせたクローンだと言う噂があった。
「やはりクローンか」
「………」
SAYUはM29の銃口を向けた。咄嗟にMIUはニードゥルをその手目掛けて投げつけた。
「?!」
しかし、SAYUは平然と銃を向けいた。
「すまないな、同じ手は食わない」
ニードゥルはSAYUの手に装着されたガードに阻まれていた。
「さよなら」
M29をMIUに向け発泡した。
その直後、 MIUは横にジャンプで回避した。
「バババッ!」
MIUの手に握られたGLOCK 18Cから弾丸が連射されていた。
「うぐっ…」
SAYUは崩れる様にして倒れた。
「すまないな。飛び道具は使いたくなかったけど…最後の手段かな?さよならSAYU。さゆり…」

        *****   *****

MELはKONIJNが瓦礫を登って行くのを見ると2人にに声をかけた。
「AMIGA!SZNKA!この場所からヒューマノイドを引き離すぞ」
「えっ?でも、KONIJNが…」
応戦しながらSZNKAが振り向いた。
「大丈夫だ、MAIKAの姿を確認した。彼女に任せよう。私達は邪魔者を遠ざける」
「了解した!」
応戦しつつ、瓦礫の山から離れていく。暫くするとMELは自分の背中をSZNKAの背中に合わせ、小声で2人に呟いた。
「SZNKA、AMIGAと2人で食い止められるか?私はこいつらを引き寄せて分散させる。KONIJNが戻るまで粘るれるか?」
「任して!」
AMIGAはショットガンを突き上げた。
「わかった!SCORPIONの餌食にしてやるよ!」

AMIGAとSZNKAは暫く持ちこたえたが、思った以上にヒューマノイドが減らない。アンドロイドなら装甲がそれほど厚くないが、ヒューマノイドは戦闘用に改造されているから弾丸の減りが早い。
「ヤバイな…弾丸がもたないよ。ちきしょう!」
「こっちもヤバイな…少し離れた所に武器庫があったはず…SZNKA、少し我慢出来る?」
「早く帰って来てね」
「速、戻るよ!」


MELは手榴弾を使い引きつけては粉砕していった。
「だいぶ片付いたな。2人が心配だ…戻るか」
その時近くのビルの陰から人影が現れた、咄嗟に銃口を向けた。
「…M?!あんたか」
「捜すのに苦労したよ。アンドロイドには襲われるし…元締めに言われて…あんたの補佐を命令された」
「補佐?有難いが今は要らない。また、敵に利用される前にこの場を離れてくれ」
「………また、邪魔者扱いか」
Mは、ショルダーホルスターからCOLT GOVERNMENT M1911を抜いて銃口をMEL に向けた。
「お前らが… BAINNEが現れなければ!」
その瞬間MELは、足元の砂を蹴り上げた。
「うあ!」
Mは、腕で顔を覆って怯んだ。
「バン!」
MELのデザートイーグルがMの右脚の大腿部を撃ち抜き、その場に崩れ落ちた。
「改造部位だから心配ないだろう。YURI先生には信号を送った。暫くすれば来てくれるはずだ」
MELは背を向け歩き出したその時、銃声が響いた。そして、その場に膝から落ち前のめりになって倒れた。
背後にはMが銃を構え、銃口からは硝煙が
上がっていた。
「うぁぁあ!」
Mは気が狂ったように叫び、右足を引きずりながらその場を後にしようとした。
その時、目の前に人影が現れた。YURIだった。
「先生…」
YURIはその先に倒れているMELに駆け寄った。
改造部位に当たり破壊された衝撃で一時的に行動不能状態になっていた。
そっとMELの耳元で囁く。
「ごめん、すぐ戻る」
MELの頭が微かに動き頷いていた。
それを見てYURIは少し微笑んで立ち上がった。
「私と一緒に来て」
「どこへ…」
「あなたを失うわけにはいかないの!今の私が存在しなくなるから」
「えっ?」
ここに来る途中、廃ビルの路地に見覚えのある渦のような空気の淀みを見つけていた。
「ここよ」
「これは?」
「時空の歪み…不安定になっていた時空の壁が強い力で渦となって歪んだ場所」
「俺に何をしろと?」
「あなたはこの世界から出た方がいいわ」
「まさか…」
「そう、この渦を使って違う世界に行くの。戦いの無い平和だけど退屈な世界に」
「しかし…」
「大丈夫!あなたを救ってくれる人にすぐ出会えるから」
「えっ?どういう事だか…」
「行けばわかるわ。どうするの?」
暫く悩んでいたが決心し、MはYURIを見た。
「わかった!先生を信じるよ…ありがとう先生」
立ち上がり、渦の前に移動して振り向きながら軽く頷いた。
Mの身体が渦に飲み込まれいく瞬間、YURIは声を掛けた。
「また後でね」
その瞬間、渦は跡形もなく消えていた。


        *****   *****

SAYUの場所は把握していた。この先の廃ビルの屋上だ。屋上と言うよりも瓦礫の山の上と言った方が近い。
アジトを出てその場所に近づくにつれて、明らかにアンドロイドの性能が違う。
「気をつけろ!こいつらはヒューマノイド型だ」
MELは周りに叫んだ。
「キリがないよ、蟻みたいに湧いてくるし…」
AMIGAはショットガンを撃ちながらMELに訴えた。
「もう少しだ、我慢しろ!」
少し離れたビルの瓦礫の山の上に人影が見えてきた。
「あれは…Ritsu?りつーー!」
KONIJNが叫び声をあげた。
ヒューマノイドに拘束されていたRitsuは、その声で僅かに顔を上げた。
「みっちゃん…」
SAYUはMAIKAに銃口を向けた。
「お友達が来た様だ」
ヒューマノイドが拘束を解くとRitsuはその場にしゃがみ込んだ。
SAYUは銃口をRitsuに向け直した。
「そろそろ退散させて貰うよ。この場を離れるまで動くな。動けば…わかるな」
SAYUはヒューマノイドに囲まれてジリジリ下がった。
SAYUの姿が見えなくなった瞬間、MAIKAはRitsuに駆け寄った。
「Ritsu!大丈夫か?」
「うん…ごめん…」
Ritsuを抱きかかえようと手を伸ばした時、何かが目の前をよぎった。咄嗟に避けたが頬に痛みが走り、一筋の血が流れていた。目線の先には1人の女性の姿があった。
「見つけた…MAIKA」
「Hachi?!」
「あんたに潰された左手が疼くよ」
蛇拳…暗殺拳と恐れられている闇の拳。
MAIKAは手刀を顔の前に構えた。
「八卦掌…久しぶりのご対面だね。本気を出してくれるんだね?」
左手を改造して殺傷力が増している。真面に受ければ一撃でも致命傷になり兼ねない。
ジリジリと間合いを詰めてくるHachiは前とは比べ物にならないくらいの殺気が感じられた。
その時、KONIJNが瓦礫を登って来た。
「りつー!」
「KONIJN!Ritsuを連れて離れろ」
「MAIKA!」
KONIJNはHachiを見つけると銃口を向けた。
「やめろ!手を出すな!早く行け!」
KONIJNはRitsuに駆け寄って抱きしめた。
「……みっちゃん」
「大丈夫?さあ、行こう」
MAIKAはHachiから2人を守るように立ち位置を変えていた。
「美しい友情かい?ま、攻撃されなければ殺したりはしないよ。私は、MAIKAにしか興味がないからね」
「Hachi…」


RINCEは援護射撃をしながら全体の状況にも気をつけていた。
スコープを覗きながら前方の動きに注視した。
「とりあえずRitsuは確保されたな。MAIKAは…」
先程気にしていた女性は面識があった。傭兵の時に顔を見ただけだが間違いない。
「アサシンのHachiか…」
狙撃出来ない事もないが、2人の動きが予測できず危険が伴う。それにMAIKAは喜ばないだろう。
と、その時後頭部に冷たい感触があった。
「姐さんのウイークポイントは狙撃に集中している時は後方が疎かになる事」
「NARU…そうだった、いつもそう言って後方を守ってくれたな」
「あれほど単独は危ないと忠告したのに…」
「なるほど、個別に駒を用意したと言う事か」
「そう、私は姐さんの阻止と…抹殺」
「抹殺?それなら何故直ぐに撃たない?」
NARUはRINCEの後頭部からBERETTAを離した。
「NARU…」
「殺しは契約外だから…それに、この件は降りる事にした」
「そうか…それなら早くこの地域から立ち去った方が良い。それに…」
話の途中で、RINCEは目で合図を送る仕草を見せた。その瞬間、NARUはBERETTAをRINCEに放り投げ瞬時に横に転がった。
「パンッ!」
BERETTAから放たれた銃弾は、少し離れた場所に居たヒューマノイドを撃ち抜いていた。
「NARUが私を殺せない事をSAYUはお見通しのようだ」
その時、朽ちた出入り口から人影が現れた。
「NARU!」
構えた44AUTO MAGの銃口が真っ直ぐNARUに向けられた。
「SEACHT?!やめろ!NARUは…」
「パンパン!」
「NARU!」
銃口から放たれた2発の弾丸は共に、NARU の胸の辺りに命中し、モスグリーンのコートをなびかせながら吹き飛ぶ様に倒れた。
「きさま!」
「きさま?おいおい、助けてやったのにとんだ言い草だな」
SEACHTは、ニヤケながらRINCEを見た。
「NARUは丸腰だ!それに殺気が無い事くらい…んっ?」
「どうした?」
何か違和感が…
「刀はどうした?村正だったか?」
「刀?ああ、折れたよ。さすがに対ヒューマノイドではきついな」
その瞬間、BERETTAがSEACHTの肩を撃ち抜いていた。
「すまないな。忠告すると、SEACHTは今回の戦いの前に刀身を斬鉄剣に変えている。スキャニングするなら、アップデートはこまめにチェックした方が良いぞ」
「………」
「新型のアンドロイドはスキャニングもできるのか」
「パン!」
銃声と共にBERETTAが宙に舞い地面に落ちた。
先程倒したはずのヒューマノイドが銃口をRINCEに向けて立っていた。


        *****   *****

MAIKAは廃墟のビルの一室から外を伺っていた。
「SEACHT、準備はいいよ」
ザーッ
暗号化レシーバーは雑音が多い。MAIKAは耳を押し当てた。
『了解した。MIUと私は敵を惹きつけるから、その隙にMAIKAはRitsuを救う。出来るか?』
「ふんっ!救ってみせるさ!派手にやってくれ」

SEACHTは横のMIUにレシーバーを向けた。
「だ、そうだ」
「MAIKAなら心配ないだろう。それよりAUTO MAGはわかるが、刀は…」
「ん?ただの刀ではない。【和泉守兼定】だ。斬鉄剣でもある」
「いや、そう言う事じゃ…」


「撹乱部隊は準備が完了したそうだ。我々も行くぞ!準備はいいか?」
それぞれが武器を装備し頷いた。
MELはショルダーホルスターにシルバーに輝くデザートイーグル、手にはMP-5。
KONIJNは両手にUZI SMG。
SZNKAはVz61 SCORPIONを胸の前に抱えていた。
MELは呆れた様にAMIGAを見つめた。
「おい、ふざけてないよな?」
ウェスタンに出てくる様な出で立ちで腰にはガンベルトにCOLT SAA 4-3/4inの2丁拳銃。歩く度に踵の拍車が、ガチャガチャと鳴っている。
「なんだよ、威力はちゃんとアップしてあるし使いやすいんだよね。それに背中にも長物背負ってるし!」
確かに背中にはM870 ショットガンが固定されていた。
「本気ならいい…では、行くぞ!」
「ちょっとぉ〜。そう言えばスナイパーの姐さんは?」
「RINCEならすでに位置に着いている」
ザーッ。
レシーバーの雑音が部屋に響く。
『誰がスナイパーの姐さんだ…。MEL、後方撹乱が始まるぞ』
「了解した!行くぞ」


RINCEはREMINGTON M700 A.I.C.S.のセッティングを終えると、もう一つのライフルケースを開けた。
COLT M4A1 CARBINE、こちらは混戦用だ。セッティングをしてケースの上に置いた。
状況を確認し中間点に位置をとって、それぞれの位置関係を把握していた。
少し気になるのが、SAYUの近くに居る女性達の存在だ。スコープの倍率を上げて顔を確認した。1人はNARUだ。もう1人は…確か


「ふんっ!」
SEACHTはアンドロイドの群れの中に手榴弾を放り込み、刀を抜いて走り出していた。
何体かが吹き飛び、周りに居たアンドロイドはSEACHTに向かって来た。それを連続で切り捨て、片手のAUTO MAGが離れた者を撃ち抜いて行く。少し離れた所ではMIUが縦横無尽に動き回りアンドロイドをニードゥルの餌食にしていた。

「ん?始まったな」
後方からの炸裂音を聞いてSAYUは振り向いた。その少し後、今度は左右からいくつもの銃声が響いていた。SAYUは2人に目で合図を送った。それを見て、それぞれビルの陰に消えていった。
暫く様子を伺っていたが、何かに気付き
少し離れた瓦礫の陰にSAYUは目を凝らした。
「出て来たらどうだ。MAIKAだったか?」
MAIKAは、ゆっくり周りを確認するように姿を現した。
「お見通しか?流石だな…それにしてもすごい数のアンドロイドだな」
「この女のお迎えか?もう少ししたら返してやる。その辺のアンドロイドとは違う。戦闘用に改造されたヒューマノイドだ」
廃ビルの上からBAINNEのメンバーがヒューマノイドを倒しつつ迫って来ていた。


        *****   *****


敵方に情報が漏れ、出所を調べろと言われたSAYUは個々のチップのデーターを調べていた。
「ん?これだな…メイドMKか」
彼女の事はよく知っている。誰よりも信頼出来る人物の筈だが…
詳しく情報を見てみる。
行動履歴は問題ないがセキュリティチェックに以前より7%の遅れが、ここ2~3ヶ月の間に目立つ様になっている。
最近はセキュリティを強化しているから、多少の遅れは仕方ないが気になるところだ。1年前に身内が亡くなり、何ヶ月かブランクはあるが復帰後は変わらず仕事をこなしている。
「まさか…入れ替わったか?…スキャニング」

MKはSAYUに呼ばれていた。心当たりはあった。
「MK、最近効率が落ちているぞ。セキュリティチェックの7%の遅れはどういう事だ。セキュリティ強化があったにしても、お前なら2%に抑えられる筈だ」
「申し訳ありません…」
「BAINNEには、潜入要員のRと言うのが居てスキャニングが得意なんだそうだ。体内チップまで書き換えられるからタチが悪い」
「………」
「残念だったな、MKは確保させて貰った。お前はBAINNEとの交渉の駒に使わせて貰う。命は取れないが機能は破壊させてもらう」

        *****   *****

「すまないMEL、Ritsuが敵の手に落ちた」
SEACHTが入ってくるなりMELに話し掛けてきた。
「なにっ?!まずいな…この事はKONIJNには知られない方が…」
「おい!どういう事だ!」
MELとSEACHTは入り口で怒り顔になっているKONIJNを見た。
「落ち着けKONIJN」
SEACHTは諭す様に話し掛けた。
「命は無事だ」
「命は…って」
「特殊機能は全て破壊された」
「……おのれ…SAYU…Ritsuを取り返す!何処にいる!!」
「待て!BAINNEがこの地域から撤退し今後手を出さなければ無条件で引き渡すそうだ」
KONIJNの顔が紅潮し肩が震えていた。
「そんな事…信じられるか!」
そう言い捨てると部屋を飛び出して行った。
「KONIJN !」
「MEL 、KONIJNは私が何とか抑える。あんたは皆んなを招集して対策を練ってくれ」

SEACHTが通路に出るとKONIJNはUZIを両手に持ち興奮していた。
「落ち着け!お前1人でどうなる!」
「どけ!私がRitsuを守るって約束したんだ!だから…」
その時、魂が抜けた様にKONIJNはその場に倒れた。すぐ後ろにはYURIが立っていた。
「先生…」
手にはハンドタイプの麻酔銃を構えていた。
「ちょっと手荒だけど…2時間もすれば眼が覚めるわ」
「ありがとう、助かったよ」
「メディカル室に運んで」


司令室にはMAIKAを除く諜報部員も含め、全員が招集されていた。
「KONIJNは大丈夫なの?」
SZNKAがMELに心配そうに尋ねた。
「ああ、2時間ほど寝て貰ってるだけだ」
MEL は全員を見渡し話し始めた。
「今、この地域から撤退する訳には行かない。しかしRitsuは取り戻す。ここを閉鎖し、G地区のアジトに一旦移る」
SEACHTが地域図をモニターで見て首を傾げる。
「それでSUDOUが納得するか?地域を変われと言う事ではなく支配地域から出て行けと言う事だろう?」
「ああ、納得はしないだろう。むしろこの機会に潰しにかかるつもりだろうな。アジトから引きずり出すのが目的かも知れない」
「当たりだよ」
壁に寄り掛かり、いつのまにか帰還していたMAIKAが呟いた。
「周りはSUDOU配下のアンドロイドに包囲されている」
「来たか…SEACHT、後方を撹乱出来るか?タイミングを合わせて打って出る」
「了解した、配置に付いたら連絡する」


        *****   *****


「随分と物騒だね」
うようよいるアンドロイドを見渡してNaruはSAYUに話し掛けた。
「今回は今までと違う。奴らを壊滅させる」
「その為の人質?」
SAYUの横でアンドロイドに拘束されているメイドを見た。機能を破壊されては
いるが、身体部分は無事な様だ。
「作戦をすんなり行う為だ」
「私が呼ばれたと言う事は、実戦援護?」
「今回は駒をいくつか用意した。あなたもその1人だ」
「何をさせるつもり?」
「RINCEの動きを阻止してもらう」
嫌な予感はしていたが的中した様だ。悪い予感は、いつも良く当たる。
「あそこにいる、あの功夫着の女も同様の駒って事」
「ん?ああ、そうだ。彼女はMAIKAを良く知っている様だからな。1人づつ潰してやる」
「潰す?まさか殺すつもりじゃないだろうな?世界の人口が極端に減った今、殺しは最悪の罪…」
「だからなんだ?世界を手に入れれば問題はないだろう?」
「………」

        *****   *****
紛争や汚染で世界の人口が極端に減り、人手を確保する為にアンドロイド研究が急ピッチで行われた。生き残った人類も、五体満足な人は稀で、九死に一生を得た人ばかりだ。身体の一部を失ってしまった人達の為に人体改造(サイボーグ)の技術が生まれ、権力者は人体の兵器化に富を投じた。
YURIは、人体改造のスペシャリストとして名を馳せていた。金のある奴らから軍事目的の改造で依頼を受け、その金で人々の生活的改造を無償で行っていた。

元は違う世界線で暮らしていた。その世界は小さな紛争はあっても見た目は平和で、医療も再生治療が最重要視され人体改造など意味のない世界だった。YURIはこの世界に居場所を失いつつあった。
そんなある日、もう日付が変わろうかという時間に宿舎兼研究所の近くまで来た時だった。路地の奥がぼんやり光った気がしてそちらを見ると誰かが倒れているのが見えた。恐る恐る近寄ってみると見知らぬ男が倒れていた。慌ててバッグから小型ライトを取り出し照らした。
「怪我してる…大丈夫?!わかる?」
息はある、朦朧としている様だが意識もありそうだ。救急車を呼ぼうとした時、男は気がついた。
「人は呼ばないで欲しい…あ!あんたは…まさか…運命だな…」
意味不明な事を呟いていたが、少し待って欲しいというので連絡はしない事にした。男の言葉通りしばらくすると歩ける様になったので肩を貸して研究所まで運んだ。
体の方は多くの打撲や切り傷が見られたが、比較的大きな傷も縫うほどではなかった。そして右足の大腿部には、なんと弾痕があり貫通していたが、驚く事に出血の痕跡がないのだ。
「義足?見てもいい?」
「構わない、もともと…いや」
先程から意味不明な事を呟いていたが意識の混乱は見られない。身体の傷の方は消毒をして大きめの傷には包帯を巻いた。
右足は…見た目は通常の人の脚と変わらないが骨や筋肉などが人工物で出来ていて、よく見ると肌までが人口物だった。
見た事も無い技術…そしてYURIが目指している理想が目の前にあった。
「すごい技術…これをどこで」
「治せないか?」
「えっ?!無理よ、私にはそんな技術は無いわ…」
「元に戻してくれとは言わない。歩ける様にしてくれるだけでいい…もう、戦う必要も無くなったし…」
「戦い?…わかった…今出来る事しか出来ないけれど…」
2ヶ月に及ぶ治療の末、男は回復した。自分の技術が人を救った瞬間である。
「ありがとう先生。お礼がしたいが今の自分では何も出来ない…だが、先生の今の現状を変える方法を教える事は出来る」
語り出したのは驚愕する内容だった。
自分は時空の歪みを利用して別の世界線から来た事、その世界は荒れ果て環境が悪化し、地上では数時間しか活動出来ない程酷くて人体にも影響が出ている事。
生き残る為に人体改造の技術がすすんでいるが、それは極1部の人達だけで弱者は救われず命を失っていると…
「今ならまだ、時空の歪みを利用できる。自分の居た世界で人々を救ってくれないか…先生」
「でも、すでに素晴らしい技術があるのに私が行ったところで役に立たないわ」
「そうじゃ無いんだ。歪みで時間軸もずれているから先生が行く世界では、まだ技術は発展途上なんだ。お願いだ!皆んなを救ってくれ!YURI先生!」

最初の路地にいた。彼が現れてからもう少しで1600時間になる。歪みは、ほぼ800時間毎にほんの数分だけ現れ毎回小さくなり5回ほどで消滅する。今回は3回目にあたる。大きさとしては今回が限界だろうと言っていた。誰にも見られず1人で行くしかない。許容範囲を超えると狭間に潰されるか歪み自体が消滅する。
空気が揺れた。目の前の空間が霧がかかった様になり1.5m位の円になった。初めて見たときは路地全体が揺れていたのに、だいぶ規模が小さくなっている。
「私を望む人がいるのだから、何をためらうの?」
YURIは円に近づき、突っ切る様に歩みを進めた。その途端、体が浮き上がり目の前が真っ暗になり暫く思考が停止した様だった。そのまま意識を失った。

こちらに来て5年になる。あの男が言っていた現実は酷いものだった。強い者だけが命を拾い、弱い者は見捨てられていた。だから、金のある奴からは何でも応えて金を稼ぎ、救いが必要な人達を救う。偽善だと罵られようが、必要とされる以上やり続ける。
しかし、最近はSUDOUが勢力を強め殆どの依頼が武器化改造となっている。
抗争が激しさを増せば、また弱者が被害を受ける。そろそろ潮時だと思うが、今は居なくなるわけにはいかない。
そんな中、SUDOUの対抗勢力として現れたのが「BAINNE」だ。YURIが救った人達を比較的安全な場所に送る役目を担ってくれている。彼女達もまた、弱者の救済を目的としていたのだ。
彼女達に協力する事でこの世界のバランスが保てると思い、彼女達の改造を請け負う事を決めた。しかしそれは、危うい立場に自分を追い込む事になりかねない事も事実だった。
そして、SUDOUが勢力拡大を図りBAINNEに圧力をかけてきた。MELは、YURIを心配してアジトに囲ってくれた。若い彼女達を兵器化して行くのは心苦しいが、今はこれしかない。いつかは、消えて無くなる身なのだから…

        *****   *****

最近、元締めは変わった。原因はあの『BAINNE』だと確信している。彼女達が現れる前までは、自分が1番の側近だと自負していた。が、あのグループと関わる様になってからは疎まれつつある。現に、些細な事で罵声を浴びせられ、召使いの様な扱いだ。唯一の救いは、最近偶然出逢ったある女性が居て、境遇が似ているのもあって一緒にいると気が安らぐ、そんな人に出会えた事だ。その女性は「SAYU」と言う。SAYUはBAINNEと敵対しているSUDOUの娘だった。これが元締めに知られれば反逆行為と言われ兼ねない。だが、チャンスでもある。SAYUから何らかの『SUDOU』の弱みを握れれば、信頼を回復できる。そしてそのチャンスが訪れた。
SAYUから父親の悪事を止めたいから協力して欲しいと相談されたのだ。最近、今までに無い物々しさで武器を大量に集めたり、アンドロイドのプログラムを戦闘型に書き換えたりしていて急に不安になり相談したそうだ。武器を収納しているシェルターから武器を運び出してしまえば諦めるだろうと思っているらしいが、その武器が相手方に渡ればSUDOUは終わる。

地下に至る暗い階段に2人の足音だけが響いていた。
「ここよ…」
地下シェルターの扉の前に立ち止まり振り返った。扉を開けようとしたSAYUの手を私は押さえていた。
「良いのか?この扉を開ければ君の父親は終わる」
SAYUは複雑だろう。
正義の為とは言え、父親を追い込む事になるのだから…
「いいの…もう終わりにしたい」
手を離すと、小さく金属のきしむ音がして扉が開き彼女に続いて中に入った。
バタンと扉が閉まり沈黙が少しあって照明が点灯した。
「これは…どう言う事だ!!」
シェルターの中には何1つない空間が広がっていた。そして、後ろを振り返った自分の目の前には驚愕の状況があった。
彼女が、SAYUが銃口を真っ直ぐ自分に向けていた。
その瞳は、とても悲しい…そしてせつなかった。
「SAYU…?」
握りしめた『S&W M29 4インチ』は微動打もなく素人とは思えなかった。

「ごめんなさい…」

「どう言う事だ!SAYU!」

「傭兵だけではBAINNEの動きは掴めても、背後にいる元締めの動きは解らないから貴方に近づいたの…でも、そろそろ必要価値がなくなったみたい。直ぐには始末しないわ…駒としてはまだ使えるから」

そう言いながらリモコンのボタンを押した…

「えっ?!なぜヒューマノイドは出て来ないの?!」


シュッ!


「ツッ!!」

風切り音と共にSAYUのM29が転がった。手首には投げ針が刺さって煌めいている。

「チッ!誰?!」

SAYUは刺さった針を抜きなが周りを見渡した。手首から一筋の血が流れた。

バチバチッ!

右手にスタンガンを持って現れたのはMAIKAだ。

「ヒューマノイドは私の魅力に痺れてオネンネ中だよ。その男を返してもらうよ」

「何っ?!」

「動かない方がいいよ。次は針ではすまないから」

視線を送った先ではMIUがクロスボウを構えていた。MAIKAは転がっている銃を拾い上げた。

「女性が持つような代物では無いな…それもリボルバー」
その時何処かでカチッとスイッチが入った音がした。排気口から白い煙が噴き出した。
「しまった!MIU、Mを連れて表に出て!!」
辺りは霧で覆われたようになり様子を伺う事ができず、MAIKAは後退りしながら出口まで来て、出る寸前にリボルバーを床に滑らせ速やかに扉を閉めた。
外に出るとMIUがMの腕を掴み佇んでいた。
「MAIKA!大丈夫?」
「毒ガスなら危なかったけれど、ただのスモークだったようね。一度戻ろう」
「この男は、どうする?」
「アジトに連れて行く。確保出来れば諜報部にと、SEACHTに言われてる」
「了解した!」

        *****   *****


アジトの近くまで来た時、AMIGAは知った顔の女性が立っているのに気がついた。
「たしか、MELの知り合いの…」
女性はAMIGAに気がつくと笑顔を見せて近づいて声を掛けた。
「御機嫌よう〜MELは忙しいかしら?」
「MEL ?朝から出掛けてまだ帰ってないんじゃないかな〜?」
「そう…皆さんも忙しそうね」
「私達は待機中で暇って言えば暇かなぁ?」
「では、またの機会にするわ。さよなら」
そう言うと、女性は路地に停めてあった赤いマスタングに乗り込み走り去った。
「マスタング?この前は黒塗りの車だった様な…ま、いいか」

アジトに戻るとMEL は戻っていて、諜報部のSEACHTと話していた。
「諜報部の見解なら間違いはないだろうな。しかし、SAYUに傭兵とは本気度MAXだな」
「そうね…今、傭兵の素性を調べさせている」
「うむ…AMIGA、どこへ行っていた?今はあまり出歩くな、危険だぞ」
「ああ、すまない…ちょっと餌の調達に。あ、そういえばこの先でMEL の知り合いのお嬢様だっけ?その人に会ったよ」
MELは驚いた様にAMIGAを見た。
「何?!何か言ってたか?」
「うん…MELは忙しいかしら?皆さんも忙しそうね?って」
「まさか真面に答えてないよな?」
「え…?いや…MEL は朝から出掛けている事と私達は待機中だって事を…まずかった?」
MELは顎に手をやり考えていたが、突然SEACHTの呼び出し音が鳴り響いた。
「うむ、わかった。送ってくれ」
会話が終わるとすぐにMELに話しかけた。
「傭兵がSAYUと会っている所が撮れたそうだ」
「モニターに映してくれ」
画面には2人の女性が向かい合っている姿が映し出されている。MELはすぐにRINCEを呼んだ。
「RINCE、すぐにメインルームに来れるか?」
SEACHTがそれを聞いて尋ねた。
「詳しいのか?」
「ん?ああ、RINCEも元傭兵だからな」
扉が開きRINCEが部屋へ入って来た。
「出動?」
「いや…傭兵の顔が割れた。解るか?」
モニターに視線を向けると迷う事なく答えた。
「いつもの顔と少し違うがNARUに間違いないな」
「スキャニングか…早速こちらにご挨拶に現れたらしい」
「では、私も偵察がてらご挨拶に伺おう」
「頼めるか?気をつけろよ」
「了解した」
RINCEが退出するとSEACHTが不機嫌そうにMELに不満を漏らす。
「おい、実働部隊の仕事ではないだろう」
「実はRINCEとNARUは長い間行動を共にした親友なんだ、今回は言葉の通り挨拶するだけの様子見だ。接触の際、SAYUがお出ましとなる可能性もある。諜報部でRINCEの護衛を頼みたい。武器は持参しないだろうからな」
「そうか…了解した。MIUをつける」


        *****   *****

バイクの低い排気音が聞こえる。
「来たな…」
ブラックの大排気量バイクがリアをロックさせ、フロントを滑らせUターンする形で停止した。
「相変わらず息もつかせない登場ね…MAMI姐さん」
「NARU、久しぶり」
黒いレザーのライダースーツで黒のヘルメット。そのヘルメットをとると綺麗な長い髪が流れる。
「姐さん、仕事の依頼なら…」
「いや、請負中なんだろう?そこは承知している。今回、交わることになるだろうからご挨拶だよ」
「交わる?やはり…たしかスナイパーが……RINCE …」
バイクに寄りかかりながらゆっくりと答えた。
「今はそう呼ばれてる」
「BAINNEの一員?姐さんがグループに所属しているとは思わなかった…」
「色々あってね…。NARUが雇われたみたいだから、後々私との関係を疑われる前にご挨拶しておこうと思ってね」
「ふふっ、姐さんらしい気の使い用だね。狙われる危険もあるのに…当然武器も持って来てないんでしょ?」
「まあ、護衛はいると思うが」
そう言ってニッコリ笑った。
「あまり長話をしていると疑われるからな。現場で対峙した時は遠慮しないよ」
「いよいよの時は姐さんの弾丸でENDしたいな…ふふ」
「Naru、自分の命を…」
「粗末にするな!…でしょ?わかってる。じゃあ」
「ああ」
Naruは停めてあったムマスタングに乗り込み去って行った。
RINCEはそれを見送った後、少し離れた廃墟となったビルの陰に声をかけた。
「MIUありがとう」
すると、ニッコリ微笑みながらゆっくり女性が現れた。
「バレた?」
「気配でね。クロスボウか?」
「音の出る物は好きじゃない…後は大丈夫?戻るよ」
「ありがとう。敵の気配も消えたみたいだから…私も戻るよ」
それを聞いてMIUは、片手を上げながらビルの陰に消えた。

        *****   *****


「どういう事ですか?!手続きだけしろとしか聞いてません!私1人では心許ないという事ですか?いえ、逆らう訳では…はい…はい…わかりました」スマホを切った後、ハンドルを叩いた。SAYUは納得出来なかった。傭兵を手配したから協力させろと上から命令されてイラついていた。今まで全て1人でこなしてきた。なのになぜ…
「ねえ、開けてくれない?」
助手席側の窓から女性が話しかけた。
ホットパンツにダークグリーンのロングコート、すらりと伸びた脚は黒のストッキングが映える。そして端整な顔立ちに艶かしい真紅のルージュ。カールの効いたロングの髪は逆光で金色に透けていた。
SAYUは無言でドアのロックを外した。
「どうも」
その女性は、助手席に座ってSAYUを見つめた。
「言っておくけど、あなたの仕事を邪魔するつもりはないし出しゃばるつもりもないわ。あなたの仕事に必要な情報収集と実戦援護…それが契約した内容。雇われの身だから、それ以上でも以下でもないわ」
「わかってる…私はSAYU」
SAYUはダッシュボードの上からノートパッドを取り膝の上に置き、目を通しながら話しかけた。
「あなたは、通称NARUと呼ばれる傭兵ね。顔写真が少し違うけど…」
「そうね…今はその名前とこの顔がメインで活動しているの。顔や名前はその時々で変わる。射撃は…まあ、そこそこ。ハンドガンが得意ね。そんなところかしら?」
SAYUは、身を乗り出して後部座席からジュラルミンのアタッシュケースとボストンバッグを取り出しNARUに手渡した。
「必要と思われる物は揃っているはず。もし足りない物があれば用意する」
NARUは黙ってケースを開けた。
型抜きされた保護材に、ハンドガン・予備のマガジン2本・サイレンサーが収められていた。
「BERETTA M92Fか」
「ボストンバッグには、弾丸50発入りケースが3箱・ホルスター2種類などが入ってる。あと、スマホは連絡用。地図に登録されている場所が、あなたが自由につかえるシェルターの位置よ」
「了解した。早速シェルターに向かうわ」
SAYUは懐からカードを出してNARUに手渡した。
「シェルターのカードキー。支給される車のキーでもあるわ。車はシェルターに併設されている車庫にある。数台あるからご自由に」
「ありがとう」
NARUは車を降り、バッグの中からスマホを取り出し歩き出した。
それをバックミラーで確認するとSAYUはスマホを手にした。
「手続きは終わりました。はい…早速向かいます」
連絡が終わるとタイヤを鳴らし車は立ち去った。


        *****   *****