執着とも言えるレベルで諦めない、涼しい顔をしてやるべきことをやってのけるアイツら。

なぜアイツらはあのように自分を律して淡々と努力できるのか。また彼らの脳はどうなっているのか。


朝起きたら無意識にスマホを開いたり、歯を磨いたり、毎週決まった時間にジムに行ったりというのは、習慣化されていて、体調が悪くなければ比較的エネルギーを使わずに実行できる。

しかしそれらは、あくまでも習慣である。


大切なのは自分の衝動や本能に逆らって行動を選ぶ力だ。

今日は疲れたけどジムへ行こう。甘いものを食べたいけど我慢しよう。あともう少し集中してこの仕事をやり切ろう。

これらを意思力と呼ぶ。


言い換えれば、習慣は自動操縦。意思力はマニュアル操作。

だからこそ、意志力は習慣に比べて圧倒的にエネルギーを消費する。


何事も習慣化すれば簡単だと言われる。確かにそれはそうだが、意志力が必要な瞬間を乗り越え続ける必要があると言える。


脳の研究で、ある部位が私たちの特定の能力に影響を与えていると断定できるケースはあまりないと言われている。

しかし、多くの研究において、ある一つの脳領域が意思力や粘り強さの基盤になっていると示されていることが分かっている。


その部位の名前は前部中帯状皮質(AMCCと呼ばれる領域。


難しい課題に取り組んでいる時、不快なことを我慢している時、このAMCCが活発に働くことが分かっている。

このAMCCの働きの強さや大きさがその人の粘り強さや意志の強さを決めている


肥満の人やうつ状態の人のAMCCは小さく、活動が弱いことが分かっている。

逆に元気で長寿な高齢者や、アスリートたちは、この部位が大きいというデータもある。


スタンフォード大学のジョーパービィ博士の研究によれば、このAMCCを直接刺激した直後、人は大きな課題が目の前にあっても自分なら乗り越えられると感じることが分かっている。


困難に立ち向かう力、前に進む力。

ダイエット中に食事を我慢する時、仕事中にスマホを見るのを我慢している時、普段より長く勉強を続ける時。

こういうやりたくないことに挑んでいる瞬間に、このAMCCが活性化している。


もし運動習慣のない人が筋トレを始めるとする。最初はキツイな嫌だなと思って取り組むことで、AMCCは強くなっていく。

しかし、やっているうちに楽しくなってくるとAMCCの成長は止まってしまう。

つまり、AMCCが成長し続けるためには常に嫌だと感じることをやり続ける必要がある

もちろんこれは簡単なことではない。

しかし、これはどんな状況でも自分に負けない力が身につく。

仕事での困難も、運動の苦しさも、ストレスも、全部に粘り強く取り組める力がつく。

これが、AMCCを鍛える最大の価値である。


AMCCは生まれつきの差で決まるわけではない。

後天的に手に得られるスキルだ。

脳に損傷がない限り、誰でもこの領域を成長させることができる。


睡眠不足、強いストレスを抱えていたり、慢性的な痛みや不安を感じているとき。

こうした状態では交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、心身がこれ以上頑張れないという信号を発しやすくなる。

その結果、意志力が発揮できなくなる。

逆に、睡眠が取れていて、呼吸も落ち着いている状態であれば、意志力を発揮する余裕は大きくなる。

だから意志力は精神力だけの問題ではなく、体のコンディションも切り離せない。


AMCCはドーパミンとも深く関係している。

苦しいことを通してAMCCを活性化すると、ドーパミンにアクセスするための別の扉が開くことがある。

ポイントは努力を通じて脳に学習させることにある。

例えば、勉強するときに「これはキツイけど自分にとって価値がある」と言い聞かせながらタイマーをセットして強制的に勉強する。するとそれが達成感に繋がり、勉強することが楽しくなる。


痛みと報酬は一見真逆に見えるが、自分の意思で痛みに立ち向かい、乗り越えることで達成感やゴールへ近づいている感覚を感じる。それらがリンクする体験を得られれば、脳はその痛みをただの苦しみではなく、報酬への道として認識し始める。

この理想やゴールに向かって自分が正しい道を進んでいると認識できるとき、ドーパミンは分泌され、私たちの行動を促すこともある。

これは神経可塑性と呼ばれ、脳は後天的に書き換えることが可能なのだ。