日も暮れる夕刻
新しい免許証を手にして
鴻巣試験場からバスで東松山駅へ
荒川を超える27号線は道幅が狭く
スレスレで行き交う貨物自動車と乗合バス
よくこの道をバスが走れるものだと感心した
夕焼けに照らされて田舎の田園風景が広がり
民家ひとつひとつはやや大きめな造りだった
これが本物の農家さんってやつだと
覗き見るように視線を走らせた
そこから東武東上線で小川町を経由して
列車はだんだんと山の中へ入っていく
木と木の間を列車がごとごと走っていく
窓から見える広い青空と白い雲はどこか
小説に描かれているような情景だった
時間の流れがゆったりとしていた
なんて綺麗な、澄んだ青なのだろう
これが、寄居駅か
いつか訪れてみたかった駅である
1時間に1本あればいいほうのようだった
これは計算違いだった
待っていたなら日も暮れるので
駅前に並んだタクシーで牧場に向かう
その住所ってったら◯◯牧場じゃないか?
あそこの代表は◯◯さんってひとだよね?
おたくはそこのひと?関係者さんかな?
は、はぁ、そうです
いえ、違います、まぁ
関係者、です、用事があって、はぁ
田舎のタクシー運転手さんは
こうも首を突っ込んで聞いてくるのか
今日は訪問の約束はしていない
こちらがただ近くまで来たものだから
日が暮れる前に牛だけでも見られたらいいな
ただただ怪しかっただろう
日が暮れていく
暗くなって牛が見られなかったなら
こんな山奥のところまでわざわざタクシーで
なにをしにきたのだろうかわからなくなるなぁ
気を遣ったのか遣っていないのか
入り口の少し離れた場所で停めてくれた
遂にここまで来てしまった
少し遠目から見学するだけしてすぐに帰ろう
たった20分ぐらいだっただろう
ちょうど夜の搾乳をする時間だったと思う
トラクターが行ったり来たりしていた
ただそれを遠目から突っ立って眺めていた
牛のモォ〜!モォ〜!という鳴き声が響き渡る
あそこにきっと大きな牛たちがいるのだ
今日はもうこれで帰ろうと歩き出すと
道路沿いにある牛舎に子牛たちがいた
止まって見ていると、こっちに寄ってくる
まるで挨拶でもしてくれたかのようだった
人間の勝手な思い違いだろうが
わざわざここまで来て良かったのだと思えた
子牛からすると、やはり怪しかったのだろう
そこから最寄り駅まで20分は歩いた
先に駅までの道のりを歩く外国人がいた
電車口の声を聞くなり、ベトナム人だろうか
彼女が電話をしながら先を歩いていたおかげで
真っ暗で車しかいない帰り道も心強く歩けた
ゴゴゴゴゴォ!!!
席が向かい合ってボックス席になる
その4人掛けに1人で座るという感じだ
これは北海道の帯広から豊頃町を通って
釧路までワンマンで走る根室本線に似ていた
この列車で再び寄居駅まで戻ると
そこからは秩父鉄道で熊谷まで出られた
なんだかんだで30分は列車に揺られていた
初めて出逢った人生で記念すべき日である













