「しなやかに伝える」~イライラをワクワクに変える~コミュニケーションワークショップ 実施報告 | 開発教育 あしたのきのう

「しなやかに伝える」~イライラをワクワクに変える~コミュニケーションワークショップ 実施報告

9月24日(土)~イライラをワクワクに変える~コミュニケーションワークショップ第3回「しなやかに伝える」を実施いたしました。

 

 

 

① アイスブレーキング
簡単なオリエンテーションと前回の様子を説明し、アイスブレーキングを行ないました。

※アイスブレーキングとは…ワークショップなど参加型の学びの場で、初めて会う人同士が話しやすい雰囲気を作るため、緊張をほぐすゲームや活動をすること。心や体を氷(アイス)になぞらえ、それを壊す(ブレーク)して溶かすという意味がある。

 

アイスブレーキングその1:「起きてから今までに感じた気持ち」をどんどん書き出してみる。
さらに、この1週間で感じた気持ちを書き出してみる。


とってもたくさん出たんですが、、、すみませんメモしておらず写真もないのです。

 

このアイスブレーキングの目的は、
・1週間や半日の間に、たくさんの「気持ち」を感じて暮らしているということに気づく
・気持ちに目を向けることが大切だと知る

一つ一つの気持ちに名前をつけ、「あ、私は今○○と感じているんだ」と思うだけで、少し心が落ち着くこともあるのです。

 

そしてたくさん出た気持ちの中から一つ選び「私は○○と感じた。なぜなら○○だから」と紙に書いて、2-3人で共有するというもの。


これは本日のメインテーマ「しなやかに伝える」の練習にもなるものです。

 

アイスブレークその2:「最近の対立について振り返る」。

1、 どんな対立だったか
2、 自分の反応
3、 何か一つ変えられることがあるとしたら

 

1つのグループでの内容はこんなでした。


コインランドリーを使ったときに、洗濯が終わる少し前に行って前で待っていた。時間が来て出そうとすると次に待っていた夫婦の妻の方が中身(私の洗濯物!)を取り出し始めた。「洗濯が終わって時間も経っているのに、取りに来ないで機械が空かないならまだしも、近くで待っているのになぜ人のものを出すのか」と言ったら、夫の方が「おい、なんか悪い事でもしたのか?」と(妻に向かってか私に向かってか分からないが)言った…。最終的には早く終わりにしたかったので、謝って出てきてしまったが、なんだかもやもやが残る。追いかけてきて「謝る必要なんてなかったのに!」と励ましてくれる人もいたとか。

 

ということについて。その場でいろいろと意見も出ましたが、「しなやかに伝える」は主に近しい人を対象にしています。とはいえ、もう二度と会わない(かもしれない?)人へ「しなやかに伝えたい」ことも多いですね。前回まなんだ「ニーズの下にある価値観」などを伝えあう関係性でもないですし…これは新たな課題として取っておくことにしましょう。

 

もう1つのグループではこんな出来事が共有されました。

 

旅行先で、父の具合が悪くて高速を飛ばした私。それに対して父が「危ないからスピードを落とせ」と言い、イライラしたという内容。
こちらについては、大変親しい間柄ですし、お父さんを心配しての言葉だったこと。お父さんもきっとスピードを出している理由を知らなかったのかもしれないですね。
「少し飛ばすからと、先に父に言えばよかった」という反省も共有されました。親しいからこそ恥ずかしくて言えない、、、ということもあるかもしれないですね。

 

さて。というわけでアイスブレーキングの割には結構ディープなオープニングを経て、本題に入ります。

 

アサーティブ①モデリング

 

しなやかに伝える=アサーティブ について考えるため、人が取りやすい態度を4つ示します。

 

1、 キレる
2、 ためる
3、 しなやか
4、 こもる・むっつり

 

そして、ある場面を演じてどの態度に当てはまるか考えてもらいます。


場面設定はこうです
「ご飯を食べる時、いつも落ち着きがなく、こぼしてばかりのNちゃん。今日も、手間暇かけて作ったご飯を、よそ見していたのでこぼしました。さて、どうする」

 

A何度言ったらわかるの!ちゃんと座って前を見て食べなさい!
Bだまって拭く
Cお母さん悲しいな。しっかり食べてほしいのに。何か嫌なことがあるのかな?
D恥ずかしいよ。そんな風に食べると。隣の子はちゃんと食べているのに、みんな困るよ。もう作らないよ?

 

答えはA-キレる、B-ためる、C-しなやか、D-こもる

 

Nちゃんを演じてくれたN子さんに感想を聞いてみると…。


Aのキレる態度は、反抗したくなる、目を背けたくなる態度、
Bのためる態度は、特に何も感じない。
Cのしなやか態度は、「あ、お母さん悲しいんだ」と思った。
Dのこもる態度は、対象が自分ではなく隣の子に行ってしまった感じがした。

とのことです。

 

キレる、ためるが解りやすいですが、Dのこもる態度はわりとやってしまいがち。これは気持ちや行動に「ねじれ」が発生している状態だと私は思っています。自分の子どもの事なのに、他の子と比較する。また、本当はしたくないのに、わざと「もう作らないよ」と言うことでいうことを聞かせようとする。このねじれはわりと発生しやすくて、さらに関係がこじれることにもつながるかなと思います。

 

アサーティブとは、相手の気持ちやニーズを尊重しながら自分の気持ちやニーズを伝える事。アサーティブに伝えることは権利であるが、対立の場面ではなかなかアサーティブになれず、キレるかためるか、はたまたこもるかのいずれかになる。アサーティブは解決のスキルであり、発信することが大切。言えば必ず解決するというわけではない。

 

いつわることのない、正直な気持ちのやりとりを通じてポジティブな気持ちをさわやかに伝えあう関係づくりを目指すことが目的です。

 

つまりは、やっぱり関係が近い人、関係を作っていきたい人が対象になるわけですね。

 

アサーティブ② アサーティブの練習
<歩き方で練習>
さて。演劇を見てもなかなかイメージがわかないので今度は自分で動いてみましょう。ということで、、、

「東京の地下鉄駅構内。朝のラッシュの時間です。キレる、ためる、しなやかの態度で歩いてみましょう」

 

キレる…ぶつかったり、ちっという舌打ちが聞こえました。前を向いていますが目を合わさずに歩いています。
ためる…下を向き、ぶつかっても「自分が悪い」と言わんばかりに「すみません」と弱弱しく声をかける姿も見られました。
しなやか…「ごめんよごめんよ」と自分が向かう方に向かって手を差し出す人、笑顔を交わす場面、道を譲る人、あっちに行きたいでーすと声をかける人

 

少しずつ、アサーティブが分かったかもしれないですね。次回は、「雨の日のバスの中。ものすごく混んでいます。自分が降りるバス停につきました。」という設定でやりたいなと思います。こういう日のバスの中ってためる人とキレかける人が多い気がしますので。

 

<ロールプレイ>
毎度恒例のロールプレイです。
※ロールプレイ…ロール(役割)をプレイ(演じる)することで、ある状況を設定して、その役になり切って演じてみる。


①Aさん:教師
Bさん:生徒

 

設定はこうです。1週間毎日、掃除をさぼって部活に出ていたのを見つけた教師のAさん。今日こそ伝えましょう。まずはキレる態度で。2回目はアサーティブに。

 

1回目のキレる態度では、生徒役のBさんが掃除をやるという展開になったペアはいませんでした。そして、2回目のアサーティブ。掃除をやる気になったペアが。

 

教師役のAさんが、部活を頑張っていることを労い、「掃除も、君がいないと!」と声をかけたそうです。掃除で頑張るBさんのスポーツマンシップを掃除にも生かしてもらったようですね。

 

 

 

お次のロールプレイは。。。
② Aさん:上司
Bさん:部下

 

設定はこうです。30分後に自分がプレゼンをしなければならない会議の資料の用意で忙しいBさん。そんな時、上司に「これ、コピーお願い」と頼まれた。コピーくらい自分でしてほしいと思っているがとにかく今は時間がない。まずはためる態度で。2回目はアサーティブに。

 

1回目のためる態度では、上司にコピーをつきかえしたペアはいなかった様子。あるペアでは、「とにかく今は時間がない」ので、さっさと引き受けてコピー機にセットする…という展開になるところも。なるほど。。。

 

2回目のアサーティブでは、上司に要求を返したペアが出てきましたね。ポイントを聞くと、今がいいのか、1時間後でいいのかを部下が上司に聞く。さらに、1時間後ならできますが今はできませんと、断りやすく提案したということです。
また、まず部下の方から、上司の目をじっととらえ、臨戦態勢!というペアも見られました。

 

アサーティブに伝えるために工夫したことを聞いてみると。。。


教師と生徒の場面:
優しい感じで
頭ごなしに叱らない
たくさん質問をした

 

上司と部下の場面:
気分を害さない言葉づかいをした
してほしいことを確認、事情を伝える
考える時間を相手に与える

 

ということでした。

 

ちょっとブレイク。お子様たちの様子

 

休憩を挟んで後半です。

 

アサーティブに伝えるために、DESCという手法を紹介しました。


D:Describe描写する、事実を述べる
E:Express表現する、気持ちを伝える
S:Suggest提案する
C:Choose選択肢を与える

 

D:対立の場面では、ついつい客観性を失ってしまいます。例えば、「あなたって、いっつもそう」と、いつもでなくても言う。「今日あなたはこうでした。」と事実を伝えよう

 

E:自分の気持ちを伝えるのはちょっと照れるかもしれないですね。「大切なんだよ」という代わりに「どうしてこんなことするの?」とまず責めてしまう。自分の気持ちを正直に伝えよう

 

S:聞いている相手が逃げ場がなくなってしまっては、キレる態度に。反対に、自分の逃げ場がなくなってしまっては、ためる態度になってしまいます。勇気をもって提案しよう。

 

C:Sにもつながることですが、もしその提案が受け入れられなかった場合いくつも楽しい選択肢を用意しよう。相手を脅かすものはNGです。

 

先ほどの2つのロールプレイにおいて、アサーティブの場面ですでにDESCが使われていました。コピーを頼まれたけど、「1時間後ではだめですか?」と提案する。そうすると「じゃあ、他の人に頼もうかな」と相手の方から選択肢を出すこともあります。

 

ワークショップの最後は、「私メッセージとあなたメッセージ」
主語が「あなた」なのか、「わたし」なのかで出てくる言葉が大きく変わってきます

 

① 部屋を片付けない友達
② 待ち合わせに遅れた彼氏
③ 順番抜かしをする年上女性

 

これを、まずはあなたメッセージで考え、次に私メッセージに言い換えるという作業を個人で行いました。できたところでシェアをすると。。。

 

① 部屋を片付けない友達


あなたメッセージ:
―部屋、汚くない?
―あなたって散らかってても平気なのね
―こんなに散らかっててよく使いたいもの見つけられるわね
―いつも散らかってるよね

 

わたしメッセージ:
―私そっちやるから、あなたそっちやってよ
―掃除したほうがいいと思うよ
―もう少し片付いている方が私は気持ちいいな
―リフレッシュしたらどうかな?

 

いかがでしょう。もしもあなたが、あなたメッセージで言われたら。。。

 

② 待ち合わせに遅れた彼氏


あなたメッセージ:
―もっと早く来られるんじゃない
―また遅れたね
―今何時か分かってる?
―連絡なしで待たせて平気なのね

 

わたしメッセージ:
―早く来ないかなってずっと待ってたの
―事故に遭ったかと思った。。。よかった
―大丈夫?なにかあったの?

 

どうでしょう。もしあなたが、わたしメッセージで言われたら。。。二人の仲は深まりそうですね。

 

③ 順番抜かしをする年上女性


あなたメッセージ:
―順番間違えてない?
―みんな並んでるんですよ

 

わたしメッセージ:
―実は列があるんです。。
―私もしんどいし、みんな並んでいる
―私も並んでいるんですが。。。
―がまんできない。。。(トイレ?)

 

よくある、、こういう場面。大抵は何も言わないけど、わたしメッセージの最後のなんか、リアルですよね。我慢できないときに順番抜かしされた日には!!!

 

書いていてどんな気持ちがしたか聞いてみると


あなたメッセージ:自分だけイライラしてきた。攻撃的な感じ。


わたしメッセージ:相手のことを考えている。気持ちを伝えている(相手の気持ちを前提として)。やんわりと言えている。丸く収まる

あなたメッセージと比べることで、より私メッセージのアサーティブなところが分かったかなと思います。

 

あなたメッセージでいつも伝えていると、なかなかすぐに、わたしメッセージに言い換えるのは難しいかもしれません。
慣れが必要ですが、不可能ではありません。こんな風に、シチュエーションを設定して、まずは文字にして練習することも効果的かもしれないですね。


あなたメッセージで伝えてしまったなと思ったら、どうやってわたしメッセージで言えただろうかと、振り返るだけでも、きっと次には違う、もっとしなやかな自分になれるかもしれません。

 

参加してくれた皆さん、ありがとうございました。

 

次回は同じ会場で年明けの1月14日(土)に実施します。次回はついに最終回!いよいよ「問題を解決する」の回です。対立がきっかけと気づき、自分の怒りや気持ちも大切にしながら、しなやかに伝えるところまで来ました。とはいえ、伝えれば問題が解決されるとも限らないし、問題はとにかく解決すればいいというものでもありません。皆様の参加をお待ちしています。

 

※このワークショップは「子どもとできる創造的な対立解決―実践ガイド―」(モーニングサイドセンター 編、開発教育協会 編訳・発行)を参考に実施しています。

 

<アンケート結果>
満足度
120:
・予想の上を行くワークショップでした。
100:
・改めてアサーティブの表現が意識化されました。
・ロールプレイすることで納得度を高めることができたから、参加した方々と交流ができたから
90:
・自分の傾向がつかめたのと、今日から実践できる方法も知れた
・あっという間に時間になってしまったのが残念だった。

 

分かったこと
・相手に対して、しなやかに自分の気持ちを伝える方法
・感情にも種類があること。
・言い方1つで相手を攻撃的にもさせ、好意的にもさせること
・あなたメッセージ、わたしメッセージを比較することで、わたしメッセージの良さがよく分かった。自分の気持ちを言いすぎない方が良いような気がしていたが、うまくメッセージにこめていくことで、あなたメッセージよりしなやかに伝わると思いました。
・常々「対立」をスルーして、または、飲み込んで過ごしている。アサーティブに表現するのには、練習がたくさん必要。
・自分の無意識部分。とその行動。アサーティブのやり方

 

その他
・夫にためしてみます
・今日も楽しかったです。ありがとうございました。
・今日も様々勉強させていただきました!