Can Can 1990年5月号

カールスモーキー石井〈米米CLUB〉

本名石井竜也 1959年9月22日、茨城県生まれ

乙女座文化学院美術科卒業。同学院の仲間を中心に米米CLUBを結成 1985年10月にシングル

『I・CAN ・BE』とアルバム『シャリ・シャリズム』でデビュー。ボーカルと司会を担当。

[米米クラブを家庭にすると、ボクは隣のお邪魔虫かな]

米米クラブのメンバーは総勢8人。かなりの大所帯ファミリー。その米米を家庭にたとえると

カールスモーキー石井さんは？

「ボクは隣のお邪魔虫かな(笑)。子供のころ近所に必ずいたでしょ。食事してると上がり込んできて、いつのまにか〝うまいねー、これ〟なんて言って、人んちのもの食べてる(笑)。

〝あ、オレ、そろそろ帰らなきゃ〟とか言ってサ、で、よく見たらうまいものばっかり食べちゃってる(笑)。〝ああいう人が来るのはゴメンですよ。お父さん今度言いましょうよ〟なんて家族が言ってるとサ、急にお酒持ってきちゃう。カンが鋭いんだよね。で、家族は言えなくなっちゃう(笑)。そういう人いるでしょ。絶対損しないヤツが。ボクはそういうヤツです(笑)

[レコード出すなら3枚組で、セックス、ディスコ、両親編ね]

「レコードなんぞグッズのひとつ」とはライブに命を賭ける(⁉️)彼ならではの発言です。

「米米はライブで遊んでいるのに、レコードでは遊んでねぇなという気がして、ボクはつまんないですね。例えば3枚組を出すんです。1枚目はセックス編で、セックスするときに聞いて頑張る…と(笑)。2枚目はディスコ編で、パーティーのときにかける。3枚目は両親編でお父さん、お母さんと聞こうとかね(笑)。童話みたいなメロディーで、オーケストラをバックに〝お父さんと一緒にお風呂に入ろうよ〟〝私もう毛が生えてるの〟なんてね。それを冗談で軽くやるんじゃなく、必死でやるから面白いんだと思う。本当の冗談になったらつまらないからね。

〝キスをしているわけじゃないの、唇をつけてるだけ〟とか、童話にしてみると面白いじゃない？」さすがユニークな発想。夢追人ですね。

「ええ、夢見る30才という感じですね。ちょっと気持ち悪いんですけれども(笑)。ただボクものをつくれるという才能は持ち合わせているつもりはあります。だからプロなんですね」

[チチの一部分がハハにくい込む、それがタローの定義]

「ボクらは、あくまで踊れる、ノレる、みんなで楽しめるというステージを考えてますが、ただ騒ぐだけじゃなくて、そこに定義とか哲学とかが見え隠れする。ちょっとアタマがいいっぽく見えたりするでしょ(笑)。例えば今回のツアータイトルは〝タロー〟。で、タローの〝チチ〟編が1日目だとすると、その一部分が、2日目の〝ハハ〟編にくい込んでしまうんです。チチの一部分がハハにくい込んでタローが生まれる、ってこもなんですねぇ」パーフェクトな芸に哲学アリ、ですね。

「米米のステージは、ナニが起こるかわからない。それを大事にしたいと思ってるんですよ。ボクはステージでたくさんしゃべりますから、それで、今回はこういうことをやってるのか、ということがわかると思うんです。それで、わかってくれればいいと思うんですね」

[ボクは人間関係がヘタというか、つきあいがうまくない]

先ごろ、週刊誌で恋の話を取りざたされたことが、彼の心に大きな影響を与えたようだ。ポツリポツリと、かみしめるように話す彼の表情が、その名残を少し残している。が、どうやら今は、それも乗り越えた様子。

「人に対して、ずいぶん考え直すところがありました。自分では誠意を持っていて、一生懸命やっているつもりでも、相手には伝わらなかったり、傷つけたつもりではないのに、相手は傷ついていたりとか、そういう誤解って、いっぱいあるでしょ。ボクは人間関係がヘタというか、つきあいがうまくないんですよね、きっと。今は、とにかくいろいろ考えたいですね。今まで、すごい勢いでいろんなことをやってきて、よし、これからだと思っていたところだったし、有頂天になっていたところもあったんですね。そこにバッと水をかけられて、頭を冷やせと言われたような気がしました。これで、もう一度、自分自身に立ち返って考える時間ができたと思ってます。マスコミ不信というか、そんなことで自分を落としたくないし、下等な人間にもなりたくない。それより今は、自分の内側をもっと把握できるよう前向きに頑張っていこうと思っています。」

[ボクには華があるんです]

「ボクは、あまり原色は着ないですね。渋い色がけっこう好きです。子供のころから、ブラックの絵が好きなんですが、彼の絵のような色合いというのかな。くすんだ感じが好きですね。ボク自身のファッションについていうと、こうして取材などで人と会うときは、きちんとしたいと思ってます。これはビジネスの基本だと思いますね」

「女性のファッションは、よく、夜の女風は嫌だという人がいるけど、ボクは似合ってればいいと思う。自分のキャラクターがちゃんとファッションに反映されている人は、お洒落がうまいと思います」

[ピラニアが怖いから、ピラニアばかり描いていた]

引っ込み思案でデリケート、多感で空想好きだった石井少年。いつも絵筆をとっていた祖父がいたという家庭環境で、彼の才能は育まれた。3才で絵を描き出してから、常に絵は彼の自己表現のひとつとして存在していた。

「小学校2年のころかな。子供の雑誌にアマゾンの奥地でピラニアが、水の中から飛び出して食いついてる絵があったんですよ。それが怖くてね。怖い怖いと思ってるうちに、ピラニアの絵を描き出していた(笑)。そのころはやたらピラニアを描いていたんですよ。うまかったですよ。それがボクの絵を描く原色みたいですよ。ピラニアが怖くて海にも入れなかったんです。茨城の海にいるわけないのにね(笑)いるような気になっちゃったんです(笑)」

[今度のオフはヨーロッパで美術館巡りでもしてこよう]

「今度、休暇がとれるんで、ヨーロッパに行ってこようと思ってます。美術館巡りをして、絵でもちょっと見てこようかなと思って…。フィレンツェに行きたいと思ってます。一度も行ったことがないから。それにローマも行きたいですね。ヨーロッパに行って絵を見たいっていうのは、ボクの子供のころからの夢だったんです。それに、次のステージやバンドの展開を考えたいし、ステージに関する資料がヨーロッパにはいっぱいあるんで、ちょっとリサーチしたい。美術館に行ったり、演劇を見たりして、雰囲気をつかんでから考えたいなと思ってます。期待してほしいですね」