明星1976年9月号 切り抜き


アグネス・チャンは芸能界を引退し、9月新学期から、カナダの大学に入学することが決まった。このため彼女は、7月7日夜、香港からロンドンに向けて出発。パリ・ローマを経由して、大学入学申請のため、7月20日すぎにはカナダのトロントに入る。
そこで、彼女がロンドン行きの飛行機に乗る直前、空港で最後のインタビューを行い、あわせて、日本のファンへの〝メッセージ〞を受けとった。このとき彼女は、話がファンのことに触れると、悲しそうな表情を見せ、ふと泣きだしそうになった。……


Q 日本でも引退と復帰の情報が入り乱れて、一時混乱してたけど、いまのアグネスの気持ちは?

A  とにかくファンの人たちには、悪いと思ってます。ホントに、ゴメンナサイ…。アイリーンたちとフィリピンに旅行(6月26日~7月3日)してたけど、ワタシはずっとホテルの部屋にいたよ。いろいろ悩んで…。夜も眠れなくなっちゃった。ファンや友だちのこと考えると、涙が出てきて…。でも、こっち(香港)の記者会見で話したこと(芸能界を引退して、カナダに留学すること)は、ぜんぜん変わってないよ。1年がかりで結論出したんだもの。

Q  上智大学では、心理学をジックリ勉強できないっていってたけど、それが原因でカナダに?

A  それだけじゃない。香港は、イギリス系でしょ。それで、大学もイギリス系の国の学校を卒業しないと、香港では認められないの。ソフィア(上智)もICU(国際基督大学)も、アメリカ系だからダメなの。このことわかったの、1年前ぐらいね。カナダなら、イギリス系で、トロントに兄さん(ポール)もいるし、ちょうどいいの。


Q  アグネスのパパも「なんとか、大学だけは行かせたい」って言ってたよ。

A  ウン。ワタシ。8月20日がくると、21才でしょ。香港では、21才が日本の〝成人式〟になるのね。自分の道を、自分でハッキリ決めなくちゃいけないの。それと、ワタシの家は、なんていうのかな、男でも女でも、大学まで行くようになってるの。ずっとムカシから、決まってるの。兄さんは、トロント大学出て、いま会計士やってる。アイリーンは、学校好きじゃないから、女優やってるけど。その下の姉さん(ヘレン)は、香港大学の医学部出て、いまはインターンよ。ワタシも、やっぱり大学、キチンと卒業したいの。それに、心理学が、すごーくおもしろいんだもの。もっとくわしく勉強したいよ。日本にいて、正式な大学卒業資格も取れれば、ワタシずっーといるよ。ホントに。とってもつらいよ、ファンの人と別れるの…。

ファンのことに触れるときは、いかに悲しげで、いまにも泣き出しそうだったアグネス。しかし、自分の決心に話が及ぶと、ハッキリと断定的に、力強い調子になった。


Q 大学を卒業してから、何をするのが夢なの?

A  ムリかもしれないけど、できれば博士号とりたい。何年もかかりそうだけど、アグネス、ぜったいがんばりたい。そして教授か、小学校の先生になりたいの。それがムリでも、子供たちいっぱい集めて、幼稚園開きたいな。ワタシ、子供好きだから、子供たち教えたいの。わがままかもしれないけど、わかってほしいって、ファンの人たちに伝えてください。

Q 日本では一時、税金の問題(85%も取られているアグネスが語ったというもの)や、男性関係が話題になったけど?

A (笑いながら)男性関係?あ、ボーイフレンドのこと?ワタシ、そんな人いたら、カナダ行かないよ。週刊誌載ってたの⁉️ 初めてよ、そんなこと。どんなこと書いてあるのか、ぜひ読んでみたいね。…税金のことなんて、ワタシは何も話してないよ。ほんとに。お金は、あったほうがいいけど、いまは関係ないね。ただ、キチンと大学行きたいだけよ。

女性自身雑誌1976年切り抜き

Q 8月10日には新曲『夢をください』が発売されるし、NET 系のレギュラー・ドラマ『新・二人の事件簿 暁(あかつき)に駆ける』も7月27日から始まるけど?

A (しばらく考えて)歌は、やっぱりみなさんにきいてほしいですね。ドラマは、とても楽しかったけど、これからは、もう、出られないみたい…。

Q 8月に〝さよならコンサート〟を行うっていうけど、どんな内容になるの?

A いまは、ぜんぜんわからない。日本のファンに、とにかく一度は会っておわびしなくちゃいけないし…。でも、ワタシ、ちゃんと歌えるかどうか…。それに、何とあいさつしたらいいか、わからない…。

女性自身雑誌1976年切り抜き

Q これからも、休暇のとき、あるいは休暇をとって、日本でコンサート活動をすることはあるの?

A  それも、ちょっといまはわからない。できるだけ、そうしたいけど…。ことし中は(8月を除いて)もう日本には行けそうもないね。

Q  ロンドンに行ったあとは、どうするの?

A  ロンドンから、アイリーンの友だちがいるパリ・ローマに寄って、7月20日すぎにはトロントに行くの。いまも兄さんと奥さんがいるし、2才になったばかりのベビーにも会ってくるの。いちばんの目的は、大学に入学申請をすることね。トロント大学など、3つぐらい、いま考えてる。

女性自身雑誌1976年 切り抜き

Q トロントは、1974年2月に明星の仕事で一緒に行ったけど、すごく寒かったね。大丈夫かな?

A それも心配だけと、これまでの(香港で13才で歌手活動を始めてからの)7年間とぜんぜんちがう生活になるから、できるかどうか。ちゃんとアパートを借りて、〝独立〟するので、ちょっと心配ね。アイリーンは、ことしのクリスマスまでは、一緒にいてくれそうだけど…。当たり前だけど、自炊して、掃除、洗濯もよ。

女性自身雑誌1976年   切り抜き

Q カナダの日常語はフランス語だったよね?

A 英語も通じるから…。ワタシは、中国語と英語と、日本語やったでしょ。もう、フランス語おぼえるのはイヤだな。

Q じゃ、とにかく、からだに気をつけて。

A ありがとう。ファンの人たちに、アグネスのわがまま、許してくださいって伝えて…。いろいろ応援、ありがとう。感謝してます』。