
女性セブン1989年10月26日号
…明菜の芸能界復帰のシナリオは一歩一歩進んでいる。
その第一弾として、アメリカで発売されたCD
『Cross My Palm』がワーナー・パイオニアの手で逆輸入され、10月25日に発売される。
11月17日には、今年4月によみうりランドで行われたデビュー8周年記念コンサートのライブ
CD の発売も決定した。
「一生懸命に売るのが、明菜への何よりの慰め、励ましになる」とワーナー・パイオニアの山本社長も、明菜の復帰を全面的に支援する姿勢を見せている。
自殺未遂事件(7月11日)からすでに3か月。姿を隠したままの明菜に対する復帰コールは、しだいに広がり始めている。しかし、明菜の復帰を望むのは芸能界だけではない。この人も、心から明菜のことを心配し、明菜の復帰を心待ちにしているのだ。
明菜のあこがれの人、三浦百恵さんだ。
百恵さんは、8月末の深夜、親友のアン・ルイスに、1年ぶりに電話をかけてきた。
「うん、百恵ちゃんから電話はもらったけど、内容はいえないよ」と、アンから詳しい話を聞くことはできなかった。だが、彼女はこのときのことを新聞のインタビューでこう答えている。
「思いっきりフツーの主婦になっちゃっててさ。マッチと明菜の裏話とか、聞いてくるワケ。女性誌レベルの話。百恵ちゃんが、主婦の立場で女性誌を読んでる姿って、おもしろいと思わない」

アンには、前夫・桑名正博(くわなまさひろ)とのあいだに生まれた長男・美勇士(みゅうじ)くんがいる。ふたりのやりとりを、百恵さんの友人がこう話してくれた。
「まず、子育てのことで話が盛り上がったようです。〝お互い、子供が大きくなるって早いわね〟と。そして、仕事の話になったんです。芸能界を離れて9年たつ百恵さんに、アンが最近の芸能界の様子を熱っぽく話してくれたようです。そのあと、百恵さんがアンに、〝明菜ちゃんは、どうしてるの?〟と、たずねたというんです。〝大丈夫なの?〟と」

明菜が歌手を志したとき、目標は百恵さんだった。『スター誕生』に合格したときの歌が百恵さんの『夢先案内人』だったことは有名な話だ。歌手になってからも、目標は百恵さんといい続けてきた。
明菜にとって、百恵さんは仕事の面だけではなく、その生き方が理想なのだという。
けっして恵まれているわけでなく、母の苦労を目のあたりにした百恵さんの幼少時代。そして、トップアイドルの座についたにもかかわらず、愛する人ができると地位も名声もお金もすべてを捨て、三浦友和の妻となった。
明菜はそんな百恵さんの生き方に共鳴し、〝結婚したら、仕事はきっぱりやめて家庭にはいる〟と、きめていた。
「明菜ちゃんの歌や生き方に対する考え方が、百恵さんの現役時代にわりと近いものがあったのでしょう」
百恵さんと親しい芸能関係者・Aさんの話だ。
「それだけに、百恵さんも明菜ちゃんに親近感をもっていて、なかなかファンなんですよ。
ここ2~3年は、ふたりの子供の世話に追われて、カラオケパーティーどころじゃないけど、よくカラオケで、明菜ちゃんの『少女A』や
『スローモーション』を歌ってましたよ』

お互いに、相手のなかに自分の分身を見るような心のつながりがあるのかもしれない。
百恵さんのことを熱烈に慕い、百恵さんと同じような人生を目指してきた明菜。百恵さんにとっては、そんな明菜が妹のようにかわいく思えたのかもしれない。
「それから、百恵さんは、明菜ちゃんとマッチの将来もすごく心配しているんですよ。百恵さんと友和クンは、ビッグスター同士の結婚では、いわば先陣を切ったわけでしょう。
自分たちの体験から、そういう結婚がふたりだけの問題ではなく、家庭や所属事務所、さらに芸能界全体までも巻き込む大問題になること、そして成就させるまでに、どんな苦労があるよかを知りつくしてますからね」(前出・Aさん)

さらに、Aさんは言葉を続けた。
「ひとしきり、アンの話を聞いたあと、百恵さんはこういったというんです。〝もし、明菜ちゃんに会うことがあったら、がんばってと伝えてほしい〟って」
先週号でお伝したように、明菜の母もまた、難病と闘いながら、娘からの電話を再起のお知らせを、今日か明日かと待ち続けている。
これだけまわりの心配を集めながらも明菜は、家庭にもマスコミにも、まだひと言も口を開かず、沈黙の逃避行を続けている。
社会評論家の俵萠子(たわらもえこ)さんがこう話す。
「仕事をバリバリやってイヤなことを忘れてしまう、明菜ちゃんには、そうやっていまの苦しさを乗り越えてほしいですね。それに、そうやって危機を乗り越えて、ほんとうにいい女になるんじゃないでしょうか。実力もあるし、芸能界復帰は、明菜ちゃんにとっても絶対にいいことです」
みずからも〝早く歌をうたいたい〟ともらしているのいう明菜。せめてひと声でも、誠意をこめてメッセージを発表してくれたらいいのだが
百恵さんもそのひと言を心待ちにしているにちがいない。