ヒットソング・アルバム   郷ひろみ(1975年)
「花のように鳥のように」
やさしく愛しあおう

ジェイ・ジェイ雑誌1987年7月号
ザ ポートレート 郷ひろみ
写真・文 立木義宏

どういうわけでか、ぼくのまわりには、独身、亭主持ちとりどりで仕事に生きる女性が多い。
才気煥発で、人当たりがよく、わけ知りでありながら意外と健全で、男を見る目が辛辣である。他愛もない美男子などに目もくれないのはもちろんだが、一見して複雑な個性を感じさせるくせ者に対しても、騙されることがない。こんな調子である─。
「ホント。何を考え違いしてるのかしら」
「要するに、頭が悪いのよ」
「頭が悪いだけじゃなくて、性格も素直じゃないのよね…」手厳しいのだ。
ところが、この連中がこぞってひいきにしている男がいる。郷ひろみである。ともかくベタ褒めなのだ。傍で見ていて、ほほ笑ましいくらいの入れこみようなのである。
もちろん、郷ひろみは好青年である。近ごろの若者は──といういい方はあまり好きではないが、近ごろの若者には珍しく、折り目正しい一本骨の通った男である。人に聞くと、十代でデビューして少年少女のアイドルだったころから、五年先、十年先を見通して行動していたそうだ。
そういう賢さが、ぼくのまわりの女性たちの琴線にふれるのかもしれないが、彼女らの熱狂ぶりは、単にそれだけに期づくものではなさそうである。
「賢い?違うわね。賢いのは確かでしょうけど、ともかくひろみったら、なんとなく放っとけないところがあるの。みんながそう感じてるんじゃないのかな」
なんで放っとけないのか─?その理由はよくわからない。わからないが、確かにあるからこそ、成熟したおとなの女たちが母性本能をくすぐられて、夢中になってしまうのである。母性本能をくすぐられすぎて、行きすぎた教育ママじみてくることもないいえない。

心遣いがじつに細かで、かつ、さりげないのである。このさりげなさ─これこそが、あの女どもを惹き付けてやまないらしい、とぼくは思った。
郷ひろみは、確かに素敵な男である。