ジェイジェイ雑誌 1987年9月号
クローズアップ 中村雅俊、36歳
慶応義塾大学経済学部卒業。時計、ネックレスなどは大の苦手。結婚指輪は、10日でなくしてしまったが、家族の写真は、バッグのなかに入れて持ち歩いている。
「I lOVE YOU,ALL~36th  PORTRAIT~」は自叙的なアルバム。8月29日(1987年)には、立川市の国営昭和記念園で野外コンサートを開く。
「息子を持った父親っていうのは、いずれ息子と一緒に酒が飲みたいっていう気持ちはあるよね。オレ、オヤジが3歳のときに死んじゃったから、なんとなく昔からそういうのを、夢見てたみたいなところがあるのね。最近、息子に背中流させると、ああ、こんな感じかって思います」子供の父兄参観や運動会など、出席率は
90%以上。ニューアルバムのなかの「愛の歌」で、〝愛は君と生きてゆくこと〟と歌っているように、この人のキャラクターは、家族を抜きには語れない。
「どっちかっていうと、いい父親よりいい夫かな。ときどき、2人きりで旅行するようにしてるしね。でも、ダンナさんにしたいナンバー1なんて言われるけど、ホントは尻に敷かれてるだけなの。オレ、表面だけは亭主関白なんだけど、実は、しっかり手綱握られてんのよ。最近、妻が、〝あなたは私のこと褒めてるみたいだけど、アレは手なんでしょ〟なんて言うわけ。ケンカはもう、10年くらいしてないかなあ。ウチの妻は自分のせいにしちゃうところがあるんですよ。だから、いつもよくできた人だなってホントに思ってるんです。こういうの言うと、また褒めてるみたいになっちゃうじゃないスか(笑)」とは言っても、自分の妻を正面きって褒められる人は、そういういるものではない。
「それは表現が違ってるだけ。みんなさ、うちのはブスでよー、なんて言ってるけど、本当は全部、逆。もう、惚れちゃっててダメ、っていうとのと同じなんだよね」その愛妻ぶりは有名だが、かといって男のつき合いをおろそかにしているわけではない。
「オレら、いまだに毎年2回、大学のときのクラス会をやってるんですよ。何とかみんなに、スケジュールを合わせてもらってね。経済学部なんてさあ、女いないじゃない。だから、いつも男ばっかり20人くらい集まってワーワーやってるよ」同性の友達が多い人って、とても安心できる心地良さがある。ふだんはショートパンツにサンダルで、赤いベンツを乗り回す快男児。ニッと笑う人なつこい笑顔、包み込こむような大らかさ……。特技は〝楽天家〟というその存在は、陽気な夏のイメージ。
「でも、オレ、冬のほうが好きなの。冬のほうがファッショナブルになれるし、服の組み合わせを考えるのも面白いしね。ホラ、オレ根が明るいでしょう?だから、冬のほうが別人を装えるっていうか、気取れるみたいな感覚があるんだよね。」いきなり主役でデビューして、14年。ここまで、トントンと挫折を知らずに来たように見えるが……。
「楽天家だけど、オレはすごい負けず嫌いヨ。スポーツやるとてもきめんだもん。卓球なんかやるともう格闘技そのもの。勝つまでやるようなところがあるし、負けたらチキショー!って感じ。そういう気持ちって大切だし、次のパワーになるんじゃない?」表面はヘラヘラとしながら、やるときはヤルゾ!の精神で、内面には高いクオリティを持つことがテーマ。
「いまの大学生って、雰囲気とかファッションがみんな似てるんだよね。これだけ情報が溢れてるのになん出かねぇ。オレらのころは、とにかくみんな思い思いの格好をしてたからね、自分でアレンジして自分のファッションやスタイルを作ってた人が多かったよ」
これからも、役者に歌手にと、スタンスをとってマイペースに取り組んで行くつもり。
「50歳になって、いい顔してるねって言われたら、人生、成功だなって思う。だから、いまは、その途中なんですよ。オレなんか、役者もやって歌手もやって、どっちなんですかってよく聞かれたりするじゃない?でも、存在だけで説明いらない人っているでしょ。だから、50歳になったら、オレは中村だあ!で通ればいいなと思ってるんだ」