↑明星1975年カレンダー切り抜き 
こんがりと焼いた郷ひろみ
ジェイジェイ雑誌1989年7月
ホットインタビュー  郷ひろみ
僕がニューヨークにアパートを持って、東京を行ったり来たりするようになってから、もう2年。結婚して、男が一番バリバリ仕事していかなければならない時期に何故ニューヨーク行きを決めたのか、あの頃は周りから「いったい何を考えているんだ」という眼で見られてたかもしれない。
でも、あの時の僕にとっては〝二人でいる〟ということが一番、大切でしたね。結婚して周りに親がいる、友達がいる、そしていろいろな意味で僕達に関わった人達がいる、という日本で、二人自身のことをきちんと確認しようとしても、きっと本当に難しかったと思うんです。
ニューヨークに行って、例えば具合が悪くなっても日本のように周囲に頼れる人のいない環境の中、自分たちで必死に生活していく。「もう二人しかいないんだ」という意識を、お互いが持てたし、二人でいろいろなことをディスカッションしたし…。
それにニューヨークって街そのものが大人でしょ。子供のゾーンと大人のゾーンのテリトリーがはっきりしてる。サンデーブランチやイタリア料理、よく二人で食べに行くんですけれど、ホントのんびりできるんですよ。でも、時々ショックを受けることもある。卒業旅行なのかな、エルメスで女子大生が、「ケリーバッグ3個ください」なんてやってるの。外国人はゼッタイ、そんな買い方しませんよね。
今回、僕が主演した日独合作映画「舞姫」の舞台は1888年の日本とドイツ。主人公の太田豊太郎が、愛するエリスと自分の間に小さな命が宿っても、それを置いて日本に帰ったのは、陛下のため、国のためという、あの当時の男の誇りをつかれたから、心を鬼にして彼女を捨てたのかもしれない。今から100年も前の話だから、自分の守るべき誇りが何か、というのは昭和・平成とは大きく違うと思うけれど、男にとってこれはものすごく大切だし弱い部分──。