MORE雑誌1982年7月 切り抜き
異色対談   青島幸男VS桃井かおり(女優)
青島幸男(あおしま ゆきお)1932年7月17日~2006年12月20日(74歳没)シナリオライター、作詞家、俳優、司会者、映画監督、参議院議員…
青島幸男氏原作『人間万事塞翁が丙午』(にんげんばんじさいおうがひのえうま)は、桃井かおりさん主演でTBS系で放映。
桃井 「物書きとして賞を取ると、生活の中で何か特に影響してくることってあります?」
青島 「別にどうっていうことないね。しかし気持ちはいいな。」
桃井 「ベストセラーがあそこまで続くと気持ちいいでしょうね。」
青島 「率直に言って賞は取りたかったしね、一回、100万部という本を出したかったね。もう喉から手が出るほどそう思ったよ。だから取ったときは本当に嬉しかったね。取る取ると言って取ったからね、あれは。(笑)」
桃井 「青島さんのそういう所がすてきですね。」
青島 「俺、25~26歳のときから言っているんだよね。『俺はこんなバカ台本書いてないで、やがて、直木賞か芥川賞のどっちか取るぞ』って。(笑)非常に、ターゲットが曖昧なんだよな。今、考えるとゾッとするけどさ。(笑)それで、ずっとそうじゃなかったじゃない。役者さんもやってみたり、映画も撮ってみたり、むやみやたらといろんなカッコ良さそうなことに手を出してさ。みんななんとかそこそこいくんだけど、『これが』っていうものもないし。
ワイドショーをやっていてさ、10年間ぐらい暇なわけよね。
アパートのテラスに、縁日で買ってきた800円ぐらいの植木を並べて水やってるわけですよ。それで『ママ、このけやき、ホラッ、こんなに芽が大きくなっている。かわいいね』なんて言っているんだよ。俺、もうやんなっちゃってさ。それで、ある晩、飲んでて、『そうだ、俺にはまだ狙うものがあるんだ。直木賞を狙う』と言ったら、子供たちが『ヘン、また始まった。バッカだなあ』って(笑)『お前ら、なんで鼻で笑うんだよ。オー、やってやろうじゃないか。軽いよ』と言っちゃった。
それから取る取ると毎晩言ってね。候補になる場合、どういうものが選ばれて、どういう手だてで候補になるかっていうのを、綿密に調査したわけ。(笑)
書くのを書かないでさ、取ることばっかり言ってるものだから、息子が『バカなんだよ、これだもんね、取れるわけないんだよ』って言うんだよ。『いや、そうじゃないんだよ。綿密に計画をたてる、これが大事なんだよ』と言って、いざ書き始めるときは『これは間違いなく取るよ』と言って俺はかかったね。そして、それを毎日毎日言ってるわけよ。」