Can Can 雑誌1990年7月税込550円
ダンディートーク 東山紀之  
ゲスト  松方弘樹
プロフィール 松方弘樹(まつかた・ひろき)
本名 目黒浩樹(めぐろ・こうじゅ)1942年7月23日~2017年1月21日(74歳没)1970年にデビューし『仁義なき戦い』(東映京都映画)『天才・たけしの元気が出るテレビ‼️」
ヒガシ、一流の男はモメてあたりまえだぞ。
英雄色を好むってね
ごぞんじ『名奉行遠山の金さん』(テレビ朝日系)の撮影は京都・太秦で行われている。
ヒガシと松方さんを東映撮影所に訪ねたときには、時代劇の華ともいえる奉行所の場面、いわゆる〝お白州〟のシーンの収録がまさに始まろうとしているところだった。
「この〝白州〟はいちばんの見せ場だから、役者はとても緊張するんだよ」
自分の出番を前に、ヒガシがリハーサル中のセットへの案内してくれる。
「ほら、よく見て。松方さんの視線が1カットずつ、ピシーッてキマッているでしょう。声のトーンも低いところから始まって、ヤマ場へ向かって少しずつ上がっていくんだ」
テレビのこちら側で見ているだけではわからない表情や体の筋肉や、声の使い方のひとつひとつまで、詳しく説明してくれるヒガシ。
そこには現場で磨かれてこなければわからない視点がある。
「カッコイ─イ!」
モロ肌脱いで背中の桜吹雪を見せて見得を切る松方さんに歓声を上がる。その声には尊敬と、自分も早く追いつきたいという前向きな熱意がこめられている。
東山 「撮影、お疲れさまでした。」
松方 「今日は朝から夜遅くまで長かったな。ヒガシは日本酒がいいんだろう。」
東山 「はい。」
松方 「珍しいな、若い子で日本酒がいいなんて。酒も強くなったよな。飲もうと思えば、なんぼでも飲めるだろう。」
東山 「松方さんと飲むときには、安心して飲めますから。でもいちど『松方さん、飲んでないですね』って言っちゃって失敗したことがあります(笑)」
松方 「そうだった」
東山「松方さんの話はもう、いつも豪快だから本当にワクワクさせられるんです」
松方「男はね、仕事でも遊びでもなんでも並みじゃつまらないさ。男と女だってそうさ」
ヒガシのアフタートーク
「ボクのことを早くから評価してくださったのが、松方さんだったんだ。それから本当にお世話になっているけど、楽しいよ。一緒に酒を飲んでいても、ただバカなことをしゃべってるのとは違うからね。その中で教えてくれるのがわかるよね。学んだことはいろいろあるけど、とにかく人間の大きさだね。いちばん偉い座長さんだけど、いちばん気を使っている。スタッフの隅々の人にまで信頼されているからすごいよ。松方さん、これからも公私ともどもよろしくお願いします。」