「わたし、いくつに見える?うふふ」


100歳を過ぎてなお、70代後半といっても通用するほどの外見とタフさで独居。

皆を驚愕させ続けてきた、祖母。


ことし4月末に病を得て倒れ入院後、

5月連休明け、わたしも面会できる日が来た。


いそいそと病院へ車を走らせる。


手続きののち個室に向かい、そっと扉を開ける。







そこには

お化粧、入れ歯、ウィッグとかの装備を外して

ベッドに臥し酸素吸入と点滴で命を繋ぐ

103歳のおばあさんがいた。


覚悟はしていたが、グッときた。


睡眠と覚醒の波の中

ふと、カッと目を見開き

「うれぱみんちゃん、お茶飲んでる?わたしお茶飲まなかったから血液ドロドロになっちゃった」

なんて話してはまぶたが落ち

しばしののちまた目を見開いたタイミングで

「何歳になりましたか?」

と話しかけたらかぶせぎみに

「ひゃくさんさい!」

と、入れ歯を抜いた口ではっきりと答えた。


そしてまた、小さな眠り姫に戻る。



この調子ならば、もしかしてもしかするかもしれない。

排泄と食事の問題、社会福祉サービスなどクリアする問題は山積みでも、車椅子移動ができるくらいには復活するかもしれない。

そんな軽い興奮状態で、悲しみ半分期待半分

帰路に着いた。




そして昨日、まめに連絡を取り合っていた叔母より、

安定はしているが、眠っている時間が増えたと。



二親等まで面会自由だったのがまた、

週一、一組だけに戻りそうだと。


必然的に、一番に寄り添っている叔父叔母が

その一組になるだろう。



十分すぎるほどに頑張ってきた祖母。

もう頑張らなくていいから、安心し切って眠って

時折り目を開けて見せて欲しい。


今はそんな心持ちでいる。



⛰️



その病院は、わたしの実家に近い。

よって、途中までは同じルートで行くことになる。


最寄りのインターから高速道路下り線に乗り

しばらく走れば、遠かった山並みが目の前にぐんぐん迫ってくる。

中でも際立つ谷川岳はいつだって

私を魅了し続ける。

白銀の冬は、美し過ぎて恐いくらいだ。神さまがいると言われれば、本当にいるんだって思えるほどに。



今時分は、残雪が静脈のように谷間を這って

畏怖すべき険しさゆえ命を落とす危険と背中合わせにむしろ吸い寄せられるがごとく

多くの登山家が惹かれ頂上を目指す所以たる素肌を、緩徐に晒しつつある。



それも、好きだった。

どんな季節でも好きだった。


今年に限っては、残雪の紋様が

こんなにも心細く見える。


どうせならば、雪など早く解けきってしまえ。

そしてまぶしい緑に光ってくれ。


そんなふうにひとり苛立つ。



みいも、シニア16歳。


命の尊さ、なんて、恥ずかしいくらいの言い回しが

これほどふさわしい春は、初めてかもしれない。



よい1日を。