chiechambchichli1972のブログ

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10月初めの正午の日差しは、思ってるよりずうっと斜めに差し込んできて、狭い俺の部屋の半分辺りまであっためている。てか、布団に入ってると普通に暑い。秋なのに。どうしようもなく動きたくないけど、このままじっとしてても、もっとどうしようもない。ズルズル起き出して、誰もいないキッチンで水を一気飲みしたら立ちくらみがした。あれっきり、サヤと会ってない。電話もしてない。メールすら。サヤが何もしてこないのに、自分からどう動けばいいのか。謝るのか、怒るのか、何もなかったことにするのか、どうでもいいし、どれを選んだところできっと俺は間違ってる。腹が減ってるのかどうかも曖昧だ。少なくとも、自主的に食べたい気は全然しない。食わなきゃ食わないでこのまま済んでしまいそうだし、それを叱る人もどうせいない。蛇口の水をザーーッと勢いよく出しっぱなしにして、もう一度コップを突っ込んだ。結果はだいたい予想したとおりで、水が飛び散ってシンクもTシャツもビショビショになって、おまけにコップには全然水が溜まってない。一口分くらいの水を飲み干して、『古井戸』のメシなら食えるかな、と思った。積極的に『古井戸』の食いもんが食いたいわけじゃない。俺の体を生かすために何か食わなきゃいけないんなら、あれくらいのレベルのもんじゃないと今の俺は食わねーよぐらいの、上から発想だ。頭ボサボサのまま、上半身はビショビショのTシャツで、短パンだけはクタクタのジーパンに履き替えたけど、クルマのキーは玄関のどこにも見当たらない。そういえば点検に持ってくとか、とうさんが言ってた気がする。できれば、この状態でバイクには乗りたくない。正直、相当メンドくさい。でもこのまま自分の部屋にこもってたら、何かの拍子に俺は死ぬかもしれない。本気でそう思えた。全然後ろ向きな気分でヘルメットとグローブを取り出しながら、このまえバイクに乗ったのはいつだったっけ、って考えても、浮かぶのはサヤと走った景色ばかりだ。俺はこんなにも、一人でバイクに乗ってなかった。いきなりむちゃくちゃ腹が立って、クローゼットをバタンと閉めた。二段飛ばしで階段を駆け下りた。倍速で玄関に到達した瞬間、目まいがしたけど構わずライダーブーツに脚を突っ込む。『古井戸』まで走ってやる。『古井戸』まで走ってやる。『古井戸』まで走ってやる。呪いのように頭の中で繰り返す。「…んだよ、バタバタバタバタうっせー…あ?にいちゃんバイク乗んの?なんか久しぶりな気ぃすんなー。いってらー。」振りかえると、いつのまに後から降りてきてたのか、ジンがピラピラ手を振って、また二階に上がろうとしていた。大の男が四人の世帯で、一人ぐらいグダグダしてたり行方不明だったりしても、誰も気にしない。と思ってたし、実際、通常はそうだ。「…なあ、ジン、おい…ジン…ジンちゃん!ジンちゃんって!」ジンが生卵ぶつけられてビックリしたぐらいの勢いで振り向いた。確かに、この前『ちゃん』づけでジンを呼んだのは、もう7、8年前かもしれない。「な、なに、にいちゃん?なんか用?てか、『ちゃん』づけキモっ。ちょーキモイ。」「え、やー…わざわざ見送るとか、なんか珍しいなって思って。」なんでそんなに必死で呼び止めたのか自分でもわかんなくて、わかんないまま、すこぶる率直に答えた。「はぁあ?そこ?そこか?別にわざわざじゃねーし、見送ってねーし、てか、バタバタうっさかったし。まあ、あんまポジティブにバイク乗りたい感じじゃねーなーとは思うけど?」切れ長のつり目を更につり上げてダルそーにブツブツ言うと、ジャージのケツに手を突っ込んでボリボリ掻いた。改めて見るとこいつ顔だけはそこそこキレイなのになー、とその残念さ加減に素直に感動する。「まーいーや、なんかわかんねけど、コケんなよ。いってらー。」そう言い残すとジャージのポケットからごそごそスマホを出しながら、今度こそジンは階段を上がっていった。かあさんのことがあってから、ジンがそんな風に俺を気遣うことなんて絶対なかった。俺はそのまま魂持ってかれたみたいに、しばらく玄関に突っ立っていた。恋愛小説 ブログランキングへにほんブログ村↑ぽちしてね♪  Lovers' labo~官能的純愛小説~ ...