大昔の話だが

私はイギリスの小さな町に滞在していた。


渡英して1年程は朝夕食事付きの下宿(ホストファミリーと言うのか)暮らしだった。30代の夫婦の家でお世話になった。


当時は私も二十歳過ぎたばかりで夜は友達とパブでお喋りしたりそれなりに楽しんでいた


流暢に英語で会話ができるわけもなく友達はイギリス人よりも同じくらいの英語力のドイツ人の女の子だった。(絶対にフランス人ではない)


深夜になっても小さな町だから治安は良くてキツネが走り回っているだけだ


しかし私の下宿は中心地から更に奥地だったために駅でタクシーを捕まえて帰宅するしかなかった


当時の英国は日本のくもすけタクシーとは違って運転手さんが皆親切で家に着くと

「ドアを開けて中に入るまでライトで照らしておいてあげるから安心して」と気遣いしてくれたりとても嬉しかったです。


ある夜、いかついオジサンの運転するタクシーで家に帰りつき料金を払うと


面倒くさそうに「30ピーター」と言いながらダルそうにお釣りをくれた


30ペンスだった。


ピーターって何だろう


30ピーは30Pのことだろう

じゃターが余る


方言だろうか


数日たち夕食時に下宿のオジサンとオバサンに

この事を思い出して訊いてみたら二人は

サッと顔を曇らせ


「銀よ、ターはねサンキューって意味だがね一般的には使わない悪い言葉だからすぐに忘れなさいね」


と繰り返し念をおされた


しかし、あれから50年以上たつのに

忘れるどころかタクシーさんのいかつい顔まで覚えている。


悪い言葉ほど頭に残る


あの頃の私の知る限り英国人の悪態はほぼブラッディーだった。Fワードは私の周りではあまり耳にしなかった。


お年寄りの女性に対しては「牛」という表現が多かった。ブラッディー(あるいはオールド)カウ等ですね。

太ってゆっくり歩く人が多かったからだろうがどのお婆さんも身綺麗に髪をセットして家に居る時もイヤリングやネックレスをしツーピースをきちんと着ていたから私はお年寄りが好きだった。


ベンチに座っていると隣に腰掛けてにっこり微笑みお天気の話しを気軽にしてくれたのも嬉しかった。だいたいがお天気の話し。


私自身は悪態をつくことはなかった。

まぁ普通は外国人が悪い言葉を使って悪態をつくなんてしないだろう。

特に日本人は


ロンドンに出るとたまにパンクファッションの日本人旅行客が汚い英語を口にしているのを聞いて嫌な気分になった。


裕福な日本人旅行客がどうしてパンクの格好をしているのか理解できず何ともずかしかったから見ないようにした。


何となく思い出したので書いてみた